米国 26年1月雇用統計は労働市場安定化の兆しを示す

~雇用・平均時給の加速、失業率の低下、労働需要の強まりを確認~

桂畑 誠治

要旨
  • 26年1月の非農業部門雇用者数(事業所調査)は、前月差+13.0万人(前月同+4.8万人)と24年12月の同+23.7万人以来の速いペースとなり、市場予想中央値(ブルームバーグ集計)の同+6.5万人(筆者予想同+7.2万人)を上回った。政府部門が同▲4.2万人(前月同▲1.6万人)と減少ペースを速めた一方、民間部門は同+17.2万人(同+6.4万人)と増加ペースが大きく加速し、市場予想中央値(ブルームバーグ集計)の同+6.8万人を大幅に上回った。
  • 非農業部門雇用者数は、早期退職プログラムの影響による10月の落ち込みの影響が剥落したことによって、3カ月移動平均で前月差+7.3万人(前月同▲1.7万人)と増加に転じた。6ヵ月移動平均では前月差+1.4万人(同+0.3万人)と小幅増加にとどまった。民間雇用者数をみると、3カ月移動平均で前月差+10.3万人(前月同+5.0万人)、6ヵ月移動平均で前月差+6.2万人(同+4.4万人)と増加ペースが徐々に加速していることが示された。
  • 民間部門では、医療・社会支援が、強い需要や人手不足を背景に、同+12.35万人と加速し引き続き最大の増加となったほか、データーセンター建設需要の強い建設業(同+3.3万人)、良好な天候や需要の堅調によって飲食店(同+2.78万人)、専門・技術サービス(同+2.73万人)、教育サービス(同+1.32万人)が高い伸びとなった。また、製造業が同+0.5万人と24年11月以降で初めて増加し、派遣業も同+0.91万人の増加となった。 一方、カナダや欧州などからの旅行者の減少の影響もあり、芸術・エンターテイメント・余暇(同▲1.56万人)、宿泊(同▲1.06万人)が減少したほか、生成AI効果で情報産業(同▲1.2万人)、オバマケア補助金停止による業績悪化を背景に保険(同▲1.13万人)、船舶やドライバー不足、物流停滞の影響で輸送・倉庫(同▲1.12万人)が大幅な減少となった。
  • 金融市場では、1月の非農業部門雇用者数が市場予想を上回り、失業率が市場予想に反して改善したこと等を受け、年前半に政策金利が据え置かれるとの見方が強まった。FF金利先物の示す4月FOMCでの据え置きの可能性は、約79%(前日約58%)に上昇し、25bpの利下げの可能性が約20%(前日約36%)に低下した。26年末のFF金利の水準は、3.13%と前日の3.06%から小幅上昇した。2年国債利回り、10年国債利回りは上昇した(P7)。為替市場では、ドルが主要通貨に対して上下に変動した後、強含んだ。主要株価指数は、一旦上昇したが、金利上昇やAIによる産業構造変化への警戒感から、水準切り下げた。
  • トランプ2.0では、制度や政策の大幅な変更を多数の大統領令によって早期に実行したことで、混乱を招き、25年の米労働市場は軟化した。通商政策では、関税の賦課・撤回・上乗せの実行や、大幅な追加関税賦課などの発言を繰り返すことで不確実性が高まり、企業が採用抑制や人員削減の動きを強め、民間部門雇用の増加ペースを鈍化させた。また、移民規制や不法移民の取り締まりの強化によって、労働供給の抑制に繋がっている。米労働市場は、低雇用、低解雇が続き、均衡した状況となっている。  今後、米中が、25年10月末にレアアースの輸出規制強化や関税上乗せなどの1年延期で合意したことで、世界規模の貿易戦争の激化は、当面回避された。また、トランプ関税の一部の合法性が問われている裁判の判決内容にかかわらず、トランプ政権の代替の関税策を警戒して各国・地域が通商合意を順守する可能性が高いほか、商品別関税についても貿易相手国が対抗措置を取れないとみられ、先行きの不確実性が徐々に低下することで、民間雇用の増加ペースは加速すると見込まれる。
  • 1月の失業率(U3、家計調査)は、4.3%(前月4.4%)と、労働参加率が62.5%(62.4%)と上昇するもと、市場予想中央値4.4%(筆者予想4.3%)に反して改善した。また、「広義の失業率(U6)」は、8.0%(同8.4%)と低下した。これは、上述の失業率(U3)に“現在は職探しをしていないが過去1年間に求職活動を行った人“と”正規雇用を探しているがパートタイムで働いている人“を失業者に加えた数値。U6は、徐々に上昇し、労働市場の緩やかな軟化傾向を示しているが、U3と同様に過去と比較して依然低い水準にとどまっている。さらに、高いほど労働環境が良好であることを示す自発的失業率が14.0%(同11.1%)と急上昇しており、労働者が雇用環境に対して楽観的な見方を強めたことが示唆された。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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