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注目のキーワード『高温耐性品種』

宍戸 美佳

秋の到来とともに届くのが新米。夏場にスーパーなどの店頭からお米がなくなるといった状況が発生したこともあり、例年にもまして待ち遠しかったという方もいらっしゃるかもしれません。

この流通量の不足の一因として指摘されているのが昨年夏の猛暑です。今年の夏も異常気象と言われるほどの高温でしたが、こうした夏の暑さは、米粒の白い濁り(白未熟粒)や米粒内部の亀裂(胴割米)、カメムシ類といった害虫の多発とこれによる斑点米の発生などの高温障害を引き起こし、お米の品質に影響を与えます。農林水産省によれば、2023年度産の一等米比率は、東日本を中心に多くの県において、2018年から2022年の5年間のうち、最低年と最高年を除く3年間の平均と比較して低下が見られたとのことです。

こうした猛暑のような気候変動の影響に対して、稲作においても対応が進められています。その一つが、高温耐性品種とよばれる高温にあっても玄米品質や収量が低下しにくい品種の導入です。高温耐性品種の作付面積は2010年には37,700ha、主食用作付面積に占める割合は2.4%でしたが、2023年には182,936haと4.85倍に、また割合も14.7%と、大幅に増加しています。なかでも新潟県や千葉県、山形県といった県で作付面積が大きく、導入が進んでいるようです。では、品質面ではどうでしょうか。2023年度の各県全体の一等米比率と、高温耐性品種の一等米比率とを比較すると、多くの県で高温耐性品種の一等米比率が県平均を上回る結果が出ており、高温年においてもお米の品質低下の割合が小さいなど、高温耐性品種の導入効果が見られています。こうした高温耐性品種は今後も作付が拡大することが見込まれます。もしかすると、お米屋さんやスーパーで今まであまり馴染みのない品種名のお米を見かけた場合には、高温耐性品種であるかもしれません。

漢字の「米」は、「八十八」という文字から作られたといわれており、88回もの手間がかかることを意味するそうです。技術の進歩などで実際の工程数はこれより少ないかもしれませんが、こうした多くの手間に加え、気候変動と闘う米農家の方々の努力に思いを馳せながら、私たちの食卓に届く新米を有難く頂きたいと思います。

(総合調査部 政策調査グループ 次長 宍戸 美佳)

宍戸 美佳


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