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ユーロはドルに代わる基軸通貨となるか?

~ブルガリアが21番目のユーロ導入国へ~

田中 理

要旨
  • ブルガリアが2026年1月1日からEUの共通通貨ユーロを採用することが決まった。新規採用は2023年のクロアチア以来で、ユーロ圏は21ヶ国体制となる。ブルガリアのユーロ導入で、ユーロ圏の経済的な魅力が劇的に高まる訳ではない。同国はEU内で最も貧しい国の1つで、ユーロ圏内の所得格差が拡大する。単一金融政策運営の舵取りが困難さを増すリスクに注意が必要となる。

  • トランプ大統領の関税引き上げやFRB批判を背景に、ドル安が進行している。ドルの長期的な信認が揺らぐなか、ユーロがドルに代わる基軸通貨国となるかに関心が集まる。ユーロ圏は経済規模や貿易取引の大きさ、金融市場の厚みや流動性の高さ、通貨価値の安定などの面で、ある程度、基軸通貨としての条件を満たしているが、今のところドルを代替できる通貨ではない。

ユーロ圏の財務相会合(ユーログループ)と欧州中央銀行(ECB)は4日、2007年に欧州連合(EU)に加盟したブルガリアが物価、財政、為替、金利から成る収斂基準を満たし、共通通貨ユーロを導入する準備が整ったことを明らかにした。同国のユーロ導入準備は、物価基準の達成が難航したほか、単一通貨の採用に否定的なポピュリストの勢力拡大や不安定な政治環境もあり、当初の計画から後ずれした。7月に最終承認を予定しており、来年1月1日からユーロを法定通貨として採用する。

1999年にドイツやフランスなど11ヶ国で始まった欧州の通貨統合の取り組みは、ブルガリアのユーロ導入で21ヶ国に拡大する。ユーロ導入国の拡大は2023年のクロアチア以来となる。これにより、27のEU加盟国のうち、ユーロを導入していない国は、デンマーク、スウェーデン、ポーランド、ハンガリー、チェコ、ルーマニアの6ヶ国となる。

このうちデンマークは国民投票でユーロの導入が否決され、既にEUを脱退した英国とともに、単一通貨の採用を義務づけない適用除外(オプトアウト)が認められてきた。スウェーデンは正式なオプトアウトの対象ではないが、国民投票で単一通貨の採用を見送る決断をした。ポーランド、ハンガリー、チェコの3ヶ国は、将来的なユーロ導入を目指しているが、当面は自国通貨を維持する方針で、ユーロ導入に向けた積極的な準備を進めていない。今後、EU加盟国が拡大する可能性があるものの、今のところユーロ導入の残る候補国はルーマニアだけとなる。

ブルガリアはバルカン半島に位置する人口約700万人、経済規模(名目GDP)が0.1兆ユーロの小国で、同国の加盟でユーロ圏の経済圏としての魅力が劇的に高まる訳ではない。現在のユーロ圏20ヶ国の人口は約3億5千人、経済規模は15.2兆ユーロに上る。ブルガリアはEU27ヶ国の中で最も貧しい国の1つで、その1人当たりGDPはユーロ圏平均の約3分の1、域内で最も高いルクセンブルクの約9分の1にとどまる。2000年代前半のEUの東方拡大で、経済の成長段階や経済構造が大きく異なる旧社会主義経済圏の国々がEU加盟を果たし、2000年代後半以降、続々と単一通貨圏にも参加するようになった。その歪みが欧州債務危機の遠因になった面もあり、ブルガリアのユーロ導入で単一金融政策運営の舵取りが困難さを増すリスクに注意が必要となる。

米国のトランプ大統領による関税引き上げや連邦準備理事会(FRB)に対する露骨な介入姿勢などを背景に、ドルの信認が揺らいでいる。ドル安の裏返しで、欧州中央銀行(ECB)が利下げを続けるなかでもユーロ高が進行しているほか、米国資産の一部を欧州に振り向ける動きもみられ、ユーロがドルに代わる基軸通貨国となる可能性に期待する声もある。

ブルガリアを含めたユーロ圏の経済規模は、2024年に16.5兆ドルと世界の14.9%を占め、米国(29.2兆ドル)や中国(18.7兆ドル)に次ぐ一大経済圏となる。世界の債券発行額に占めるユーロ建ての割合、外国為替取引に占めるユーロの割合、外貨準備に占めるユーロの割合は、何れも日本円や英ポンドを上回り、米ドルに次ぐ地位を占める。ただ、これはユーロ圏がそこそこの経済規模を持つ国の集まりで、債務水準が大きい国も多いことから、ユーロが利用される割合が高くなるに過ぎない。ユーロ圏以外の国で、ユーロが決済通貨や準備通貨として利用される割合は低い。

ユーロ圏はその経済規模や貿易取引の大きさ、金融市場の厚みや流動性の高さ、通貨価値の安定などの面で、ある程度、基軸通貨としての条件を満たしているが、これまで数々の危機に見舞われ、多くの国で政治不安や財政不安を抱えるなど、今のところドルに代わり得るものではない。

以上

田中 理


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田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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