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注目のキーワード『白雪、胡粉、白練』

宍戸 美佳

赤や黄色の錦繍(きんしゅう)が朽葉色(くちばいろ)となり、やがて常盤色も白くまだらになる、場所によっては白銀の世界が広がる季節を迎えようとしています。「白雪(しらゆき)」など、一般的に雪は白い、と形容されますが、この「白」以外にも、「胡粉(ごふん)」や「白練(しろねり)」など、伝統的な色合いを表現する様々な美しい言葉があります。貝殻を焼いて作られる顔料である胡粉は不透明な白色、白練は生絹の黄味を消し去る精練を施した絹の白さを表すそうです。

この絹ですが、昭和初期には全国の農家220万戸(当時の農家の約40%)で養蚕が行われていたそうです。しかし、2024年時点ではわずか130戸あまり、繭の年間生産量も40トン前後にとどまり、群馬、栃木、福島の3県で全国の約7割を構成しています。こうした国産の繭から生産される生糸のシェアは、国内需要全体の1%を下回るとされています。かつて最大の輸出産業であった蚕糸業ですが、今や生糸や絹織物は輸入によって賄われているのが現状です。このうち生糸はその過半を中国から輸入しており、次いでブラジル、ベトナムとなっています。

この生糸・絹織物産業の特徴として指摘されるのが、そのサプライチェーンに関連する業種の多さです。例えば、国産の正絹の着物が消費者の手に届くまでには、養蚕農家、製糸業者、絹織物業者、染加工問屋、小売業者などが関わっています。近年では、自社で育てた国産の繭から生糸を取り出し、絹糸に加工して絹織物や製品に仕上げ、販売まで行うことでサプライチェーンを統合する、あるいは海外のラグジュアリーブランドとも協業する老舗織物企業が養蚕を行うなど、トレーサビリティや品質を高め、高付加価値化を図る取組がみられます。また、遺伝子組換え技術を活用した研究も進み、蛍光色に発色する生糸や、染色時の発色がよく光沢や肌触りにも優れた超極細の生糸の開発、さらには蚕のたんぱく質を活用した医薬品や化粧品などの研究も進められています。

サプライチェーンの再構築や先端技術の活用により、養蚕や絹織物といった伝統的な産業の新たな地平が広がり、その再発展につながることを願ってやみません。

(総合調査部 政策調査グループ 次長 宍戸 美佳)

宍戸 美佳


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