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米国経済マンスリー:2025年2月

~ノイズを見極める~

前田 和馬

要旨
  • 米国経済は総じて堅調さを保っているものの、1月の雇用者数や小売売上が市場予想を下回るなど緩やかな減速の兆しを示している。1月は悪天候等の一時要因が影響した可能性はあるものの、今後も移民流入の減速等を背景に、景気鈍化ペースがより鮮明となるリスクに警戒が必要だろう。
  • 1月の消費者物価指数は市場予想を上回るなど、インフレ再燃の懸念は依然払しょくされるに至っていない。今後は対中関税等の引き上げが財インフレの加速を招くリスクがあり、FRBは当面の間利下げを停止し、こうした不確実性を見極める姿勢を明確にしている。
  • 1月20日のトランプ政権発足後、閣僚承認が比較的スムーズに進行する一方、関税政策を巡る不確実性は高い状況が続いている。3月4日に対メキシコ・カナダへの25%関税、4月2日に自動車関税がそれぞれ発動されるリスクが浮上するなど、引き続き関税政策の動向が注目される。

図表
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経済指標

  • 2024年10~12月期実質GDP

2024年10~12月期における実質GDP成長率は前期比年率+2.3%(7~9月期:+3.1%)と前期から減速したものの、堅調な拡大ペースを維持した。内訳をみると、個人消費は+4.2%(+3.7%)と自動車などの耐久財やサービス消費が全体を押し上げた。一方、設備投資は-2.2%(+4.0%)と13四半期ぶりに減少した。機械設備がこれまでの反動もあり減少したほか、工場などの構造物が軟調に推移した。他方、在庫変動は前期比年率寄与度が-0.9%pt(-0.2%pt)と、旺盛な消費や関税懸念による在庫調整を背景に大幅なマイナス寄与となった。この間、PCEデフレーターは前期比年率+2.3%(+1.5%)と前期から加速したものの、均してみれば緩やかな減速傾向を示している(詳細は「米国経済は24年末にかけて堅調持続 (24年4QGDP:1次推計)」)。

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  • 1月全米供給管理協会(ISM)景況感指数

1月ISM製造業PMIは50.9(2024年12月:49.2)と3か月連続で上昇し、好不況の節目となる50を27か月振りに上回った。内訳をみると、生産が52.5(49.9)と3か月連続、生産活動に先行する新規受注が55.1(52.1)と5か月連続でそれぞれ上昇するなど、底堅い個人消費や政策金利の低下期待を背景に持ち直しの兆しを示している。一方、1月ISM非製造業PMIは52.8(54.0)と2か月振りに低下した。とはいえ、好不況の節目となる50を7か月連続で上回るなど、サービス業活動は底堅く推移している。内訳をみると、事業活動が54.5(58.0)、新規受注が51.3(54.4)と低下した一方、雇用は52.3(51.3)と上昇した(詳細は「25年1月ISM製造業指数は22年10月以来の50台回復」及び「米国 25年初の企業活動は悪天候で鈍化(1月ISM非製造業)」)。

  • 1月雇用統計

1月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+14.3万人(2024年12月:+30.7万人)と、市場予想(+16.9万人)を下回った。一方、同時に公表された11月実績は+4.9万人と上方修正、12月実績は+5.1万人と下方修正された結果、3か月移動平均では+23.7万人(12月:+20.4万人)と3か月連続で増勢を加速するなど、雇用は底堅く推移している。なお、1月雇用統計における全米レベルでの総雇用者数や失業率を巡って、統計公表元の米労働省(BLS)は南カリフォルニアの山火事や広範な寒波による影響は明確に確認されていないと指摘している。

1月の雇用者数を業種別にみると、医療・社会福祉が+6.60万人(+8.07万人)と人手不足を背景に36か月連続で増加し全体を押し上げたほか、小売業も+3.43万人(+3.63万人)と前月水準を上回った。一方、娯楽・飲食・宿泊は-0.3万人(+4.9万人)、専門・ビジネスサービスは-1.1万人(+3.1万人)と悪天候の影響などもあり減少した。また、製造業は+0.3万人(-1.2万人)と小幅な増加に留まるなど、停滞が持続している。他方、政府部門は+3.2万人(+3.4万人)と地方政府の教育部門を中心に雇用拡大が続いている(産業別の雇用動向に関しては2024/6/19付け「米国の雇用増は持続可能か?(需要編)」を参照)。

