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2026.05.22
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米国: 製造業の牽引で拡大ペース維持(26年5月PMI)
~中東緊迫化による供給網リスクとインフレ圧力の強まり~
桂畑 誠治
- 目次
1. 景況感は予想を若干下回るも、拡大圏を維持
26年5月のS&Pグローバル米国総合購買担当者指数(PMI)速報値は51.7となり、前月の51.7(改定値)から横ばいで推移した。市場予想中央値の51.8を小幅に下回ったものの、景況判断の分岐点である50を上回っている。部門別にみると、製造業PMIは55.3 (前月54.5)と0.8ポイント上昇し、10ヵ月連続で50を上回った。一方、サービス業PMIは50.9(前月51.0)と0.1ポイントの微減にとどまり、拡大圏を維持。サービス業の活動がわずかに減速したものの、製造業の勢いが一段と増したことで、経済全体の拡大ペースが維持された格好だ。
トランプ政権による関税政策やイランを巡る地政学リスクなど、政策不確実性が高まる局面においても総合PMIが拡大を維持した事実は、民間需要の底堅さを改めて裏付けている。ただし、発表元は「過去3カ月平均の受注動向は過去2年で最も弱い水準に鈍化している」と指摘。さらなる物価上昇や供給遅延を警戒した「予防的な在庫積み増し」による押し上げ効果は一時的である可能性が高く、先行きへの警戒感も滲ませている。
2. 需要拡大の裏で、セクター間の明暗が分かれる雇用動向
主要項目の動きをみると、総合新規受注は51.9(前月50.5)へと1.4ポイント上昇し、需要の再加速を示唆した。もっとも、これには価格上昇や供給不足を見越した駆け込み需要も影響している。内訳はまだら模様であり、製造業が54.6(同56.5)に低下した一方、サービス業は51.5(同49.5)と拡大圏へ浮上した。
一方、総合雇用は48.8(同50.2)と縮小圏に落ち込み、全体としての雇用抑制傾向が示された。ホルムズ海峡の事実上の封鎖が長期化するなか、企業がコスト増と先行き不透明感から人件費の抑制に動いた形だ。セクター別の明暗は鮮明で、製造業が53.2(同49.1)と拡大圏へ力強く上昇したのに対し、サービス業は48.1(同50.4)へと急低下し、全体の足を引っ張る結果となっている。
3.コスト増と価格転嫁の動きが一段と鮮明化
インフレ指標面では、総合投入価格が64.0(前月61.3)、総合産出価格が58.9(同58.4)とともに上昇基調を強めた。関税負担や賃金上昇に加えて、ホルムズ海峡の緊迫化に伴うエネルギー・資源価格の高騰が重くのしかかっており、企業がコスト増を川下に転嫁する動きが顕著だ。特に製造業では、産出価格が63.3(同61.7)へ上昇したものの、投入価格が79.5(同68.4)とそれを大幅に上回るペースで急騰。財価格の上昇が続いているにもかかわらず、製造業の採算性が急速に悪化している実態が示された。サービス業でも投入価格指数が61.3(同60.1)、産出価格指数が58.1(同57.8)とそろって前月から上昇しており、依然として強いインフレ圧力が継続している。
4. 製造業では雇用と供給網の目詰まりが主たる押し上げ役、サービス業の楽観姿勢は高い水準
製造業PMIの構成要素をより詳細にみると、新規受注が54.6(同56.5)へ低下したものの、生産が56.2(同56.0)、雇用が53.2(前月49.1)、在庫が53.3(同51.2)と軒並み改善した。各要素の寄与度では、新規受注が▲0.57ポイントの押し下げ要因となった一方、雇用が+0.81ポイント、入荷遅延が+0.32ポイント、在庫が+0.21ポイント、生産が+0.05ポイントとなり、雇用と供給網の目詰まりが指数の主たる押し上げ役となった。
サービス業の活動指数は50.9(前月51.0)と小幅な低下にとどまり、事業活動の拡大持続を示した。新規受注が51.5(同49.5)へ改善したほか、先行きを示す「将来の活動指数」は60.3(同61.9)と高水準を維持しており、サービス関連企業の楽観姿勢は総じて崩れていない。
5.四半期ベースの基調は製造業の力強い上昇により全体の拡大ペースが維持された
四半期ベースの基調に目を向けると、4、5月平均の総合PMIは51.7となり、1-3月期の平均51.7から横ばいで推移している。これは米国の民間需要の拡大ペースが維持されている証左といえる。中身としては、サービス業が50.9(1-3月期51.4)へと減速した分を、製造業が54.9(同52.1)へと力強く上昇して相殺した形であり、製造業の牽引によって全体の拡大ペースが維持された構造となっている。



桂畑 誠治
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 桂畑 誠治
かつらはた せいじ
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経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済
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