よく分かる!経済のツボ『世界経済の回復を支える半導体』

奥脇 健史

コロナ禍で需要急増の半導体

2021年初に半導体不足が報じられるなど、世界的に半導体の需要が高まっています。半導体は「産業のコメ」とも呼ばれ、家電、自動車、通信機器のほか、IoT、AI向けなど幅広く利用されています。20年は5Gの本格稼働が進んだことや、巣ごもり、リモートワークの広がりを背景に、家電、PC、データセンター向けなどの需要が高まりました。その中で、20年夏以降、世界経済の回復に伴い自動車の生産が急回復、自動車向けの半導体需要が急増しました。結果、半導体の供給が追い付かなくなり、一部自動車メーカーでは生産調整が行われるなど、半導体不足が顕在化しました。

日本の貿易統計をみると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で20年の輸出額は前年比▲11.1%と大きく落ち込みましたが、その中でも半導体等電子部品は同+1.8%、半導体等製造装置は同+2.0%と前年を上回る輸出額となりました。また、生産動向をみても、半導体関連の電子部品・デバイス工業の生産指数は20年5月を底に急回復、21年1月は過去最高の水準となりました(資料1)。このように半導体の輸出、生産は堅調に推移し、製造業回復のけん引役となっています。

資料1 鉱工業生産指数の推移(季節調整値)
資料1 鉱工業生産指数の推移(季節調整値)

2021年も堅調な推移が見込まれる半導体市場

2021年も半導体需要は高水準が見込まれています。世界の主要半導体企業30社で構成されるSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は、20年から21年にかけてアメリカの主要株価指数であるS&P500指数を大きく上回るパフォーマンスをみせるなど、半導体需要の高まりや今後の成長期待から堅調に推移しています。(資料2)。また、WSTS(世界半導体市場統計)によると、21年の世界半導体市場は前年比+8.4%と拡大、過去最高額になると予測されました(資料3)。

資料2 SOX指数、S&P500指数の推移(2020年1月2日=100)
資料2 SOX指数、S&P500指数の推移(2020年1月2日=100)

資料3 世界の半導体市場予測(2020年12月時点)
資料3 世界の半導体市場予測(2020年12月時点)

このように、コロナ禍が続く中、引き続きリモート需要が見込まれるほか、5GやIoT、AI向けの先端技術需要など、半導体需要は底堅いものが続く見込みです。今後も世界経済の回復を半導体がけん引していくことが期待されます。

奥脇 健史


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。