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オランダの極右政党が連立を離脱

~移民政策を争点化し、次の総選挙での支持拡大を目指す~

田中 理

要旨
  • オランダの極右政党が連立を離脱した。連立組み換えで議会の過半数を確保することは難しく、秋にも前倒しの総選挙が行われる可能性が高い。最近の世論調査では、極右政党の支持が急落しており、中道右派政党や中道左派政党に肉薄されている。移民政策を争点化し、支持率の回復と次期政権を主導するのが極右の狙いとみられる。今回の連立離脱が党利党略を優先した無責任な行動と受け止められるのか、極右政党の支持回復につながるか、今後の世論調査に注目する。少数政党が乱立するオランダでは、安定政権の樹立が困難な状況にあり、更なる政策停滞が避けられない。

オランダの与党第一党で極右の「自由党(PVV)」は3日、移民政策を一段と厳格化する同党の10提案が連立内で理解を得られなかったことを理由に、前与党で中道右派のリベラル政党「自由民主国民党(VVD)」、新興の中道右派政党「新社会契約(NSC)」、農家の利益を代表する右派ポピュリスト政党「農民市民運動(BBB)」とともに発足した連立政権を離脱した。半年以上に渡った連立協議を経て、昨年7月に誕生したオランダの連立政権は1年経たずに崩壊した。

2023年11月の総選挙で第一党の座を手にした自由党は、他党との連立合意と引き換えに、ウィルダース党首が首相に就任することを断念し、代わりに情報機関トップなどを歴任した官僚出身のスホーフ氏が首相に就任した。スホーフ首相は自由党の連立離脱を「無責任で不必要」と批判し、連立政権が崩壊したことを受け、自らも首相の座を退くことを表明した。政権発足後も連立政権が十分に機能していたとは言い難く、次期政権が発足するまでの間、スホーフ首相が暫定首相として政権を率いるが、更なる政策停滞は避けられない。6月末にはオランダがホスト国として、欧州の再軍備や安全保障体制の強化を検討する北大西洋条約機構(NATO)の首脳国会議も開催される。

少数政党が乱立する(15政党が議会で議席を持つ)オランダでは、第一党の自由党抜きに多数派政権を樹立することは難しい(図表1)。議会第二勢力の緑左党と労働党の統一会派は、自由党を除く連立三党とは政治的な立場が大きく異なり、同会派を中心に左派系政党が結集しても、議会の過半数には届かない。連立組み換えは難しく、現地メディアでは秋にも前倒しの総選挙が行われる可能性が取り沙汰されている。

2023年の前回選挙後の世論調査では、自由党が当初一段と支持を伸ばし、一部で30%以上の支持を集めたが、政権発足後は支持が急落し、最近では20%近くで、緑左党と労働党の統一会派や自由民主国民党に猛追されていた(図表2)。自由党が要求した移民政策の厳格化案には、現行政策と類似したものも含まれ、最近の支持率急落が自由党の連立離脱を促したとみられる。自由党のウィルダース党首は、連立離脱後のソーシャルメディアへの投稿で、移民政策の厳格化案を拒否した連立相手を糾弾し、次の選挙での支持拡大と自らの首相就任に意欲をみせた。今回の連立離脱が有権者から党利党略を優先する無責任な行動と受け止められるのか、移民政策の再争点化に成功し、支持奪還につながるのか、今後の世論調査の動向に注目したい。

次の総選挙が最近の世論調査通りの結果に終われば、今回の政権に加わっていた自由党と自由民主国民党の右派二党に加えて、政権発足後に急速に支持を高めている中道右派政党「キリスト教民主同盟(CDA)」、さらには右派や中道系の少数政党の何れかが連立に参加すれば、過半数に到達する。なお、キリスト教民主同盟は、自由民主国民党が率いた前政権に連立パートナーとして加わっていた。自由党抜きで過半数を上回るには、右派・左派の枠を超えた多党連立が必要で、安定政権の樹立が困難な状況にある。

図表
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田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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