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内外経済ウォッチ『欧州~2026年の政治環境を展望する~』(2026年2月号)

田中 理

目次

大きな選挙はないが…

一般に「欧州」と呼ばれる地域は、ユーラシア大陸のウラル山脈以西に位置し、大西洋、地中海、北極海に囲まれた領域を指す。単一国の面積として世界で二番目のカナダ(一番はロシア)、三番目の米国、四番目の中国よりも若干広い地域に、大小交えて50数ヶ国が集まる。これだけ国が多いと、毎年どこかの国で選挙が行われている。

2026年も例外ではなく、ハンガリー、スウェーデン、デンマーク、スロベニア、ラトビア、キプロスなどで国政レベルの議会選挙が、ドイツ、フランス、英国、スペインなどで地方選挙が、ポルトガル、エストニア、ブルガリアなどで大統領選挙が予定されている。何れの選挙もそれぞれの国・地域の市民にとっては重要なものと言えるが、世界レベルでの影響度や日本との関係を考えると、今年はそれほど大きな選挙は予定されていない。

欧州にとっては、4月に予定されるハンガリーの選挙が重要な意味を持つ。同国を20年近くにわたって率いてきたオルバン首相は、欧州連合(EU)に懐疑的な保守ナショナリスト勢力の筆頭格で、司法やメディアへの政治介入、難民受け入れ、ロシア制裁、ウクライナ支援などを巡って、EUとの対立を繰り返してきた。オルバン氏が率いる保守政党「フィデス(Fidesz)」は、最近の世論調査で新興保守政党「ティサ(Tisza)」にリードを許している。EUとの関係改善を目指す政権が誕生するかどうかに注目が集まる。

図表
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右傾化の流れは続くのか?

ドイツと英国の地方選挙では、右派ポピュリストの勢力拡大が不安視される。ドイツでは春と秋に5つの州議会選挙が予定され、なかでも旧東ドイツの2州では、移民規制の強化を訴える極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第一党となる可能性が高い。昨年2月の連邦議会選挙後、同党は連邦レベルの世論調査で最多の支持を集めている。主要政党はこれまで同党との連立や連携を否定してきたが、一部の州議会では同党抜きでは安定した議会運営が難しくなりつつある。

英国では2024年の総選挙で14年振りの労働党政権が誕生したが、政権を明け渡した保守党とともに、二大政党が歴史的な低支持率に喘いでいる。代わりに世論調査でリードするのが、英国のEU離脱(ブレグジット)を扇動した政党が衣替えした「リフォームUK」だ。2029年の総選挙での政権奪取を占ううえで、5月の地方選挙での党勢拡大に注目が集まる。選挙戦の前後では、スターマー首相降ろしの動きが再浮上する恐れもある。

長年の中立政策を転換したスウェーデンでは、北大西洋条約機構(NATO)加盟後で初の総選挙が9月に予定され、ロシアによるサイバー攻撃への警戒が高まっている。1月に単一通貨ユーロを導入したブルガリアでは、増税や汚職を巡る反政府デモの激化で昨年12月に政権が倒れ、年内に議会選挙が行われる公算が大きい。デンマーク、スロベニア、ラトビアでは政権交代の可能性がある。

図表
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田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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