【1分解説】経常収支とは?

平岡 一弘

  音声解説

経常収支とは、日本が海外との貿易やサービス、投資収益といった経済取引で生じた収支を示す重要な経済指標のひとつで、財務省が国際収支統計のなかで毎月公表しています。

その内訳は、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支、旅行や知的財産権・特許使用料などのサービス収支、海外との利子や配当の受払いからなる第1次所得収支、政府開発援助(ODA)など第2次所得収支の4つの要素からなっています。

日本は経常収支黒字が長く続いていますが、その構造は大きく変わってきました。かつて経常収支黒字をけん引してきたのは貿易収支でした。しかし1995年の記録的円高、2008年リーマンショックの円高を経て、日本産業は国内生産品を輸出して利益を生み出す構造から現地生産・直接投資に大きく転換していきました。その流れを受け2005年からは第1次所得収支が貿易収支の黒字を上回り、経常収支全体を牽引しています。

2022年は第一次所得収支が34.5兆円の過去最高黒字となりましたが、貿易収支は鉱物性燃料の高騰などにより▲15.7兆円の大幅赤字となり、経常収支は10.7兆円の黒字にとどまっています。

また、2023年10月はインバウンド大幅増加で旅行収支の黒字幅が拡大したこと等からサービス収支が黒字に転化しました。サービス収支は長らく赤字が続いていましたがインバウンド増加による黒字化が定着するか否かも注目です。

【参考資料】財務省 国際収支状況

財務省 国際収支状況
財務省 国際収支状況

この解説は2023年12月時点の情報に基づいたものです。

平岡 一弘


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