- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- 米国経済マンスリー:2025年3月
- 要旨
-
- 2月の雇用者数や小売売上は市場予想を下回ったほか、1~3月期の実質GDP成長率は関税前の輸入急増を背景に12四半期振りのマイナス成長が見込まれている。とはいえ、同四半期の個人消費は引き続き増加が見込まれるなど、米国経済は減速しながらも総じて堅調さを保っている。
- 2月の消費者物価指数は家賃を中心に前月から伸び率を縮小するなど、依然高水準ながら、インフレ減速の兆しを示している。一方、今後は関税引き上げの影響が財価格で発現すると見込まれ、こうした財価格の上昇が短期的なインフレ率を押し上げる懸念がある。
- 3月FOMCにおいてFRBは2会合連続で政策金利を据え置いた。4月2日の相互関税発動等の政策見通しとその影響を巡る不透明感が非常に高いなか、景気下振れとインフレ上振れの双方のリスクが強まっており、FRBは当面の政策変更を踏み止まる「様子見姿勢」を示している。

経済指標
- 2月全米供給管理協会(ISM)景況感指数
2月ISM製造業PMIは50.3(1月:50.9)と4か月振りに低下した。好不況の節目となる50を2か月連続で上回ったものの、追加関税による特殊要因が押上げに寄与するなど内容は悪い。内訳をみると、生産が50.7(52.5)、雇用が47.6(50.3)、生産活動に先行する新規受注が48.6(55.1)とそれぞれ前月から低下した。一方、悪天候などを背景に入荷遅延が54.5(50.9)、追加関税を見据えた積み増し需要から在庫が49.9(45.9)と前月から上昇し、指数全体の押し上げに寄与した。他方、2月ISM非製造業PMIは53.5(52.8)と2か月振りに上昇した。好不況の節目となる50を8か月連続で上回るなど、サービス業活動は底堅く推移している。内訳をみると、雇用が53.9(52.3)、新規受注が52.2(51.3)と上昇した一方、事業活動は54.4(54.5)と僅かながら前月水準を下回った(詳細は「米国 トランプ関税が製造業活動に悪影響(2月ISM製造業)」及び「米国 トランプ2.0の不確実性も2月ISM非製造業は上昇」)。
- 2月雇用統計
2月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+15.1万人(1月:+12.5万人)と前月から加速した。一方、同時に公表された12月実績は+1.6万人と上方修正、1月実績は-1.8万人と下方修正された結果、3か月移動平均では+20.0万人(1月:+23.6万人)と20万人台を保つなど、雇用は底堅く推移している。
2月の雇用者数を業種別にみると、医療・社会福祉は+6.31万人(+6.39万人)と人手不足を背景に37か月連続で増加し全体を押し上げたほか、金融サービスが+2.1万人(+1.4万人)、輸送・倉庫が+1.78万人(+1.87万人)と共に前月水準を上回った。一方、小売業は-0.63万人(+2.95万人)と3か月振り、娯楽・飲食・宿泊は-1.6万人(-1.4万人)と2か月連続でそれぞれ減少するなど、消費関連業種は軟調に推移した。また、製造業は+1.0万人(-0.5万人)と3か月振りに増加したものの、均してみれば停滞が持続している。他方、政府部門は+1.1万人(+4.4万人)と地方政府を中心に雇用拡大が続く一方、連邦政府部門(米国郵政公社を除く)に限ってみれば-0.67万人(-0.04万人)と、政府効率化省(DOGE)が主導する職員削減を背景に2か月連続で減少した(産業別の雇用動向に関しては2024/6/19付け「米国の雇用増は持続可能か?(需要編)」を参照)。
