コロナ下のお年玉事情

~贈り方、受け取り方、使い方の行方~

北村 安樹子

目次

新型コロナウイルスの感染が拡大してから2度目の年末を迎える。全国的に感染が拡がっていた昨年は、帰省をはじめ、家族・親族が集う行動が控えられ、お年玉に関しても例年とは異なる対応が行われたケースもあったと思われる。

今回は、子どものお年玉に関するデータを紹介し、コロナ下の贈り方や受け取り方とともに、その使い方の行方について考えてみたい。

1.贈り主は「祖父母」が最多

少し前のデータになるが、金融広報中央委員会が小中高生を対象に行った調査(注1)によると、お年玉をもらった子どもの割合は95%を超え、もらった相手として最も多くあげられたのはいずれも「祖父母」であった(図表1)。おじ・おばを含む「しんせき」をあげる割合は学年があがるほどおおむね高く、中学生以上では8割を超える。これに対して、親や祖父母、おじ・おばなどのしんせき以外の人を意味する「その他」の割合は学年によらず半数を下回り、「親」や「祖父母」、「しんせき」に比べ低い割合にとどまっている。

贈り主は、家族・親族という血縁関係の範囲が依然中心であるが、親族間のつきあいや休暇の時期・過ごし方といったライフスタイルの変化等を背景に、親や祖父母以外の「しんせき」からもらう機会は、若い世代ほど減っているのかもしれない。

図表1 お年玉をもらった相手<複数回答>
図表1 お年玉をもらった相手<複数回答>

2.お年玉の総額―中高生では「5万円以上」も2割前後

この調査によると、子どもが手にするお年玉の総額は年齢とともに上昇し、小学生の低学年では「10,000円くらい」、中学年と高学年では「10,000~19,999円」、中学生と高校生では「10,000~50,000円未満」がそれぞれ最多となっている(図表2)。中高生では「5万円以上」、小学生では「3万円以上」もの金額を手にするケースも2割前後~3割強を占める。贈る側や親のなかには、その使途や管理の仕方が気になる人もいるだろう。

図表2 お年玉の総額
図表2 お年玉の総額

3.コロナ下のお年玉―贈り方、受け取り方、使い方の行方

コロナ禍以来、はじめて迎えた昨年の年末は、感染拡大が続いていたこともあって、電子マネーや口座振込など、キャッシュレスや非接触手段によるお年玉の贈り方や受け取り方も話題になった。これらに加え、現金書留などふだんの生活ではあまり使う機会のない手段での送付や受け取りを経験した人もいたのではないだろうか。

今回も変異株など新たな懸念材料が依然続いてはいるが、お金やモノを手渡しで贈ることをめぐる不安は、昨年に比べると和らいでいるようにみえる。一方で、電子マネーをはじめ、プリベイトカードや各種のポイントなど現金以外の手段を利用する機会は、コロナ禍以降、さらに広がっている。

先の調査ではお年玉の取り扱いについてもたずねており、その結果からは、小学生では親に渡していたものが、成長とともに子ども自身で管理して使い方を決めるようになる傾向がうかがえる(図表3)。お金の形や利用手段・機会が多様化し、コロナ禍以降、親世代の家計への関心も高まるなか(注2)、子どもが自分で使うお金の金額を把握したり、適切な管理や計画的な使い方を考えていく力を身につけることは、親にとっても関心の高いテーマだと思われる。お年玉をきっかけに、子どもや親が贈り主の思いとともに、お金の管理や使い方について考える機会をもつことは、お金の形や使い方が拡がるこれからの時代にますます重要になるのではないだろうか。

図表3 お年玉の取り扱い<複数回答>
図表3 お年玉の取り扱い<複数回答>

【注釈】
1)調査時期は2015年12月~2016年3月。調査対象校は、国内の小学校・中学校・中等教育学校・高等学校・特別支援学校。公募、無作為抽出法による抽出先への協力依頼、都道府県金融広報委員会を通じた金融・金銭教育研究校への依頼、その他個別校への依頼を通じて募集。協力校は290校。
2)当研究所が今年1月に行った「第11回ライフデザインに関する調査」によると、高校生以下の子どもと同居する親世代には、「感染拡大以降、家計の現状や将来について考えるようになった」と答えた人が6割を超え、女性では7割近くを占める(調査時期は2021年1月29日~2月3日、調査対象は全国18~79歳の男女。有効回答数は19,668人。調査方法はインターネット調査。18~69歳のデータに基づく)。

【関連レポート】
1)北村安樹子「コロナ下での別居家族との対面機会~約8割が依然自粛、会った人の7割も迷いながら会った1年~」2021年10月。
2)北村安樹子「暮らしの視点(12):20~40代男女が親として子に伝えたいこと~結婚・家族に関し最も伝えたいのは「お金の管理の大切さ」」2021年7月。
3)北村安樹子「自分に子どもはいないけど、お年玉はいくらあげる?マネーフォワード「MONEY PLUSミドル世代の気になるデータ」2018年12月28日。

なお、当研究所のホームページには、上記レポートを含め、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした様々な変化に注目したレポート・ニュースリリースの一覧ページ新型コロナ(生活)がある。

北村 安樹子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

執筆者の最新レポート

関連レポート

関連テーマ