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内外経済ウォッチ『欧州~各国で広がる極右支持と政局不安定化~』(2025年2月号)

田中 理

目次

オーストリアでも極右政権が誕生か?

2025年の欧州も波乱の年となりそうだ。年明け早々、オーストリアでは連立協議が決裂し、首相が辞意を表明した。代わりに連立協議を託されたのは、昨年の総選挙で第一党となった極右政党だ。この政党はナチス関係者が第二次世界大戦後に旗揚げし、反移民、反イスラム、欧州連合(EU)批判、親ロシア、反ウクライナ支援の立場を取る。保守政党との連立協議がまとまれば、オーストリアにも極右が主導する政権が誕生することになる。

EU加盟27ヶ国のうち、ハンガリー、スロバキア、イタリアでEUに懐疑的な政党が政権を率い、オランダで極右が連立を主導し、クロアチア、フィンランド、スウェーデンで極右が連立に参加ないし閣外協力する。秋までに総選挙を予定するチェコでもEUに懐疑的な政党が世論調査でリードする。昨年12月にはドイツとフランスで内閣不信任案が可決され、ドイツは2月に前倒しの総選挙が行われ、フランスも議会解散が解禁される年後半に再選挙となる可能性がある。両国ともに極右の政権入りのハードルは高いが、無視できない政治勢力となっている。極右台頭はEU運営にも影を落とす。昨年の欧州議会選挙では、親EU勢力が議会の過半数を確保した。親EU会派が重要ポストを独占するEUの新体制が始動したが、EU予算やウクライナ支援など、加盟国の全会一致が必要な政策決定は困難さを増している。

図表
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日本にとっても対岸の火事ではない

政権与党や主流派政党に逆風が吹いているのは、世界的な現象だ。EUを離脱した英国でも昨年、14年振りに政権が交代し、新興の右派ポピュリスト政党の台頭で二大政党政治が揺らいでいる。米国では大統領選挙を制したトランプ氏が大統領の座に返り咲き、日本でも先の衆議院選挙で自公連立政権が過半数割れとなったほか、カナダのトルドー首相が新年早々に任期前の退陣に追い込まれるなど、多くの先進国で政治が不安定化している。

こうした現象の背景には、冷戦終結でイデオロギーを巡る対立が薄れるなか、グローバル化やデジタル化の進展で「富める者」と「持たざる者」の格差が広がっていることや、高齢化による財政悪化と社会福祉予算の切り詰め、移民の流入増加による社会的な軋轢の高まりなどが重なり、第二次世界大戦後の各国を率いてきた既存の中道勢力が有権者の利益代表として十分に機能しなくなっていることがある。極右政党による政策主張の穏健化やソーシャル・メディアの積極活用も支持基盤の拡大につながっている。そこに過去数年の歴史的な高インフレなどによる生活困窮も加わり、現状に不満を持ち、自分たちの声が政治に届かないと考える有権者の支持が極右政党や新興勢力に流れている。こうした欧米諸国の動向は、金融市場の動揺、通商関係の悪化、地政学的なリスクの高まりを通じて、日本にも影響しかねない。

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田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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