一方、1月の労働参加率は62.6%(62.5%)と小幅に上昇した一方、失業率は4.0%(4.1%)と2か月連続で低下した。失業率は2024年5~7月にかけて3か月連続で上昇し労働市場の急速な悪化懸念が浮上したものの、その後は再び緩やかな低下基調に転じている。この間、週平均労働時間は前年比-0.3%(-0.6%)と3か月連続で低下した一方、平均時給は+4.1%(+4.1%)と高水準で推移した。この結果、労働所得(=民間雇用者数×平均労働時間×平均時給)は+5.0%(+4.6%)と、賃金上昇を背景に増加基調で推移している。他方、CPI上昇率を控除した実質賃金は時間当たりで+1.0%(+1.2%)と21か月連続、週当たりでは+0.7%(+0.6%)と20か月連続でそれぞれ増加するなど、減速しつつもインフレの鈍化傾向を背景に堅調な雇用所得環境が持続している(詳細は「米国 雇用は悪天候で下振れも堅調さ維持(25年1月雇用統計)」)。

  • 1月消費者物価指数(CPI)

1月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.5%(2024年12月:+0.4%)と3か月連続で騰勢を加速し、市場予想(+0.3%)を上回った。足下のトレンドを示す3か月前比年率でみても、総合指数が+4.5%(12月:+3.5%)、コア指数は+3.8%(+3.1%)と共に加速し+2%目標を大幅に上回るなど、インフレ再燃の懸念は払しょくされるに至っていない。1月の内訳を見ると、食品が前月比+0.4%(+0.3%)と鳥インフルエンザを背景に卵価格が大幅に上昇した一方、エネルギーは+1.1%(+2.4%)と騰勢を鈍化した。この間、食品・エネルギーを除くコアベース指数は+0.4%(+0.2%)と前月から加速した。コアCPIの内訳を見ると、住居費が+0.4%(+0.3%)と新規契約家賃が低下するなかにおいても、その減速ペースは緩やかに留まっている。一方、住居費を除くコアCPIは+0.5%(+0.2%)と前月から大幅に加速し、28か月振りの伸びを示した。処方薬や病院サービスが上昇したほか、中古車や自動車保険などが加速し全体を押し上げた。この間前年比でみると、CPI総合は前年比+3.0%(+2.9%)、食品・エネルギーを除くコアCPIは+3.3%(+3.2%)と共に前月から小幅に加速した。先行きのCPIを巡っては、財価格の下落や労働需給緩和による賃金鈍化を背景にインフレ減速が続く可能性が高いものの、堅調な消費需要を背景にサービス価格や家賃が再加速するリスクに警戒が必要だろう(詳細は「米国25年1月CPIの上振れで利下げがさらに後ずれ」)。

  • 1月小売売上高

1月小売売上高は前月比-0.9%(2024年12月:+0.7%)と5か月振りに減少し、市場予想(-0.2%)を大幅に下回った。同月の小売売上高は悪天候等の一時的要因によって下押しされた可能性があり、消費が軟化の兆しを示しているかは2月の結果と合わせてみる必要がある。1月の内訳をみると、自動車・同部品は-2.8%(+0.9%)と、前月における販売インセンティブの拡大を背景に反動減を示した。また、ネット通販などの無店舗小売は-1.9%(+0.6%)、家電は-0.7%(+0.1%)、衣料品が-1.2%(+1.1%)と、それぞれ前月の好調な年末商戦の反動が示されたものとみられる。この結果、GDP算出に用いられるコア小売売上高(自動車・ガソリン・建設材・飲食サービスを除くコントロール・グループ)は-0.8%(+0.8%)と5か月振りに減少した(詳細は「米国 25年1月小売売上高が下振れ、金利低下」)。

  • 1月鉱工業生産

1月鉱工業生産は前月比+0.5%(2024年12月:+1.0%)と2か月連続で上昇した。航空機大手のストライキやハリケーンの影響が収束しつつあるなか、鉱工業生産は緩やかな持ち直しの兆しを示している。1月の内訳を見ると、鉱業が-1.2%(+2.0%)と2か月振りに低下した一方、公益は+7.2%(+2.9%)と広範な寒波の影響を背景に大幅に上昇した。一方、製造業は-0.1%(+0.5%)と小幅ながら3か月振りに低下した。1月の内訳を見ると、自動車・同部品が-5.2%(-1.6%)と2か月連続で低下し全体を押し下げたほか、一次金属が-1.7%(+3.3%)と前月水準を下回った。一方、航空機・その他輸送機器は+6.0%(+6.8%)と、ストライキ収束を背景に増産基調で推移している(詳細は「米国 寒波が25年1月の鉱工業生産を押し上げ」)。

  • 1月住宅着工件数

1月住宅着工件数は年率136.6万戸(2024年12月:151.5万戸)と2か月振りに減少した(前月比-9.8%;12月:同+16.1%)。悪天候の影響を背景に広範な地域で減少したほか、先行きに関しても住宅ローン金利の高止まりが需要を抑制するとみられる。1月の内訳を見ると、戸建住宅が前月比-8.4%(12月:+6.2%)と南部や中西部を中心に減少した一方、西部は増加するなど同月におけるロサンゼルス近郊の山火事の影響はみられなかった。一方、集合住宅は-13.5%(+51.8%)と前月の反動もあり大幅な減少を示した。この間、住宅着工に先行する住宅建設許可件数は年率148.3万戸(148.2万戸)と僅かな増加に留まるなど、その水準は依然停滞の域を脱していない(詳細は「米国 25年1月の住宅着工件数は暴風雪で下振れ」)。

