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2025.10.29
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オーストラリア7-9月インフレ加速でRBAタカ派傾斜か、豪ドルは?
~豪ドルは米ドルには強含みの可能性も、日本円には日銀の動きが影響する可能性に要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- オーストラリア準備銀行(RBA)は、インフレ鈍化と景気減速を受けて、今年2月から8月にかけ計3回の利下げ(累計75bp)を実施するなど金融緩和を進めてきた。しかし、9月の定例会合では政策金利を据え置くとともに、一転してタカ派姿勢を強める判断を下すなど、8月会合でのハト派姿勢から大きく転換させた。
- 背景には、電力補助金政策の効果一巡によるインフレ再加速の兆しと、底堅い雇用によるサービスインフレの粘着度の高さを挙げた。なお、9月の雇用統計は予想外の悪化が確認される一方、RBAが重視する7-9月のインフレ率は+3.2%、コアインフレ率も+3.0%と目標(2~3%)上限に達するなど加速している。生活必需品のみならず、財、サービス双方で物価上昇圧力が強まっている様子も確認されている。
- 金融市場では金融政策に対する見方が分かれていたが、インフレ加速を受けて11月4日の次回会合では政策金利を据え置くとともに、RBAがタカ派姿勢を強める可能性が高いと見込まれる。足元の国際金融市場は「リスクオン」の様相を強めるなか、FRBの利下げ観測も米ドル安が意識される状況にあり、RBAとの金融政策の方向性の違いが豪ドルの対米ドル相場を押し上げると見込まれる。一方、日本円に対しては、日銀による利上げ観測の影響を受ける可能性に留意する必要がある。
オーストラリアでは、準備銀行(RBA)が先月末の定例会合で政策金利(OCR)を2会合ぶりに据え置くことを決定した。RBAは、今年に入って2月、5月、そして8月の計3回、累計75bpの利下げを実施するなど金融緩和を進めてきた。この背景には、一昨年初めにかけて加速したインフレがその後に鈍化に転じるとともに、昨年後半以降はRBAが定める目標(2~3%)域内で推移するなど落ち着きを取り戻したことがある。さらに、インフレとRBAによる引き締め姿勢の長期化に加え、最大の輸出相手である中国経済の不透明感の高まり、トランプ米政権の政策運営を巡る不確実性も重なり、今年初めにかけてのオーストラリア景気は鈍化した。こうした事情も、RBAによる断続的な利下げの実施を後押ししたと捉えられる。

RBAは、8月の定例会合において全会一致で利下げを決定するとともに、会合後にブロック総裁が追加利下げの可能性を認めるなどハト派に傾斜している様子がうかがえた(注1)。しかし、昨年後半以降のインフレ率は目標域で推移するも、足元ではアルバニージー政権が昨年度(2024-25年度)から実施している電力料金に対する補助金政策の効果が一巡して加速に転じる動きが確認されている。よって、RBAは9月の定例会合では一転してタカ派姿勢を強めるなど、先行きの金融政策に対する見方が変化する可能性が高まった(注2)。その後に公表された議事要旨では、雇用の安定を背景とするサービスインフレの粘着度の高さが指摘されており、雇用統計の動向に注目が集まった。こうしたなか、9月の失業率は4.5%と前月(4.3%)から0.2pt悪化して約4年ぶりの水準となるなど、雇用環境が急速に悪化している様子が確認された(注3)。一方で、大都市部を中心に失業者が拡大する動きが確認される一方、労働市場への参入意欲の高さを示唆する動きもみられるなど、評価が難しい状況にある。オーストラリア経済は中国経済との連動性が高く、足元においては米中関係に改善の兆しがみられるなど外需の追い風となることが期待される一方、米中摩擦の完全な解消は見込まれないなど先行きも不透明感がくすぶる。

こうしたことから、金融市場においてはRBAの政策運営に対する見方が割れるなか、RBAが年明け以降3回の利下げ実施において重視してきた四半期物価の動向が注目された。7-9月のインフレ率は前年同期比+3.2%と前期(同2.1%)から加速して5四半期ぶりに目標を上回る伸びとなり、前期比も+1.3%と前期(同+0.7%)から上昇ペースも加速しており、食料品など生活必需品のみならず、財、サービスなど幅広く物価上昇圧力が強まっている。また、オーストラリアではトリム平均値(刈り込み平均値)ベースの物価指標をコアインフレ率としているが、7-9月は前年同期比+3.0%と前期(同+2.7%)から加速して目標の上限に達するとともに、前期比も+1.0%と前期(同+0.7%)から上昇ペースが加速するなど、インフレ圧力が強まっている様子がうかがえる。なお、四半期統計に比べて対象品目を3分の2程度に絞っていることを理由に変動が大きく出やすいことに留意する必要があるものの、9月単月のインフレ率も前年同月比+3.5%、物価変動の大きい財と観光を除いたベースでも同+3.7%とともに加速して目標を上回る伸びとなっており、足元のインフレが高止まりしている様子がうかがえる。

上述したように、このところの金融市場においてはRBAの政策運営に対する見方が分かれる展開が続いてきたものの、来月4日に実施される次回の定例会合ではOCRを2会合連続で3.60%に据え置く公算が高まっている。さらに、決定そのものも全会一致で行われるなど、タカ派姿勢を強める可能性が高まっていると判断できる。なお、足元の国際金融市場においては、米中摩擦の懸念が後退するとの見方を反映して『リスクオン』の様相が強まる一方、トランプ米政権の政策運営の不確実性に加え、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ観測も追い風に米ドル安が意識されやすい状況にある。こうした金融政策の方向性の違いが意識される形で、当面の豪ドルの対米ドル相場は底入れの動きを強める展開が見込まれる。一方、日本円に対しては米ドル/円相場の動向に左右される展開が続いてきたものの、先行きは日本銀行による利上げ観測が強まることも予想されるなど、そうした見方の影響を受ける可能性に留意する必要がある。

注1 8月12日付レポート「RBAが全会一致で利下げ、ブロック総裁は会見で追加緩和に言及」
注2 9月30日付レポート「オーストラリア準備銀は一転して「タカ派」に傾斜、豪ドル相場は?」
注3 10月16日付レポート「オーストラリアの雇用統計悪化を受けて豪ドル相場はどうなる?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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