ニュージーランド:金融政策(23年10月)

~市場予想通りの据え置き、据え置き継続はより長期化する可能性も~

阿原 健一郎

要旨
  • 10月4日、RBNZは政策金利の据え置き(5.50%)を決定。据え置きは市場予想通り。
    据え置きは3会合連続。
  • 据え置きの背景は、現行の金利水準は想定通り必要とされるだけ支出とインフレ圧力を抑えている、としている。先行きは、インフレ率がRBNZの想定するパスを上回って推移するリスクもあり、政策金利の据え置き期間がより長期化する可能性もある。
  • NZドルは一時下落したものの、据え置き継続を受けて、対米ドル、対円いずれも買い戻されている。

10月4日、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は政策金利(オフィシャルキャッシュレート)の据え置き(5.50%)を決定した。据え置きは市場予想通り(据え置き:27/27人、ロイター調査)。据え置きは3会合連続。前回8月会合で公表した経済見通しでも、引き続き、23年中の政策金利は5.50%でピークとなるとの見通しを維持したことからも、今回も想定通りの据え置きとなった(図表1)。

据え置きの背景について、RBNZは「現行の金利水準は、必要とされるだけ経済活動を抑制し、インフレ圧力を低下させている」とし、インフレ率がインフレターゲットの範囲に戻るには、引き続き金利を抑制的な水準に維持する必要があるとした。ただ、今回据え置きを継続したものの、RBNZは引き続き「短期的には、経済活動とインフレ率が予想よりも鈍化しないリスクがある」と言及しており、インフレ抑制のペースの鈍化を懸念しているようである。特に、足もとの原油価格上昇に言及し、今後数か月にわたり経済活動のコストが増加し、総合CPIが予想より高くなる可能性があるとしている。また、移民の増加により短期的に内需が増加し、インフレ抑制のペースが想定以上に鈍化するリスクも指摘している。

図表1
図表1

先行きについては、「インフレ率を1~3%の目標レンジに戻すことを確実にし、最大限の持続可能な雇用を支えるためには、政策金利をより長期間、抑制的な水準に維持する必要があるかもしれない」とし、据え置きの継続がより長期化する可能性を示唆した。前回会合時の経済見通しで、政策金利の見通しを「少し高く少し長く」修正したことや、前述の、足もとの原油価格上昇や内需の増加がインフレ抑制のペースを鈍化させるリスクを考慮したものと考えられる。また、利上げの可能性は明記しなかったものの、原油価格上昇による経済活動のコスト増加や、内需の想定以上の増加により、インフレ基調がRBNZの想定するパスを上振れて推移し始めるようであれば、再度利上げに踏み切る可能性は十分にあるだろう。

なお、前回会合時の経済見通しが幾分タカ的なものであったにも関わらず、今回の声明文や議事要旨が利上げの可能性に言及していなかったこと等から、一部では、幾分ハト的な内容であったと捉える向きもある。今回の据え置き継続と声明文・議事要旨の内容を受けて、NZドルは一時、米ドルに対し▲0.7%減価し、日本円に対し▲0.6%減価したが、いずれも足もとでは買い戻される形となっている(図表2、3)。

図表2
図表2

図表3
図表3

図表4
図表4

阿原 健一郎


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

阿原 健一郎

あはら けんいちろう

経済調査部 主任エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済

執筆者の最新レポート

関連レポート

関連テーマ