暮らしの視点(13):独身男女の恋愛・結婚観

~男女がともに重視する「相手からのアプローチ」~

北村 安樹子

目次

日本の若い独身者が、結婚の意思をもちながらも結婚しない背景には、出会いの機会と経済状況の問題があるといわれてきた。

本稿では、独身男女の恋愛・交際観において、自分から積極的にアプローチをする人よりも相手からアプローチがあれば考える人が多いというデータを紹介し、晩婚化との関連や恋愛・交際への躊躇や抵抗感の背景について考えてみたい。

1.結婚しない最大の理由は「適当な相手にまだ巡り会わないから」

内閣府では20~40代の男女に対し、自身の結婚や家族・世帯形成にかかわる意識を尋ねる調査を継続的に行っている。別稿(注1)でも紹介したその最新の調査結果には、独身男女に結婚しない理由を尋ねた結果とともに、恋愛・交際観を尋ねた結果が含まれている。

まず、配偶者のいない男女に結婚しない理由を尋ねた結果をみると、日本では「適当な相手にまだ巡り会わないから」が男女の双方で最も多くあげられており、晩婚化の背景に出会いの問題が強くかかわっていることがうかがえる(図表1)。また、男女の双方で「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」が約4割を占めてこれに続くなか、男性では「経済的に余裕がないから」という点をあげる人も、これにほぼ近い割合であげられている。

経年でみた場合、「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」「異性とうまく付き合えないから」という点をあげた人が増加した一方、「今は、仕事(または学業)に打ち込みたいから」と答えた人は減少している(図表省略)。「一生、結婚するつもりはないから」をあげた人は男女とも1割を下回ることから、配偶者のいない人の多くは結婚の意向をもつものの、出会いや経済状況を含む様々な理由から結婚に至らない状況があること、独身期というライフステージやその自由度への積極的な評価の一方で、恋愛・交際に苦手意識をもつ人も一定の割合を占めていること、などが確認される。

図表
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2.半数前後が「結婚・同棲・恋人はいずれも、必ずしも必要でない」

また、この調査では、人生における結婚(同棲)や恋人の必要性に関する意識も尋ねている。結果をみると、配偶者のいない男女において最も多かったのは「結婚・同棲・恋人はいずれも、必ずしも必要ではない」という回答で、男性の半数弱、女性の半数強を占めた(図表2)。結婚した方がよい(「結婚は必ずするべきだ」「結婚はした方がよい」の合計)と答えた人は、男性では約4割、女性では約3割にとどまっている。

先の調査結果と合わせれば、この年代の独身者には自身の結婚に関して「一生するつもりはない」と強い意思をもっている人は少数派であるが、自分以外も含めた一般論としての、その必要性に関する価値観としては、「必ずしも必要ではない」と考えている人が少なくないということになる。

図表
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3.男女がともに重視する「相手からのアプローチ」

また、晩婚化の背景には、出会いから恋愛・交際・結婚への発展プロセスの問題もかかわっていると考えられる。前回報告書でも「強い受け身の姿勢である」との見方があるように(注2)、日本では恋愛に関する考え方において「相手からアプローチがあれば考える」という人が「自分から積極的にアプローチをする」という人に比べ多く、今回の調査結果でもこのような特徴がより顕著に確認されるからである。

具体的にみると、恋愛に関する考え方において「相手からアプローチがあれば考える」とした人が女性では55.4%に及ぶ一方、男性でも43.5%を占めて最も多くあげられている(図表3)。これに対して「気になる相手には自分から積極的にアプローチをする」という人は男性の17.3%に対し、女性では8.5%と、男性が女性を上回るものの、「相手からアプローチがあれば考える」とした人に比べ低い水準にとどまっている。

図表
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4.晩婚化と若者の恋愛・結婚観

以上のように、日本の独身男女には相手からのアプローチがあれば考えるという人は多いことから、恋愛や交際に関心をもつ人は少なくないものの、自分からアプローチのアクションを起こす人が少ないことが、恋愛におけるカップル形成を難しくしている側面があることを指摘できるだろう。その背景には、ライフコースや価値観が多様化するなかで、結婚や恋愛が必ずしも必要ではないという意識が広がっていることや、結婚への意向を強く持つ人とそうでない人との温度差が恋愛における自分からのアプローチのしにくさに結びついていることもあるのではないか。

実際、図表3では「恋愛は面倒だと感じる」「恋愛することに自信がない」という人が男女とも3割前後を占める。これらの結果は、恋愛・交際において関心をもつ相手に自分から積極的にアプローチしない人が多い理由や、恋愛・交際への躊躇や抵抗感に関する解明も、若い世代のカップル形成プロセスを読み解く上で重要な視点になりうることを示唆しているように思われる。

【注釈】

1)北村安樹子「暮らしの視点(12)20~40代男女が親として子に伝えたいこと~結婚・家族に関し最も伝えたいのは「お金の管理の大切さ」~」2021年7月。

2)松田茂樹「第3部 調査結果の解説 第1章 交際・結婚」内閣府『平成27年度少子化社会に関する国際意識調査報告書(全体版)』2016年3月。

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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