この間、2月の労働参加率は62.4%(62.6%)と低下した一方、失業率は4.1%(4.0%)と小幅に上昇した。また、広義失業率を示すU6(過去12か月に求職経験があるものの直近4週間は求職をしなかった者、及び経済的理由によるパートタイム労働者を失業者とカウント)は8.0%(7.5%)と2021年10月以来の水準に達するなど、労働市場に軟化の兆しがみられる。この間、週平均労働時間は前年比-0.6%(-0.3%)と4か月連続で低下した一方、平均時給は+4.0%(+3.9%)と高水準で推移した。この結果、労働所得(=民間雇用者数×平均労働時間×平均時給)は+4.6%(+4.9%)と、賃金上昇を背景に増加基調で推移している。他方、CPI上昇率を控除した実質賃金は時間当たりで+1.2%(+0.9%)と22か月連続、週当たりでは+0.6%(+0.6%)と21か月連続でそれぞれ増加するなど、インフレの鈍化傾向を背景に堅調な雇用所得環境が持続している(詳細は「米国 トランプリストラも雇用はまだ堅調(2月雇用統計)」)。
- 2月消費者物価指数(CPI)
2月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.2%(1月:+0.5%)と減速し、市場予想(+0.3%)を下回った。足下のトレンドを示す3か月前比年率でみると、総合指数が+4.3%(1月:+4.5%)、コア指数は+3.6%(+3.8%)と共に減速したものの、+2%目標を大幅に上回るなどインフレ再燃の懸念は払しょくされるに至っていない。2月の内訳を見ると、食品が前月比+0.2%(+0.4%)と果物・野菜や飲料の価格低下、エネルギーは+0.2%(+1.1%)とガソリン価格の下落を背景にそれぞれ騰勢を鈍化した。この間、食品・エネルギーを除くコアベース指数は+0.2%(+0.4%)と前月から減速した。コアCPIの内訳を見ると、住居費が+0.3%(+0.4%)と新規契約家賃の低下を背景に緩やかに減速した。一方、住居費を除くコアCPIは+0.2%(+0.5%)と前月から減速した。1月に大幅に加速した輸送サービスが低下したほか、コア財は前月から減速するなど2月4日に発動された対中関税10%の影響は限定的に留まった。この間前年比でみると、CPI総合は前年比+2.8%(+3.0%)、食品・エネルギーを除くコアCPIは+3.1%(+3.3%)と共に前月から減速した。先行きのCPIを巡っては、追加関税による輸入物価上昇が一時的に財価格を押し上げるリスクがある一方、サービス価格は労働需給緩和による賃金鈍化や家賃の鈍化を背景に減速が続く可能性が高い(詳細は「米国 トランプ関税の影響はまだ限定的(2月CPI)」)。
- 2月小売売上高
2月小売売上高は前月比+0.2%(1月:-1.2%)と2か月振りに増加したものの、市場予想(+0.6%)を下回った。2月の内訳をみると、無店舗小売が+2.4%(1月:-2.4%)と前月の反動もあり大幅に増加し全体を押し上げたほか、食料品が+0.4%(-0.1%)と前月水準を上回った。一方、自動車・同部品は-0.4%(-3.7%)と年末における販売インセンティブ拡大で販売が好調だった反動を背景に2か月連続で減少した。他方、衣料品は-0.6%(-0.7%)と2か月連続、家電は-0.3%(-1.1%)と3か月連続でそれぞれ減少するなど、停滞が持続している。この結果、GDP算出に用いられるコア小売売上高(自動車・ガソリン・建設材・飲食サービスを除くコントロール・グループ)は+1.0%(-1.0%)と2か月振りに増加した。3月が横ばいの場合、1~3月期のコア小売売上高は前期比+0.3%(+1.2%)の着地となるなど、消費の減速感が強まっている(詳細は「米国2月小売は増加し景気後退懸念を若干弱めた」)。
- 2月鉱工業生産
2月鉱工業生産は前月比+0.7%(1月:+0.3%)と3か月連続で上昇した。鉱工業生産は緩やかな持ち直しの兆しを示しているものの、先行きに関しては追加関税によるサプライチェーンの混乱、及び価格上昇を背景とした需要減少による生産下押しに警戒が必要だろう。2月の内訳を見ると、鉱業が+2.8%(-3.2%)と2か月振りに上昇した一方、公益は-2.5%(+6.1%)と前月に寒波の影響で大幅に上昇した反動減がみられた。一方、製造業は+0.9%(+0.1%)と4か月連続で上昇した。2月の内訳を見ると、自動車・同部品が+8.5%(-5.3%)と追加関税による製造原価の急騰懸念を背景に大幅な増産を示した。また、航空機・その他輸送機器は+2.1%(+5.6%)と4か月連続で上昇するなど、2024年9~11月に実施されたストライキの収束以降は増産が続いている。他方、化学は+1.0%(-0.2%)と3か月振りに前月水準を上回った(詳細は「米国 トランプ関税を前に2月の鉱工業生産が加速」)。
