- HOME
- レポート一覧
- 第一生命経済研レポート
- 内外経済ウォッチ『欧州~グリーンランド問題で米欧の亀裂が拡大~』(2026年3月号)
- 第一生命経済研レポート
-
2026.02.19
欧州経済
その他欧州経済
トランプ関税
内外経済ウォッチ『欧州~グリーンランド問題で米欧の亀裂が拡大~』(2026年3月号)
田中 理
米国がグリーンランドへの野心を露わに
年明け早々、デンマークの自治領であるグリーンランドを巡って、米国と欧州の間の緊張が高まった。トランプ大統領は、グリーンランドの獲得に意欲をみせ、米軍の活用も含めた様々な選択肢を議論していると発言したほか、欧州の8ヶ国に対して関税を引き上げる可能性を示唆した。欧州諸国はこれに反発し、昨年7月に米国と欧州連合(EU)が交わした関税合意の議会批准延期や、米国に対する反威圧措置の発動を求める声も浮上した。トランプ大統領は結局、関税引き上げの方針を撤回し、同島内での米軍の活動やレアアースの採掘などを巡って、協議を続けている。
グリーンランドは北極海と北大西洋に位置し、日本の6倍近い面積を持つ世界最大の島だ。約216万平方キロメートルの国土の81%が氷床に覆われ、6万人弱の人口の多くが、島の西側沿岸部に居住する。かつてはデンマークの植民地だったが、1953年にデンマークの県と同等の自治権を獲得、1979年以降は自治政府が置かれ、広範な自治が認められている。第二次世界大戦中にデンマークがナチス・ドイツに占領された際、米国は同島がナチスの手に渡らないように保護領とした。戦後、デンマークに返還されたものの、島内には今も米軍基地が残る。グリーンランド住民の間にはデンマークからの独立を求める声が根強いが、米国に加わることには反対の声が多い。

高まる不信感、欧州の米国離れが加速
同島は北米大陸と欧州の間に位置し、北極海と大西洋を結ぶ海上航路に跨っている。島内の米軍基地は、冷戦期にはソ連の爆撃機や弾道ミサイルを監視・迎撃する拠点として、現在は宇宙軍の基地として人工衛星の監視などを担っている。
また、グリーンランドには世界でも有数のレアアース資源が眠っているとされる。米国と中国の間の貿易戦争が激化するなか、世界のレアアースの採掘・加工で圧倒的なシェアを誇る中国は、米国に対してレアアースの禁輸措置を発動している。電気自動車用のバッテリー、風力タービン、半導体、軍事装備品などの製造に不可欠な重要鉱物へのアクセスを確保する観点からも、グリーンランドは米国にとって戦略的に重要な意味を持つ。
こうしたグリーンランドの戦略的な重要性は、地球温暖化の進行により一段と増している。北極圏の氷解が進むことで、北方の海上航路は年間を通じてより長く航行可能になりつつあり、レアアースの採掘がより容易になるとの見方がある。
米国の関税引き上げ方針の撤回や、同盟国の領土に対する軍事行動が見送られたことで、米欧間の対立激化はひとまず避けられた。だが、欧州の政治リーダーの間では、米国に対する不信感が一段と高まっている。安全保障分野での米国依存脱却の推進機運が高まり、欧州の防衛力強化の動きが加速する可能性がある。

田中 理
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

