大統領選の焦点は予備選から本選へシフト

~トランプ氏がスーパーチューズデーで圧勝、ヘイリー氏は撤退~

前田 和馬

要旨
  • 共和党指名候補争いを巡る予備選集中日のスーパーチューズデーにおいて、トランプ前大統領が15州のうち14州で勝利した。
  • ヘイリー氏が選挙戦からの撤退を表明した結果、トランプ氏が共和党指名候補争いに勝利することが確定した。11月大統領選の組み合わせはバイデンvs.トランプと2020年の再戦となる見通しだ。
  • ヘイリー氏はトランプ氏を支持することを明言しておらず、不倫口止め料を巡る公判が3月25日に開始されるなか、今後トランプ氏が共和党穏健派の支持を拡大できるかが注目される。

2024年米国大統領選挙に向けた共和党指名候補争いの予備選集中日(3月5日:スーパーチューズデー)において、トランプ前大統領は15州のうち14州で勝利した。ヘイリー元国連大使は穏健派の多いバーモント州で予想外に勝利したものの、これまでの勝利はワシントンを含む2勝のみに留まった。スーパーチューズデー後(7日朝時点)の獲得代議員数はトランプ前大統領が1,059人と、次点であるヘイリー氏の90人に大差をつけた(過半数:1,215人)。この結果、ヘイリー氏は指名候補争いからの撤退を表明し、トランプ氏が共和党の指名候補争いに勝利することが確定した。

11月大統領選の組み合わせはバイデンvs.トランプと2020年の再戦となる見通しだ。トランプ氏は5日夜の勝利演説において、バイデン大統領を「史上最悪」と呼ぶなど本選に向けた対決モードを強めている。具体的には移民政策の不備による治安悪化を指摘したほか、自身が大統領であればロシアのウクライナ侵攻やハマスのイスラエルへの攻撃は生じなかったと主張した。

ヘイリー氏は6日に候補指名争いからの撤退を表明した。撤退表明時にトランプ氏を支持することを明言しなかった一方、「トランプ氏が彼を支持しなかった人々の票を獲得することを望んでいる」と言及した。ヘイリー氏は共和党全国委員会の資金がトランプ氏の裁判費用に充当されていることを批判しており、トランプ氏がこうした批判に対処しながら共和党穏健派の支持を今後拡大できるかが注目される。

なお、トランプ氏の立候補資格を巡っては複数の州で裁判が行われていたものの、3月4日に連邦最高裁は「各州にこれを判断する資格はない」との判断を示したため、トランプ氏の大統領選出馬が法的に阻止される可能性は消失したといえる(注1)。とはいえ、不倫口止め料を巡る公判は3月25日から約6週間にわたってニューヨーク地裁で実施される予定であり、刑事裁判と選挙戦の同時進行が資金的・時間的な制約をトランプ氏に課すことになるだろう。NBC Newsの1月世論調査によると、11月大統領選で有権者の47%がトランプ氏、42%がバイデン大統領に投票すると答えた一方、仮に有罪判決を受けた場合にはトランプ氏が43%と減少し、バイデン大統領の45%に逆転される(注2)。

図表 1:スーパーチューズデーにおける共和党予備選の結果
図表 1:スーパーチューズデーにおける共和党予備選の結果

図表 2:支持率(バイデン vs.トランプ)
図表 2:支持率(バイデン vs.トランプ)

【注釈】

  1. 憲法修正第14条3項では公務員(officer)などが国家に対する反乱に関与した場合、その者が官職に就けないことを定めている(欠格条項)。トランプ氏は2021年1月の議会襲撃事件を扇動した疑惑で起訴されている一方(初公判の日程は未定)、コロラド州やイリノイ州の裁判所は既にトランプ氏の出馬を認めない判断を示していた。3月4日に連邦最高裁は14条3項を各州が施行することはできず、出馬資格をはく奪できる権限は連邦議会のみにあると判断した一方、トランプ氏の同事件への関与に関しては言及を差し控えた。
  2. How a Trump conviction changes the 2024 race in our latest poll (nbcnews.com)
以上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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