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- 1月18日のポルトガル大統領選挙の世論調査では、極右候補がリードする。決選投票では反極右票の結集で、大統領の座を手にするのは難しいとみられる。初回投票での最多票獲得や決選投票で下馬評以上に善戦すれば、次の議会選挙に向けて勢いづく可能性がある。最近まで極右不毛とみられてきた同国が、欧州全域で広がる右傾化の波にどう対処するかを問う試金石となろう。
ポルトガルでは、マルセロ・レベロ・デソウザ大統領の2期目の任期満了(同国の憲法では連続しての3選は禁止されている)に伴う大統領選挙が1月18日に行われる。世論調査の結果は調査会社によってバラツキがあるが、極右政党「シェーガ」を率いるアンドレ・ベントゥーラ党首、現政権を率いる中道右派政党「社会民主党(PSD)」のルイス・マルケス・メンデス元党首、かつて政権を率いた中道左派政党「社会党(PS)」のアントニオ・ホセ・セグロ元書記長、独立系候補で海軍出身のエンリケ・グベイア・エ・メロ氏、リベラル政党「リベラル・イニシアティブ(IL)」のジョアン・コトリム・デ・フィゲイレド氏の5候補が10%台半ばから20%台前半の支持を集めて拮抗している(図表1)。何れの候補も初回投票で勝利が確定する50%の支持を集めることが困難とみられ、勝敗の行方は2月8日に予定される決選投票にずれ込む公算が大きい。

ルイス・モンテネグロ首相の内閣信任投票が否決され、2025年5月に前倒しで行われた共和国議会選挙(一院制、任期4年、定数230)では、PSDを中心とした中道右派会派「民主アライアンス(AD)」が勝利し、モンテネグロ首相の続投と中道右派による非多数派政権の存続が決まった。1970年代の民政移管後のポルトガルでは、PSDを中心とした中道右派政党と、PSを中心とした中道左派政党が多くの議席を占有し、交代して政権運営を担ってきた(図表2)。二大政党による安定政権が続き、最近までポピュリストや極右勢力が不毛の地とみられてきた同国でも、このところ極右政党が急速に支持を高めている。テレビのサッカー解説などで活躍したベントゥーラ氏が2019年に旗揚げしたシェーガは、結党直後の議会選挙でこそ得票率1.3%で1議席を獲得するにとどまったが、2022年に得票率7.2%で12議席を獲得して第三党になり、2024年には得票率18.1%で50議席に伸ばして第三勢力としての地位を固め、2025年には得票率22.8%で60議席を獲得し、PSを抜き第二党に躍進した(図表3)。既存政治への不満、汚職問題、都市部を中心に深刻化する住宅問題、移民政策などを争点に、急速に支持を伸ばしている。


ベントゥーラ氏は2021年に行われた前回の大統領選挙にも出馬し、全体で三番目となる11.9%の支持を集めた。今回も一部の世論調査で首位を走っているが、決選投票では対立候補が反極右票を集結し、同氏の勝利は難しいとみられている。前述のメンデス候補、セグロ候補、メロ候補、コトリム候補の何れと対峙しても、決選投票では大差で敗れるとの調査結果が多い(図表4)。万が一、ベントゥーラ氏が勝利した場合も、ポルトガルの大統領は儀礼的な役割が中心で、政権運営への直接的な影響は限られる。もっとも、大統領は法案の拒否権や議会の解散権を持つため、環境対策の強化や移民の受け入れ促進などのリベラル寄りの政策実現を阻止することや、極右政党に有利なタイミングで議会の解散・総選挙を決断することが考えられる。

現政権の議会基盤は脆弱で、政権運営が早晩行き詰まり、再び議会の解散・前倒し選挙となるリスクも拭えない。大統領選挙での極右候補の勝利が難しいとしても、初回投票での最多票獲得や決選投票で下馬評以上に善戦すれば、次の議会選挙に向けて勢いづく可能性がある。その意味で、今回の選挙結果は、単に後継大統領の選出にとどまらず、ポルトガルが欧州全域で広がる右傾化の波にどう対処するかを問う試金石となりそうだ。
田中 理
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