- 2月住宅着工件数
2月住宅着工件数は年率150.1万戸(1月:135.0万戸)と2か月振りに増加した(前月比+11.2%;1月:同-11.5%)。2月の内訳を見ると、戸建住宅が前月比+11.4%(1月:-8.6%)、集合住宅は+10.7%(-18.8%)と共に大幅に増加した。地域別にみると、1月に悪天候を背景に大幅な減少を示した北東部や南部が反動増を示し、全体を押し上げた。先行きに関して、住宅ローン金利の高止まりが需要を下押しするほか、追加関税による資材価格の上昇や移民抑制による労働力不足が供給を抑制する懸念がある。この間、住宅着工に先行する住宅建設許可件数は年率145.6万戸(147.3万戸)と3か月連続で減少するなど、依然停滞の域を脱していない(詳細は「米国 2月の住宅着工件数は前月の反動で大幅増」)。
経済見通し
2025年1~3月期実質GDP成長率(2025年4月30日公表)を巡っては、3月18日時点のアトランタ連銀によるGDPナウキャストが前期比年率-1.8%(2024年10~12月期実績:+2.3%)と12四半期ぶりのマイナス成長を予想している。とはいえ、同四半期のマイナス成長は関税発動前の駆け込み需要を背景とした輸入拡大が主因であり、内需項目では個人消費が+0.4%と実質賃金の上昇を背景にプラス成長を維持するほか、機械設備投資は+9.8%と底堅い推移が見込まれている。
先行きの米国景気を巡る懸念要因としては、トランプ新政権における関税引き上げや移民抑制策によるインフレ再燃、長引くインフレやローン金利高止まりによる家計購買力の侵食、連邦政府職員や政府関連雇用の削減による労働市場の悪化などが挙げられる(詳細は「2025年の米国景気を占う6つの要素」)。3月のミシガン消費者信頼感指数は57.9(2月:64.7)、2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は98.3(1月:105.3)と共に3か月連続で低下した。期待インフレ率が民主党支持者を中心に関税懸念で大きく上昇しており、今後、消費マインドの軟化が持続する可能性がある。また、設備投資を巡っても、利下げ停止による金利高止まりに加えて、企業がトランプ政権の政策不透明感を踏まえて投資判断を一時的に保留するリスクにも警戒が必要だろう。例えば、Caldara et al.(2019)はトランプ一次政権と同様の通商政策の不確実性(実行関税率が3%pt上昇するとの懸念)が生じる場合、米国の実質GDP水準を0.3~0.9%押し下げると指摘している。
金融政策
- 3月FOMC(3月18~19日)
3月FOMC(3月18~19日開催)において、事前予想通り、FRBは2会合連続で政策金利を4.25~4.50%に据え置いた。一方、保有資産の量的引締め(QT)を巡っては、4月より米国債の償還上限を月50億ドル(従来:250億ドル)へと縮小することを決定した(住宅ローン担保証券の償還上限は350億ドルで維持)。同決定に関して、ウォラー理事は現行のペースを維持すべきと反対票を投じた。
声明文における経済・物価認識は「経済活動は堅調な拡大を続けている。失業率はここ数か月低水準で安定しており、労働市場は引き続き底堅い。インフレ率は幾分高止まりしている」と前回から変更がなかった。一方、「経済見通しの不確実性が高まっている」との言及が追加され、1月時点の「雇用とインフレの目標達成に向けたリスクは概ね均衡している」との文言は削除された。実際、後述の四半期経済見通し(SEP)においては、FOMCメンバー19人中18人がGDP成長率の下振れリスク、及びPCEインフレ率の上振れリスクを指摘しており、追加関税への警戒感が示された。
