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- トランプ大統領が1~3月に大規模な証券取引
5月14日、米連邦政府倫理局は2026年1~3月期におけるトランプ大統領の資産報告書を公表した。同大統領は3,700回以上にわたって株式等の売買を行っており、その取引規模はロイター集計に基づくと2.2億~7.5億ドル(約350~1,200億円)に達する。なお、報告書では取引日・対象企業(株式や社債などの対象は不明。ETFなども含まれる)・売買方向・取引額のレンジが示されており、実際の取引損益は同報告書のみではわからない。
こうした取引は利益相反の懸念がある。まず、同時期は米国の対イラン攻撃などを背景に株価が大きく動いており、大統領は自身の政策決定が株式市場に影響を与えうることを認識していただろう。加えて、売買対象の銘柄には大手テック、半導体、航空機メーカーなどが含まれ、これらの株価動向は大統領が事前に把握していた情報や連邦政府の方針に影響を受ける可能性があった。具体的な取引材料として、1月に決定した対中半導体輸出の規制緩和、2月の国土安全保障省による大手ソフトウェア企業への10億ドルの発注契約、米中首脳会談時における中国の米国製航空機の購入契約(3月報道)、などが指摘できる。
トランプ大統領の息子エリック氏は、こうした利益相反の可能性を明確に否定している。「(取引は)幅広い市場インデックスに連動するよう大手金融機関が実行している」とし、売買取引の決定にあたってトランプ大統領やその家族の関与はないと述べている。
とはいえ、トランプ氏はこれまでの大統領と異なり、就任時に所有資産の売却や白紙委任信託(ブラインド・トラスト;詳細は後述)を利用していない。この理由として、2017年の第一期就任時には「不動産などの所有資産の売却が容易でないこと」、「不動産やホテルなど多角的な事業を第三者が管理・運営するのは難しいこと」、「仮に事業を第三者に信託しても、不動産売却などの動きは報道されるため、資産状況が本人に秘匿化されないこと」などを挙げた。なお、トランプ氏は事業運営を息子たちに委ねているものの、引き続き経営に影響を及ぼす懸念があるため、利益相反対策としては不十分との指摘が多い。
トランプ氏以前の大統領はブラインド・トラストを活用してきた。ブラインド・トラストは個人の資産管理を第三者に委託するものであり、投資判断等に所有者の意思が反映されないため、政治家の利益相反を避けられる利点がある。ただ、これは法的な義務ではなく、あくまで慣例に過ぎない。また、米国では連邦政府職員が自身の経済的利益に影響を及ぼす案件に関与することが原則禁止される一方、職務の性質上、大統領と副大統領はこの利益相反法の対象から免除されている。
足下の米国では、公職者の利益相反やインサイダー取引を巡る関心が強まっている。4月下旬、米司法省は機密情報を活用し賭け市場で利益を得たとして、ベネズエラ軍事作戦に関わった陸軍兵士を起訴した。また、連邦議会下院では議員による個別株取引を禁止する法案が超党派で提案されており、トランプ大統領も2月の一般教書演説にて議員に対するインサイダー規制を強化するよう求めている。なお、大統領は議会が可決した法案に対して拒否権を有するため、こうした法案が大統領やその親族への規制強化を含む形で成立する可能性は当面低いだろう。
前田 和馬
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

