よく分かる!経済のツボ『デジタル経済の課題とは?』

大柴 千智

目次

拡大するデジタルプラットフォーム

インターネットやスマートフォンが普及した現代において、ネット通販を利用したり、動画や音楽をオンラインで視聴したりすることは日常生活となりました。これに併せて、経済活動の場もインターネットを介して大きく変化しています。経済産業省の「電子商取引(以下EC)に関する市場調査」によると、日本の消費者向けEC(受発注がオンライン上で行われる財・サービスの販売額)市場の規模は、21年には20兆円を超え、年々拡大していることがわかります(資料1)。

こうしたオンラインサービスを提供するICT企業は「デジタルプラットフォーム」と呼ばれる新たなビジネスモデルを展開し、急速に台頭しています。ユーザー同士(例えば、出品企業と消費者)のマッチングを目的とするプラットフォーム・ビジネス自体は、百貨店など古くから存在しましたが、こうした伝統的なプラットフォームに比較して、デジタルプラットフォームは時間や場所に制約がないため、マッチングできるユーザーや商品の種類が膨大なことや、蓄積されるデータ量が膨大なこと等が特徴として挙げられます(資料2)。

デジタルプラットフォームの競争確保が課題

デジタルプラットフォームで提供される様々なサービスは、私たちの生活の利便性を一躍高めました。その一方で、経済学的な観点からは、デジタルプラットフォームは①利用者が多ければ多いほどさらに利用者を呼び込みやすい構造であること(ネットワーク効果が働きやすい)、②様々なサービスと連動していることで、たとえ他に質の高い代替的なサービスがあったとしても、利用者が乗り換えを躊躇うこと(スイッチングコストが高い)など、競争市場にとっては負の効果とも呼べる特徴も有しています。こうした特徴は、新しいサービスの新規参入を妨げるおそれや、個社の市場支配力が高まることで企業間の競争が滞る可能性が指摘されます。各国では、多様な事業やサービスを創出するために、デジタルプラットフォームを巡る健全な競争環境の整備が推し進められています(資料3)。技術進歩のスピードに対して、経済・法など社会的な仕組みが追い付いていないのが現状といえ、今後は技術者・政策立案者両面からの一層の協働が求められるでしょう。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

大柴 千智


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

大柴 千智

おおしば ちさと

経済調査部 副主任エコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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