デジタル国家ウクライナ デジタル国家ウクライナ

キャプション作成AIの衝撃

~AIが自動で文章生成! キャプション作成の革命~

柏村 祐

目次

1.キャプション作成の現場における課題

近年、デジタルコンテンツの急増に伴い、画像や動画に適切なキャプションを付与することが重要になってきている。キャプションとは、画像や動画に添えられる短い説明文のことで、コンテンツの内容を簡潔に伝え、閲覧者の興味を引く役割を果たす。特にSNSやブログに画像を投稿する際に、キャプションは必要不可欠な要素となっている。

現在、SNSに画像等を投稿してビジネスに活用している企業は、ファッション、美容、飲食、旅行など、幅広い業種に及ぶ。これらの企業は、魅力的な画像とともに、適切なキャプションを付与することで、製品やサービスの情報を消費者に効果的に発信している。たとえば、ファッションブランドのアカウントでは、新商品の画像とともに、商品の特徴や着こなし方を提案するキャプションが投稿されている。美容業界では、メイクアップのテクニックやスキンケアの手順を説明するキャプションが、関連する画像とともに発信されている。このように、キャプションは消費者に向けて直接的にメッセージを伝える重要な手段となっている。

しかし、現場のキャプション作成者は、膨大な量の画像を処理する中で、様々な困難に直面している。まず、画像の内容を正確に把握し、的確な言葉で表現することは容易ではない。特に、抽象的な概念や複雑な状況を描写する画像の場合、キャプションを作成するのに多くの時間と労力を要する。また、画像に含まれる物体や人物の識別、背景の理解、文脈の解釈などにも高度なスキルが求められる。さらに、キャプション作成者は、作業時間や作業量の多さに悩まされている。大量の画像を処理しなければならない状況下では、一枚一枚の画像に十分な時間をかけることができず、質の高いキャプションを作成することが難しくなっている。加えて、キャプションの一貫性や品質を維持することも課題である。複数の作成者が関わる場合、個人差によってキャプションの質にばらつきが生じる可能性がある。また、言語の多様性や文化的背景の違いにより、適切なキャプションを作成することが難しい場合もある。

こうした現場の課題に対し、AIを活用することで作業の効率化や品質の向上が期待できるため、AIによるキャプション自動作成技術に注目が集まっている。本稿では、キャプション作成AIの実態を解説するとともに、その可能性について述べる。

2.キャプション作成AIの実態

キャプション作成の現場における課題を解決するために、近年、AIを活用したキャプション自動作成技術が注目を集めている。キャプション作成AIは、画像認識技術と自然言語処理技術を組み合わせることで、画像の内容を自動的に分析し、適切なキャプションを作成することができる。このAIは、大量の画像とキャプションのデータを用いて機械学習を行うことで、高い精度でキャプションを作成する。

以下では、実際にキャプション作成AIの実態を確認するために、晩餐会の風景と旅行の風景の画像を実験対象としてAIがどのようなキャプションを作成するかを確認する。

まず、晩餐会の風景についてキャプションを作成するため、キャプション作成AIに晩餐会の画像を読みこませ、「キャプションを作成してください」と指示してみた。この指示を受けてキャプション作成AIは、「この写真は豪華な晩餐会の食卓を描写しています。金色のオブジェや燭台が華やかな雰囲気を醸し出し、テーブルの上にはアヒルの丸焼きが主役のメインディッシュとして盛られています。周りには柑橘類の果物なども飾りつけされ、エレガントな食器類が並んでいます。全体として、温かみのある照明の中で上品な宴の雰囲気が感じられる写真となっています。このような豊かなディナーの光景は、特別な記念日やお祝いの席などを想起させますね」と出力した。

また、作成されたキャプションを短くキャッチーなものにするために「20文字以内でキャッチーなキャプションにしてください」と指示したところ、キャプション作成AIは「アヒルと果実の宴 豪華絢爛、至福の時」と出力した(図表1)。

