インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

四半期見通し『アジア・新興国~米中摩擦の後退は、アジア新興国経済に様々な形で影響を与える~』(2026年1月号)

西濵 徹

目次

米中摩擦の後退で、中国は外需依存を強めるか

10月末の米中首脳会談を経て、両者は互いに歩み寄りをみせた。中国はレアアースの輸出管理強化策の発動を1年延期し、米国は報復関税の撤廃に加え、フェンタニル対策の協力で合意し、この問題を理由に課した追加関税を軽減した。さらに、米国は輸出制限リストへの中国企業の追加や中国船への入港手数料の徴収を1年間停止、中国も米国関連船舶への特別港湾料の徴収を1年間停止し、互いに関税の上乗せ分(24%)も1年間停止した。今回の措置でトランプ2次政権以降に中国に課す関税は20%となり、ASEAN主要国とほぼ同水準となる。

中国当局は米国以外の国や地域向けの輸出拡大を図ることで、対米輸出の減少による悪影響を相殺してきた。しかし、米国による関税引き下げを受けて、中国にとって迂回輸出の経済的なメリットは低下する。よって、先行きは全方位で輸出を一段と活発化させると見込まれる。その一方、中国当局による内需喚起策の効果は一巡しており、先行きはその反動が懸念される。10月に開催された4中全会では、第15次5ヵ年計画における内需拡大の重要性の認識は示されたが、具体的な方策は示されなかった。よって、内需の先行きに不透明感が残るうえ、政策支援も限定的なものに留まる可能性がある。2026年の中国景気は供給側をけん引役にした動きが続くと見込まれるが、需要側は見通しが立ちにくい展開が続くであろう。

図表
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経済構造の違いが景気を左右する展開が続く

米中摩擦の緩和は、経済構造面で外需依存度が相対的に高いアジア新興国に追い風になると期待される。しかし、トランプ2次政権以降に米国が課す関税は中国とアジア新興国の間でほぼ同水準となり、中国による迂回輸出の動きは縮小が見込まれる。さらに、米国はASEAN諸国などとの通商合意に一方的破棄を可能とする「毒薬条項」を盛り込むなど、アジア新興国は米中摩擦の代理戦争の舞台となる可能性が高い。また、対米輸出に駆け込みの反動が出るうえ、中国の迂回輸出による間接的な輸出押し上げ効果も期待しにくくなる。その一方、中国の輸出拡大による「デフレの輸出」に晒される可能性は高まり、製造業を巡る環境は一層厳しさを増すと予想される。

米国に高関税を課されたインドは、米国と通商協議を継続している。インド政府はGST引き下げなどによる内需喚起に動いており、足元ではインフレ鈍化に加え、個人消費が押し上げられる効果もみられる。よって、短期的に内需がインド景気を押し上げる展開が見込まれる。また、インフレの沈静化を背景に、アジア新興国の中銀は景気下支えを目的に金融緩和の動きを強めており、内需を下支えすると期待される。外需に不透明感が残るなか、各国は内需喚起による景気下支えに向けた動きを一段と積極化させることが見込まれるものの、国ごとの経済構造の特徴が今後の景気動向に影響を与える展開が続くと予想される。

図表
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西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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