米国 トランプ関税が製造業活動に悪影響(2月ISM製造業)

~コスト上昇や発注の先送りが顕在化~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年2月のISM製造業景気指数(季節調整値)は、50.3(前月50.9)と前月比0.6%ポイント低下し、市場予想中央値の50.8(筆者予想50.2)を下回った。拡大縮小の分岐点である50を小幅上回ったが、米製造業部門の拡大ペース鈍化が示された。
  • 企業の回答では、トランプ関税に対する懸念や影響が多数指摘された。例えば、「メキシコ、カナダからの輸入品への関税賦課の方針は、顧客間で不確実性と不安定性を生み出した」、「関税に関する不確実性により、顧客は新規注文を控えている」、「関税の導入により製品価格が上昇しており、新たな関税が当社の事業にどのような影響を与えるかを見極める」、「現在は売上が好調だが、関税をめぐる不確実性により、支出には慎重な姿勢」、「鉄鋼、アルミニウム輸入への関税賦課の方針による不確実性のため、顧客は長期的な取引量にコミットすることに依然として非常に消極的」など、企業活動にマイナスの影響がでていることが報告された。
  • 2月の構成項目別の前月からの変化では、在庫、入荷遅延が上昇した一方、新規受注、雇用、生産が低下した。
  • 入荷遅延は54.5(同50.9)と上昇したが、暴風雪など悪天候の他、サプライヤーとの関税負担の交渉等によって、一部の材料の納品が遅れた。また、在庫は、49.9(前月45.9)と上昇し、在庫の減少幅の縮小を示した。在庫積み増しの動き以上に、港湾の操業停止の可能性や関税導入による影響を警戒し、材料の早期納入を求めたことで、在庫は50をわずかに下回った。 一方、新規受注は、48.6(同55.1)とトランプ関税への警戒を背景に低下した。拡大した業種数は18業種中9業種(同9業種)と変わらなかった。関税コストの負担に関連する交渉等の影響で発注が鈍化した他、追加利下げや長期金利の低下期待が弱まったことで、新規受注が低下した。また、雇用は、47.6(同50.3)と低下した。ビジネス環境の不透明感の強まりを背景にレイオフ、自然減、採用凍結による人員削減が継続され、50を下回った。増加した業種数は6業種(同4業種)にとどまった。さらに、生産は、50.7(同52.5)と低下し、50をわずかに上回った。拡大した業種数は18業種中7業種(同6業種)にとどまっており、限られた業種による拡大となっている。
  • インフレの動向を示す仕入価格指数は、62.4(前月54.9)と4ヵ月連続で上昇し、コストの増加が示唆された。
  • 2月に拡大した業種は、全18業種のうち石油・石炭製品、その他製造業、一次金属、木材製品、食品・飲料・タバコ、電気設備・部品、化学製品、プラスチック・ゴム製品、加工金属、輸送機器の10業種(前月8業種)に増加した(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す)。
  • 年前半の製造業部門の活動は、トランプ政権が3月4日にメキシコ、カナダからの輸入品に25%の関税を課し、中国からの輸入品には2月(10%賦課)に続き、さらに10%賦課した他、トランプ大統領は、鉄鋼・アルミ、半導体、医薬品、自動車、木材に対する関税や、相互関税を早期に課すことを表明していることから、悪化する可能性が高い。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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