同時に公表されたSEPにおいて、利下げ見通しの中央値は2025年と26年が共に2回、27年が1回と前回12月時点から変更なかった。一方、GDP成長率見通しは2025年が1.7%(12月時点:+2.1%)、26年が+1.8%(+2.0%)、27年が+1.8%(+1.9%)と下方修正された。他方、PCEインフレ率は25年が2.7%(2.5%)、26年が+2.2%(+2.1%)と上方修正されたものの、27年は+2.0%(+2.0%)と予測最終期間にはインフレ目標に達するとの見方が維持された
パウエル議長は記者会見において、関税政策の見通しとその影響に関する「不確実性が非常に高い」と指摘し、堅調な経済情勢を踏まえたうえで当面は政策を維持する姿勢を強調した。関税政策の影響を巡っては、1~2月には「想定外」に財価格が上昇しており、SEPにおけるインフレ率の上方修正が関税引き上げと関連していることを認めた。また、長期のインフレ期待は総じて安定しており、関税によるインフレへの影響は一時的と考えるものの、今後の展開を注視する姿勢を強調した。他方、QTのペース減速を巡っては、債務上限問題を背景とした政府預金口座の動向が同判断に影響したと述べた一方、今回の決定が金融政策や最終的なバランスシートの規模には影響しないことを強調した(詳細は「FRBは2会合連続で政策金利の据え置きを決定」)。
トランプ新政権
- 2025年度予算
3月15日、トランプ大統領は歳出をほぼ現行水準に維持する9月までのつなぎ予算に署名し、同日に懸念されていた予算切れによる政府閉鎖は回避された。同予算を巡っては、下院民主党が政府効率化省による政府職員削減等への制限を求め反対したものの、上院民主党のシューマー院内総務らは「政府閉鎖がトランプ大統領に更なる権限を与える」と述べ、賛成票を投じた(上院はフィリバスターがあるため、超党派の60票の賛成がない限り法案は不成立となった見込)。今後の議会における財政政策の議論は、1月に再開された債務上限問題とこれによるデフォルト懸念の解消、及び2025年末に失効するトランプ減税(TCJA)の延長に移っていく見通しだ。
- 関税政策
1月20日に発足したトランプ政権は関税引き上げを進めている。3月4日には対中関税を追加で10%引き上げ、就任後の合計で20%の対中追加関税を実施した。また、同日には対メキシコ・カナダへ25%(カナダ産エネルギーは10%)の追加関税を実施したものの、6日には米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に適合した全輸入の追加関税を4月2日まで適用除外(2か国からの輸入に占める割合[2024年]:43.6%)とするなど、経済的影響を緩和する措置を導入した。
4月1日には就任日に指示した通商調査の報告期限を迎え、翌2日には相手国と同程度の関税を課す「相互関税」の詳細が発表される見通しだ。また、ラトニック商務長官は14日のTVインタビューにおいて、安全保障面等を踏まえて「鉄鋼・アルミ・銅、自動車、半導体、医薬品、木材」の5分野が重要になると指摘したうえで、25%の自動車関税は日本を含めた全ての国・地域が対象になると述べた(最新の状況に関しては「トランプ関税ウォッチング」を参照)。



前田 和馬
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 前田 和馬
まえだ かずま
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析
執筆者の最近のレポート
関連テーマのレポート
-
米国:イラン・中東情勢の混乱でインフレ加速(3月CPI) ~エネルギー価格高騰で、FF金利先物は据え置き観測を強める~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国:低採用・低解雇の背景 ~米イラン停戦後も、企業が採用に消極的なリスク~
米国経済
前田 和馬
-
米国:イラン・中東情勢の混乱が活動を抑制(3月ISM非製造業) ~サービス業でも供給網の混迷と高まるコスト増圧力~
米国経済
桂畑 誠治
-
米国:労働市場の安定化を示すも微妙なバランス (3月雇用統計) ~政策不確実性が影を落とす中、天候・スト等の反動で雇用が大幅増~
米国経済
桂畑 誠治
-
イラン戦争から約1か月 ~中間選挙での共和党敗北が現実味を帯びる~
米国経済
前田 和馬

