サーキュラー・エコノミーの現状と事例

世良 多加紘

要旨
  • 昨今、SDGsに代表されるように、「持続可能性(サステイナビリティ)」への関心の高まり、廃棄物の処理問題、世界的な天然資源の不足懸念を背景として、資源の効率的・循環的な利用を図るサーキュラー・エコノミー(循環経済)に注目が集まり、政府・企業等によって推進されている。そこで本稿では、今後社会で求められるサーキュラー・エコノミーの取組み実態を具体的事例とともに示す。

  • サーキュラー・エコノミーの取組み実態として、どれだけの資源を消費・廃棄しているかという流れを表す物質フローを確認した。物質フローの出口から入口に再度流入する資源の循環利用量を分子とし、利用する資源全体を分母とした入口側の循環利用率は15.4%(2018年度)、同じく循環利用量を分子、廃棄物等発生量を分母とした出口側の循環利用率は43.6%(同年度)であり、2000年度よりそれぞれ約5ポイントと約8ポイント上昇した。廃棄物のうち一般廃棄物に占める最終処分(埋め立て処分)の割合は低下しているものの、資源化等の割合も低下している。一方、産業廃棄物では、最終処分の割合は低下し、再生利用の割合は上昇している。

  • 物質フローや産業廃棄物処理の状況からみると、近年日本ではサーキュラー・エコノミーの取組みが以前より進んでいるといえる。しかし、一般廃棄物ベースでは、海外と比較してリサイクル・堆肥処理の割合は低く、相対的には十分に取組みが進んでいないと考えられる。

  • オランダのサークルエコノミー協会では、サーキュラー・エコノミーのビジネスモデルを、①循環型の設計、②使用の最適化、③価値の再生、④循環のサポートの4つに分類している。上記の4分類に従って取組みを例示すると、①循環型の設計では、海洋プラスチックごみ由来の素材利用、②使用の最適化では、電気自動車特化型のカーシェアリングサービスの提供、③価値の再生では、自治体と小売企業等との連携による衣類の店頭回収、④循環のサポートでは、衣服のシェアリング・リサイクルプラットフォームの構築等、が挙げられる。

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世良 多加紘


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世良 多加紘

せら たかひろ

総合調査部 マクロ環境調査G 副主任研究員(~22年6月)
専⾨分野: 環境・エネルギー、人口問題

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