経済見通し

2025年1~3月期実質GDP成長率(2025年4月30日公表)を巡っては、2月19日時点のアトランタ連銀によるGDPナウキャストが前期比年率+2.3%(2024年10~12月期実績:+2.3%)と減速が続くもののプラス成長を見込んでいる。個人消費は実質賃金の上昇を背景に底堅く推移する一方、住宅投資も緩やかな回復を示す可能性が高い。また、設備投資に関しても、これまでの新設工場における機械設備の導入が全体を押し上げると期待される。

先行きの米国景気を巡る懸念要因としては、長引くインフレやローン金利高止まりによる家計購買力の侵食、トランプ新政権における高関税政策や移民抑制策によるインフレ再燃、これに伴う高金利政策の長期化などが挙げられる(詳細は「2025年の米国景気を占う6つの要素」)。2月のミシガン消費者信頼感指数は67.8(1月:71.1)、1月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は104.1(2024年12月:109.5)と共に2か月連続で低下した。民主党支持者を中心に期待インフレ率が関税懸念を背景に大きく上昇しており、今後、消費マインドの軟化が持続する可能性がある。また、設備投資を巡っても、利下げ停止による金利高止まりに加えて、企業がトランプ政権の政策不透明感を踏まえて投資判断を一時的に保留するリスクにも警戒が必要だろう。

なお、不法移民の流入はバイデン政権による6月の大統領令(一定の不法越境者が確認された場合、亡命申請を受け入れずにメキシコ等へと即時送還)の発令以降は大幅に減少している。不法入国者(亡命申請者)が正式な労働許可を得るまでには半年程度(亡命申請から150日を経ると労働許可の申請、180日を経るとこれの受け取りがそれぞれ可能)を要するため、24年夏以降の不法入国者の減少は2025年初以降の非農業部門雇用者数の増勢を抑制する可能性がある。これが失業率に与える直接的な影響は限定的に留まるものの、景気減速感が強まる場合、求人数の減少などを通じて労働市場の悪化が顕在化する懸念がある。足下の求人倍率(=求人数/失業者数)は1.1倍前後で推移するなど、雇用市場の過熱感は解消しつつあり、失業率が急上昇するリスクに警戒が必要だろう。

図表
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金融政策

  • パウエル議長の半期議会証言(2月11~12日)

パウエル議長は半期議会証言において、堅調な経済と労働市場を理由に利下げを急がない姿勢を改めて強調した。インフレ率は依存としてやや高い水準にあり、「(2%物価目標が)完全に達成されていない」ことを強調した。また、先行きの関税政策、及びその経済・物価への影響を巡る不透明感を指摘したものの、関税政策や財政政策に対する踏み込んだ発言は避けた。一方、労働市場の想定以上の弱まりやインフレの急速な低下に対しては、政策を緩和するなど柔軟に対応する方針を示した。また、今後行われる金融政策の戦略レビューを巡っては、2%インフレ目標の妥当性には焦点をあてず、夏の終わりまでにこれを完了すると述べた。

  • 1月FOMC議事要旨(2月19日公表)

1月FOMC(1月28~29日開催)の議事要旨では、大半の参加者が「現在の高い不確実性」を踏まえて、追加利下げに慎重なスタンスであることが示された。FOMC参加者は労働市場の悪化懸念が後退した一方、インフレ上振れリスクの増大のほか、中立金利や現行の金融引締め度合い、トランプ新政権による政策の不確実性などを指摘した。また、現行のバランスシート縮小策(QT)を巡っては、複数の参加者が今後数か月間に債務上限問題に関連して準備金が大きく変動する可能性があるため、同問題が解決するまでQTの減速や一時停止を検討するべきとの考えを示した。

  • FRB高官発言

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トランプ新政権

1月20日の政権発足以降、閣僚承認は過去2つの政権よりも早いスピードで進行している。経験不足や差別的発言が問題視されたヘグセス国防長官、かつてワクチンに懐疑的な発言を繰り返していたケネディ厚生長官、親ロシアとみられるギャバード国家情報長官など、懸念が多く挙げられた候補も大きな波乱がないままに指名が承認された。

経済政策を巡っては関税政策による不確実性が高い状況にある。就任日の関税発動こそ見送ったものの、2月4日に対中輸入への10%関税を導入した。また、3月4日には対メキシコ・カナダへの25%関税が発動される可能性があるほか、4月1日までに不公正な貿易慣行等に関する調査報告、その後4月2日に自動車関税の公表が計画されるなど、当面は関税政策に注目が集まる展開が続きそうだ。

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以上

前田 和馬


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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