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トランプ政権の「新10%関税」に違法判断

~制限される関税政策~

前田 和馬

5月7日、米国際貿易裁判所はトランプ政権が2月24日に発動した10%一律関税を違法と判断した。同措置は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置が最高裁で違憲と判断された後、同政権が代替的に導入したものである。(同政権が根拠とする)通商法122条は「構造的な国際収支問題(赤字等)」に対処するために大統領へ関税(最大15%を150日間)を課す権限を与えるものの、裁判所は政権が主張する貿易赤字問題などは同法の基準を満たさないと判断した。

ただ、違法判決に基づき関税が差し止められるのは原告の中小企業2社とワシントン州に限定され、その他の民主党系の州の訴えは原告適格を欠くとして棄却された。このため、関税差し止めが全輸入に対して実施されるわけではなく、10%関税の幅広い適用は7月24日まで概ね維持される見込みだ。また、政権は違法判決を不服として上訴する可能性が高い。

今回の判決が当面の米国経済に与える影響は限られる。(違法と判断された)122条関税の有効期間は150日のみであり、トランプ政権も同関税を一時措置とし、最終的には現在調査を進めている301条関税に移行する方針である。とはいえ、司法によるIEEPA関税と122条関税の停止命令はトランプ政権による強引な法解釈への歯止めとなっている。7月以降に発動が見込まれる301条関税を巡っても、「不公正な貿易慣行」を特定したうえで関税措置に踏み切る必要があり、やや強引な運用は法廷闘争及び差し止めのリスクを浮上させるかもしれない。また、トランプ政権が現時点で比較的柔軟に活用できるのは自動車や鉄鋼などの品目別関税(通商拡大法232条)のみとみられ、自動車輸出シェアの大きい日本やEU等を除くと、各国との貿易・外交交渉に関税の脅しを効かせにくくなっている。

なお、2月20日に違憲と判断されたIEEPA関税については、4月20日から徴収済み関税の返還申請を受け付けており、一部の返金が既に開始されている模様だ。IEEPAに基づく徴収済み関税は1,660億ドル(GDP比0.5%)に達し、返還に際してはこれに利息が付与される。

以 上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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