ニュージーランド:金融政策(23年8月)

~市場予想通りの据え置きなるも、中銀見通しは幾分タカ派スタンスに改定へ~

阿原 健一郎

要旨
  • 8月16日、RBNZは政策金利の据え置き(5.50%)を決定。据え置きは市場予想通り。据え置きは2会合連続。
  • 据え置きの背景は、現行の金利水準は想定通り必要とされるだけ支出とインフレ圧力を抑えている、としている。先行きは、フォワードガイダンスこそ大きな変化はなかったものの、今回公表の中銀見通しが政策金利の据え置きをより長期化し、利上げの可能性を示唆する内容であったことから、幾分タカ派姿勢に傾いたと評価できる。
  • 市場予想通りの据え置きなるも、利上げの可能性が意識され、NZドルは対米ドル、対円いずれも一時増価。

8月16日、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は政策金利(オフィシャルキャッシュレート)の据え置き(5.50%)を決定した。据え置きは市場予想通り(据え置き:29/29人、ロイター調査)。据え置きは2会合連続。5月会合までは12会合連続で利上げを実施していたが、インフレ率のピークアウトが明確なものとなり、前回会合から利上げを停止している。中銀が23年の政策金利は5.50%でピークとなるとの見通しを公表していることからも、想定通りの据え置きとなっている(図表1)。

据え置きの背景について、RBNZは引き続き、「現行の金利水準は想定通り必要とされるだけ支出とインフレ圧力を抑えている」とした。7月公表の4~6月期消費者物価指数を確認すると、総合CPIは前年比+6.0%まで低下したものの、市場予想(同+5.9%)ほど鈍化していなかった。内訳をみると、既往の金融引き締めの影響から、インフレ率を押し上げていた新規住宅価格が落ち着きを見せる一方で、食料価格や移民流入の増加に伴う賃料が上昇しており、インフレ率の高止まりが懸念される内容であった1。今回も据え置きを継続したものの、RBNZは声明にて、「短期的には、経済活動とインフレ率が予想よりも鈍化しないリスクがある」と言及しており、インフレ動向を楽観視できる状況ではなさそうである。

先行きについては、今回会合で幾分タカ派姿勢を示したといえる。RBNZは引き続き、「インフレ率を1~3%の目標レンジに戻すことを確実にするため、政策金利は依然として、当面抑制的な水準に維持する必要がある」としたものの、今回公表した中銀見通しでは、前回5月見通しから、インフレ率の鈍化が僅かにペースダウンする内容に改定されたことに加え、政策金利も現行水準をより長期間維持する内容に改定された(図表2)。23年中の政策金利見通しは、引き続き5.50%としているものの、利上げの可能性も示唆されており、前回会合からは幾分タカ派姿勢に傾いたと評価する必要があるだろう。

なお、今回市場予想通りの据え置きであったものの、中銀見通しの改定内容から利上げの可能性が意識され、一時、NZドルは米ドルに対して、約+0.5%増価し(図表3)、日本円に対して約+0.4%増価した(図表4)。

図表
図表

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

図表4
図表4


阿原 健一郎


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阿原 健一郎

あはら けんいちろう

経済調査部 主任エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済

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