暮らしの視点(12):20~40代男女が親として子に伝えたいこと

~結婚・家族に関し最も伝えたいのは「お金の管理の大切さ」~

北村 安樹子

目次

内閣府では20~40代の男女に対し、自身の結婚や家族形成にかかわる意識をたずねる調査を継続的に行っており、このほどその最新の結果が公表された。今回の調査には、結婚や家族の在り方について、自分の子どもが成人するまでに、この世代が親として伝えたいことをたずねる設問が含まれている(注1)。
 本稿では、この設問で「将来に向けたお金の管理の大切さ」という点が最も多くあげられたことに注目し、ライフコースの多様化と成人後のシングル期の長期化という視点からその理由を考えてみたい。

1.20~40代男女が親として子に最も伝えたいのは「お金の管理の大切さ」

自分の子どもが成人するまでに親として伝えたいことをたずねたこの設問の選択肢は、家計管理(「将来を考えてお金を管理することは大切だ」)や家族・世帯形成・仕事(「男性は家事や育児に積極的に参加すべきである」「結婚や子どもをもつ年齢、子どもの成長などを考えて人生設計を立てることは大切だ」等)、恋愛・交際経験や子どものいる人生、配偶者・パートナー等との暮らしをめぐる価値観(「恋愛や交際の経験は大切だ」「子どもがいると生活が楽しく豊かになる」等)から構成されている。
 結果をみると、最も多かったのは「将来を考えてお金を管理することは大切だ」で、回答者全体では69.0%を占めた(図表1)。これに次いで多かったのは、「男性は家事や育児に積極的に参加すべきである」(49.2%)と「恋愛や交際の経験は大切だ」(41.5%)であるが、どちらもこれを大きく下回っている。「将来を考えてお金を管理することは大切だ」が最も多くあげられた理由は、人々のライフコースが多様化し、家族形成をするかどうかにかかわらず、お金を正しく管理したり、そのために必要となる金融経済面の知識を身につけたりすることを不可欠だと感じる人が多いためだろう。

図表
図表

2.「シングル期」の過ごし方が重要と考える人が多い

この設問で「将来を考えてお金を管理することの大切さ」と答えた人が最も多かったもう1つの理由は、ライフデザインをめぐる意思決定には多様な要素が関連するためだと思われる。他者との出会いやタイミング、選択肢の変化や健康面のコンディション、仕事をめぐる環境変化など、家族形成や子育て、親元を離れる機会やその時期には、自分で制御することができない多様な要素が関連し、計画どおりにはいかない場合や、想定外の事態に直面する場合も数多くある。そのような事態を含めて、変化する様々な人生の選択肢のなかから自身の人生設計をできるだけ主体的に考えていく際に、将来を考えてお金を管理するための知識やスキルが必要だからだろう。
 また、若い独身者には、結婚の意向をもつ人が多数派を占める一方、初婚どうしの夫婦に関しては結婚相手とはじめて出会った平均年齢が20代半ば、結婚までの平均交際期間を4.3年とする調査結果もある(注2)。仮に、30歳近くで結婚するとして、大卒では8年近く、短大・高校卒では10年以上にわたる最初の「シングル期」とも呼べる期間が想定されることになる。ライフコースが多様化するなかで、継続的にスキルアップを行ったり、堅実な貯蓄習慣を身につけたりすることは、家族形成とともにライフデザイン上の重要なテーマだと思われる。この調査に回答した20~40代の男女が、親として、子が成人するまでに「将来を考えてお金を管理することの大切さ」を伝えたいと答えた背景にも、新たな家族を形成するまでの「シングル期」をどのように過ごすかが、その後の人生をより良いものにしていく上で重要になると感じている人が多いからではないだろうか。

【注釈】
1)内閣府(2021)「令和2年度少子化社会に関する国際意識調査報告書」。
2)国立社会保障・人口問題研究所が2015年6月時点の状況についてたずねた「第15回出生動向基本調査」によると、18~34歳の未婚者の9割弱が「いずれ結婚するつもり」と答えている。また、過去5年間に結婚した初婚どうしの夫婦がはじめて出会った時の平均年齢は夫26.3歳、妻24.8歳であり、結婚するまでの平均交際期間は4.3年となっている。

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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