図表1 AI が晩餐会の風景のキャプションを作成する様子
図表1 AI が晩餐会の風景のキャプションを作成する様子

次に、キャプション作成AIに旅行の風景を読みこませ、「キャプションを作成してください」と指示したところ、キャプション作成AIは「この幻想的な風景画は、雄大な架橋が森の中の川に架かり、太陽の光が木々の間から差し込んでいる様子を描いています。橋の装飾は精巧で、神秘的な雰囲気を醸し出しています。川には小舟が浮かび、人々が橋を渡っていく様子が見られます。背景には神殿のような建物もあり、この場所が聖なる土地であることを示唆しているようです。全体的に、自然と建築物が調和した、夢のような美しい情景が表現されています」と出力した。

その後、観光業の経営者の立場で「宣伝に使いたいのでキャッチーなキャプションを短く作成ください」と指示すると、「神秘の架け橋、運命の出会いへ」というキャプションを作成した(図表2)。

図表2 AI が旅行の風景のキャプションを作成する様子
図表2 AI が旅行の風景のキャプションを作成する様子

これらのように、キャプション作成AIは、画像の内容を正確に把握し、適切な言葉でキャプションを作成することができる。また、大量の画像を短時間で処理できるため、キャプション作成の効率を大幅に向上させることが期待できる。

3.キャプション作成AIの可能性

キャプション作成AIは、様々な業種においてビジネスに活用されている。特に、SNSマーケティングを積極的に行っている企業にとって、キャプション作成AIは大きな可能性を秘めている。たとえば、先に述べたように、ファッション業界や美容業界では、商品・サービスの特徴や活用方法を提案するキャプションを大量に作成・発信する必要がある。飲食業界では、メニューの画像とともに、料理の特徴や味わいを表現するキャプションを作成することが有効だ。旅行業界でも、観光地の画像とともに、その魅力や見どころを伝えるキャプションが重要となる。

これらの業種では、大量の画像に対して魅力的なキャプションを付与することが、消費者との効果的なコミュニケーションにも役立っている。たとえば、ファッションブランドのアカウントでは、新商品の画像とキャッチーなキャプションを組み合わせることで、消費者の興味を引き付け、購買意欲を高めることができる。美容系インフルエンサーは、メイクアップのテクニックを説明する画像と詳細なキャプションを投稿することで、フォロワーからの信頼を獲得し、自身のブランド価値を高めている。飲食店は、メニューの画像と美味しそうなキャプションを組み合わせることで、来店客の増加につなげている。旅行会社は、魅力的な観光地の画像と興味をそそるキャプションを発信することで、旅行商品の販売促進を図っている。

キャプション作成AIは、これらのビジネスシーンにおいて、キャプション作成の効率化と品質向上に大きく貢献する可能性を秘めている。AIの活用で大量の画像を短時間で処理できるようになり、人的リソースを他の重要な業務に振り向けることができる。また、一定の品質を保ちながら多彩なキャプションを作成し、消費者の興味を引き付けることもできる。

さらに、キャプション作成AIは、言語の壁を越えたグローバルなコミュニケーションにも貢献できる。AIによる自動翻訳機能と組み合わせることで、多言語でのキャプション作成が可能となる。これにより、世界中の消費者に向けてローカライズされたキャプションを発信し、グローバル市場の開拓につなげることができる。

ただし、キャプション作成AIの活用にあたっては、いくつかの課題に留意する必要がある。まず、AIが生成するキャプションが、ブランドイメージや企業の価値観に合致しているかを入念に確認することが重要である。AIの出力をそのまま使用するのではなく、人間の監修を経ることで、ブランドの一貫性を維持することができる。また、AIによるキャプション生成では、著作権や肖像権などの法的問題にも注意が必要である。AIが学習したデータに由来する表現が、著作権等を侵害するリスクがあるためだ。

こうした課題を克服しつつ、キャプション作成AIの活用を進めることで、企業のSNSマーケティングは大きく進化していくだろう。キャプション作成AIは、効率的で魅力的なコンテンツ作成を可能にし、顧客エンゲージメントを高める強力なツールになりうる。今後、キャプション作成AIの技術がさらに進化し、ビジネスへの応用が進むことで、SNSを活用したマーケティングの可能性が大きく広がっていくことが期待される。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

執筆者の最新レポート

関連レポート

関連テーマ