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オーストラリア準備銀、インフレ長期化を示唆し、緩和余地は限定的

~声明文では来年の追加利下げに言及もハードル高い、豪ドル相場は外部環境に左右される展開か~

西濵 徹

要旨
  • オーストラリア準備銀行(RBA)は11月4日の定例会合で政策金利(OCR)を3.60%に据え置いた。RBAは今年に入り3回の利下げを実施したが、インフレの再加速を受けて2会合連続で金利を据え置いた。7-9月のインフレ率は前年比+3.2%と目標上限を上回っており、RBAは足元のインフレ加速は「一時的要因による」としているが、今後数四半期にわたってインフレ率が3%を上回る伸びが続くとの見通しを示している。
  • 声明文では、足元の金融政策を「やや引き締め的」と評価しつつ、景気と物価の見通しに上下双方向の不確実性があると指摘した。物価安定と完全雇用の実現を最優先とし、データ次第で見通しを更新する方針を維持した。来年の追加利下げに言及したが、実現のハードルは高く、全体としてタカ派姿勢を強めている。
  • ブロック総裁も会見で「利下げは検討しなかった」と述べ、先行きの政策対応について明言を避けた。金利水準は「ほぼ中立的」とし、会合ごとに判断する考えを示した。為替市場では、米FRBの政策不透明感から豪ドルは米ドルに対して上値が重いが、RBAの利下げ余地は限られるため下値も限定的とみられる。一方、日本円に対しては日銀の政策運営次第の展開が続くと見込まれる。

オーストラリア準備銀行(RBA)は、4日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を3.60%に据え置くことを決定した。RBAは今年、2月、5月、8月と約3ヶ月ごとに計3回、累計75bpの利下げを実施するなど金融緩和を進めており、前回の利下げからちょうど3ヶ月が経過するなかで今回の判断が注目された。しかしながら、RBAによる金利据え置きは今回で2会合連続となり、9月の前回会合では過去の利下げの効果を見定めるとともに、インフレが加速に転じる動きをみせたことを受けて『タカ派』姿勢を強めた(注1)。さらに、先月末に公表された7-9月のインフレ率は前年同期比+3.2%と5四半期ぶりにRBAが定めるインフレ目標(2~3%)を上回る伸びとなり、コアインフレ率も同+3.0%と上限に達する動きが確認された(注2)。こうしたことから、その後の金融市場ではRBAが今回の定例会合で政策金利を据え置くとの見方が広がったほか、筆者も全会一致での金利据え置きを決定すると予想した。

図表
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会合後に公表された声明文では、今回の決定は「全会一致」であったことが示され、予想通りの結果となった。そして、足元の物価動向について「上昇している」との認識を示すとともに、「8月の定例会合時点の想定を大幅に上回っている」とする一方、その理由に「一部の州で電力料金に対する補助金政策が終了した影響が大きい」と指摘した。その上で、「足元の基調インフレの加速は一時的な要因によるもの」とした上で、「2026年に追加で1回利下げを行うと仮定した最新のインフレ報告の想定では、基調インフレは今後数四半期3%を上回る伸びで加速した後、2027年は+2.6%に安定する」との見通しを示した。一方、実体経済について「回復しつつあるが、先行きは依然不透明」との見方を示しつつ、「民間需要の堅調さが確認される」一方で「労働市場はややひっ迫した状況が続いている」とした上で、「国内外の情勢を理由に景気と物価の見通しに不確実さがある」とした。具体的に、国内では「民間需要の回復が想定を上回れば企業がコスト上昇分を価格転嫁しやすくなる一方、民間需要の回復が持続しない可能性もある」ほか、海外については「現時点では世界経済の不確実性による影響は最小限に留まっているが、貿易政策の影響や地政学リスクが世界経済を減速させる可能性がある」との見方を示している。そして、金融政策について「やや引き締め的」と評価する一方、「金融緩和の効果発現の遅れ、財・サービスの需給バランス、労働市場、生産性の動向にも不確実性があり、物価と労働市場に対して上下双方向のリスクをもたらす」との見方を示した。その上で、政策運営について「物価安定と完全雇用の実現が最優先事項」との従来の考え方を示した上で、「一定のインフレ圧力が残る可能性があり、年明け以降の金融情勢は緩和傾向にあるが、過去の利下げ効果やインフレの持続性に関する動きを踏まえ、データ動向に応じて見通しを更新することが適切」としつつ、「見通しに対する上下双方向の不確実性を警戒する」との考えを示した。そして、「データとリスク評価の変化を注視しつつ判断し、世界経済や金融市場の動向、内需の動向、物価と労働市場の見通しに細心の注意を払う」、「物価安定と完全雇用の実現に向けて必要な措置を講じる」と前回会合と同じ考えを繰り返した。声明文では、来年の追加利下げの可能性が言及されたものの、実現のハードルの高さが示されるなど一段と『タカ派』姿勢を強めている様子がうかがえる。

また、会合後に記者会見に臨んだ同行のブロック総裁は、今回の会合について「利下げは検討しなかった」と述べた上で、「金利の据え置きと慎重な姿勢を維持するとの政策見通しについて議論した」として「足元の緩和局面における利下げ幅は過去に比べて小幅なものとなる可能性がある」との見方を示している。そして、物価動向について「コアインフレ率が3%を上回る状況は理想的ではない」としつつ、先行きの政策運営について「一段の利下げを行う可能性も行わない可能性もある」と述べるなど、先行きの政策に関する明言を避けた。その上で、「最良のシナリオでは、失業率は安定した推移をみせる」としつつ、「利上げは検討しなかった」、「政策委員はインフレ率を2.5%とすることを目標としている」、「今後さらなる利下げを行うか否かは不明」との見方を示している。また、「予想では今後12ヶ月間にわたってインフレの上昇が見込まれるが、不確実性は大きい」とした上で、足元の金利水準について「ほぼ中立水準に近いと見込まれる」としつつ、「会合ごとに判断していく」、「政策委員の間で政策運営に対するバイアスはない」、「政策委員は外部からの見解によって動くことはない」、「その時点で適切な対応を取る」と述べるなど、政策対応の困難さが増している様子がうかがえる。足元の豪ドル相場を巡っては、FRB(米連邦準備制度理事会)による政策運営に対する見通しが立ちにくくなっていることを受けて米ドルに対して上値が抑えられるなか、今後も同様の展開が続く可能性はくすぶる。また、RBAは利下げ余地を残していると見込まれるも、その余地は限定的であることに鑑みれば、豪ドル相場の下値も限られると考えられる。日本円に対しては、日銀の政策運営に対する見方に左右される展開が続くと見込まれる。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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