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プライム市場、「質」重視が鮮明に

~2025年は上場社数減少も時価総額は過去最高~

河谷 善夫

目次

1. 上場廃止の増加によりプライム市場の上場社数は減少し、1,600社を割った

東証プライム市場の2025年の上場社数については、新規上場が8社、プライム市場への市場変更が9社あった一方、上場廃止が45社と過去最高となり、スタンダード市場への市場変更も13社あったため、差し引き41社の減少となり、1,598社となった(資料1)

図表
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プライム市場は2022年4月4日に新市場区分により創設され、当初の上場社数は1,838社だった。その後、資料2のとおり減少し、2025年末に1,598社となった。

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これまでで最大の減少要因は、拙稿(河谷,2024)で説明した、2023年の特例措置による移行(177社減)である。2025年は、上場廃止件数(45社)の増大により、上場会社数の減少数(41社)が前年より拡大した。注目されるのは、その理由としてMBO(Management Buyout:経営陣による買収)がかなり増大してきているということである。後述するが、上場することのメリットよりデメリットが大きいと判断し、プライム市場上場企業でMBOを選択する動きが広がっている。こうしたMBO増加を中心とする上場廃止の動きは、今後も暫く続く可能性が高い。

2. 2026年は、経過措置終了で上場社数減少が加速

2026年のプライム市場の上場社数に大きな影響を与えると考えられるのが、これも前掲の拙稿(河谷,2023)で説明した経過措置による改善期間終了の到来である。プライム市場の上場基準は資料3の左の通りであるところ、基準未達の会社について経過措置が取られていたが、2026年3月以降、資料3の右のように順次経過期間が終了する会社があり、2026年中での対象は45社に上る。

図表
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東証の資料では(注1)、これらの会社の多くが、プライム市場からスタンダート市場、あるいは他の市場への移行を検討しているとされる。またMBO等を理由とした上場廃止も2025年と同程度発生すると考えられ、100社近くの減少が想定される。新規上場、プライム市場への移行が大きく増加することは想定しづらく、結果として、2026年末には1,500社程度まで、上場社数が減少することが想定される。プライム市場において上場社数より企業の内容を重視する「質重視」の方向が更に鮮明になろう。

3. プライム市場の時価総額は増大

2025年初め、プライム市場上場会社全体の時価総額は960兆円であった。4月までトランプ政権の関税問題等の株価への影響もあり、伸び悩んだが、5月以降は上昇に転じた。さらに8月には1,000兆円を超え、年末には1,150兆円を超える水準となり(資料4)、年初と比べて時価総額は2割程度増加した。

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各社毎の時価総額の動きを分析したところ(注2)、2025年内のプライム市場の時価総額の増加により、時価総額ランク別の会社数の割合は資料5の通り変化した。

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時価総額3兆円以上の会社は、年初の4.2%(61社)から年末には5.1%(81社)となる一方、時価総額1,000億円未満の会社の割合は5割を切った。時価総額の平均は年初の6,000億円程度から7,300億円程度まで上昇した。2026年も上述のような上場会社数の減少が想定されるものの、足元の株価の動きを考えると、プライム市場上場全会社の時価総額は増加を続ける可能性が高いと思われる。

4. プライム市場上場会社の今後の課題

東証は上場社数より質を重視する姿勢を明確にしており、プライム市場の現状を踏まえると、2025年は概ね順調に推移したといえよう。

もっとも、上場企業には今後、開示面で新たな課題が生じる。2027年3月期以降、時価総額3兆円以上の企業から有価証券報告書での第三者保証付きのサステナビリティ情報開示が段階的に義務化される予定であり(注3)、株主総会前の有価証券報告書開示要請も一段と強まる見通しである。法務省法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会では、有価証券報告書と事業報告書の一本化も検討されており、実現すれば企業の開示負担軽減につながるが、実際の施行までには一定の時間を要する。こうした状況下で、開示負担が上場の利点を上回ると判断する企業では、MBO等による上場廃止の動きが広がることも想定される。また、企業の開示を有用なものにするには、企業の開示内容を十分にチェックして建設的対話に取り組む投資家の機能も重要である。

プライム市場の2026年は、開示コストと上場の意義を改めて問い直す年となろう。

以上

【注釈】

  1. 2025年11月第24回「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」へ提示された、東京証券取引所上場部「経過措置適用会社の状況」より。

  2. 本分析ではBloombergで取得したデータを用いているが、分析対象社は基本的には2025年末にプライム市場に上場していた会社(1,598社)のうち、2025年内に継続して上場していた企業とした。2025年内に新規上場した会社(8社)と、2026年初に上場廃止となる2社のデータは取れず、合計1,588社を対象とした。

  3. 時価総額は開示対象事業年度の前事業年度の末日及びその前4事業年度の末日における時価総額の平均値により判定される。2022-2026年の事業年度末の平均時価総額3兆円以上の会社の第三者保証は2027年のサステナビリティ情報開示義務化の翌年度からの義務となる。同様の算出方法で時価総額1兆円以上の会社は2028年3月期から、5,000億円以上の会社は、2029年3月期からの義務化となる。時価総額5,000億円未満の会社については今後検討されることになっている。

【参考文献】

河谷 善夫


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。