- HOME
- レポート一覧
- 第一ライフ研レポート
- 内外経済ウォッチ『アジア・新興国~アジア経済は「トランプ2.0」の行方に揺さぶられる展開が続こう~』(2025年4月号)
- 第一生命経済研レポート
-
2025.03.19
アジア経済
アジア経済見通し
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~アジア経済は「トランプ2.0」の行方に揺さぶられる展開が続こう~』(2025年4月号)
西濵 徹
中国は内・外需双方に不透明要因が山積の展開
昨年末にかけての中国景気は、当局による内需喚起策の効果を反映した動きに加え、米トランプ政権の発足を前にした輸出の駆け込みも重なる形で、底入れの動きが加速する様子がうかがわれた。しかし、内需喚起策の効果を巡っては、対象となる耐久消費財で需要が押し上げられる動きはみられるものの、全体としての家計消費は伸び悩む動きが確認されるなど、勢いを欠く推移が続いている。この背景には、当局による総合的な政策支援を受けて一部の大都市で不動産市況に底打ちの兆しがみられるものの、大多数の都市で下落の動きに歯止めが掛からない状況が続いており、バランスシート調整圧力に直面していることがある。
さらに、若年層を中心とする雇用回復の遅れが長引いており、家計部門が節約志向を強めるなど消費意欲が高まりにくい状況が続いていることも影響している。こうした状況を受けて、当局は一段の政策支援に舵を切る意欲をみせているものの、仮に金融緩和に動けば人民元安を招くとともに、資金流出の動きが加速するリスクを孕むなかで政策の手足が縛られる事態に直面している。「トランプ2.0」の下で米中摩擦も不可逆的に進行する方向に動いていることに鑑みれば、外需の回復を見通すことも難しく、今年から来年にかけては一段と成長率が頭打ちの様相を強める展開が続いていくことは避けられないであろう。

米中摩擦や米国の通商政策の影響に要注意
アジア新興国ではインフレが頭打ちする一方、国際金融市場での米ドル高が自国通貨安を招き、各国中銀は難しい政策対応を迫られてきた。昨年後半以降は米ドル高一服で利下げに舵を切る動きがみられたが、米国政権の通商政策を巡る不透明感が米ドル高を再燃させる動きもみられる。一方、輸出に駆け込みの動きが出たほか、中国景気の底入れも外需を下支えしており、景気は外需への依存を強めている。さらに、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げが家計消費を下支えする動きもみられる。結果、多くの国において昨年の経済成長率は前年を上回るなど、足下の景気は着実に底入れしている様子がうかがえる。
しかし、「トランプ2.0」の下で米中摩擦の激化が見込まれる一方、通商政策を巡って『例外なし』の姿勢をみせるなど『ディール(取引)』をより重視した対応をみせている。アジア新興国のなかには、米国の貿易赤字対象国として上位に名を連ねる国が多く、米トランプ政権が標的とするリスクに晒されることも懸念される。よって、外需に不透明感がくすぶる上、外需依存度の高い国々を中心に景気の足を引っ張られる展開が見込まれる。他方、インフレ鈍化を受けて金融緩和に舵を切るなど景気下支えに動く流れはみられるが、米ドル高がそのペースを抑えると見込まれる。よって、財政政策への依存を強めようが、財政余力に差があるなかで景気の勢いに違いが出る展開が予想される。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
台湾・9月輸出、半導体などの旺盛さを反映して過去最高に(Asia Weekly) ~原油価格の再上昇を受けて、多くのアジア新興国でインフレ率が再び加速~
アジア経済
西濵 徹
-
新たなスキャンダルに揺れるインド、今度は「選挙」を巡る問題噴出 ~選挙制度の信頼が揺らぎ、モディ政権への批判が再燃、政治不安が新たなリスクとなるか~
アジア経済
西濵 徹
-
トルコ金融市場の混乱が収まらない ~投資信託の規制強化が株安を招き、実体経済や政策運営への波及が懸念される~
アジア経済
西濵 徹
-
インド中銀、3年8ヵ月ぶりの利上げ、政策スタンスも転換 ~インフレを警戒した「予防的引き締め」、追加利上げに含みも慎重姿勢、ルピーや株価は?~
アジア経済
西濵 徹
-
ベトナム景気は引き続き外需・投資をけん引役に加速 ~7-9月は4年ぶりの高成長、市場格上げ期待の一方で物価・対外収支に懸念材料~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
インド中銀、3年8ヵ月ぶりの利上げ、政策スタンスも転換 ~インフレを警戒した「予防的引き締め」、追加利上げに含みも慎重姿勢、ルピーや株価は?~
アジア経済
西濵 徹
-
ベトナム景気は引き続き外需・投資をけん引役に加速 ~7-9月は4年ぶりの高成長、市場格上げ期待の一方で物価・対外収支に懸念材料~
アジア経済
西濵 徹
-
タイ、洪水被害が景気の新たな重石に ~経済活動への影響が広がるなか、債務増大と金利高止まりが財政対応を制約~
アジア経済
西濵 徹
-
中国、当局は景気下支え策を強化も内需回復は道半ば ~PMIは幅広く改善、人民元高基調が続く一方で雇用環境には不透明感が残る~
アジア経済
西濵 徹
-
アジア・パシフィック経済マンスリー:2026年9月 ~AI需要に沸く外需と、利上げに揺れる内需~
アジア経済
阿原 健一郎

