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2023.05.25
アジア経済
ニュージーランド経済
ニュージーランド:金融政策(23年5月)
~市場予想通りの利上げも、利上げサイクルの停止を示唆~
阿原 健一郎
- 要旨
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- 5月24日、RBNZは政策金利の引き上げ(+25bps、5.25%→5.50%)を決定。利上げは市場 予想通り。12会合連続の利上げとなったが、前回会合(4月5日)の利上げ(+50bps)からは 利上げ幅が縮小した。
- 利上げの背景は、インフレ率の上昇は鈍化したものの、高水準に留まっており、需要を減速させ るにはまだ高い金利環境が必要である、としている。今回の利上げで政策金利は中銀の見通し 水準まで引きあがり、先行きは、当面は金利を抑制的な水準に維持する必要がある、として利上 げサイクルの停止を示唆した。
- 市場予想通りの利上げなるも、先行き利上げ余地がないことが意識され、NZドルは対米ドル、 対日円いずれも減価。
5月24日、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は政策金利(オフィシャルキャッシュレート)の引き上げ(+25bps、5.25%→5.50%)を決定した。利上げは市場予想通り(+50bps:1/25人、+25bps:20/25人、据え置き:4/25人、ロイター調査)。利上げは21年10月会合以降、12会合連続。前回会合(4月5日)では、利上げペースを鈍化させるという市場予想(+25bps)に反して、+50bpsの利上げペースを維持し、タカ派スタンスを継続する姿勢を示していた。今回会合では、利上げは継続したものの、市場予想通り利上げペースを鈍化させた。中銀が23年の政策金利は5.50%でピークとなると見通していたことや、前回会合間で公表された1~3月のインフレ率にピークアウトの兆しが見られたことから、+25bpsの小幅な利上げとなった(図表1)。なお、議事要旨では、委員会7名のうち、5名が利上げ、2名が据え置きを支持したことが明らかとなっている。
利上げの背景について、RBNZは、「インフレは予想以上に低下したが、依然として高い水準にある。持続的な物価指標、あるいはコアインフレの指標の多くは、直近のピーク付近に留まっている」、「総じて、需要をさらに減速させるためには、依然として高金利が必要である」と、高止まりするインフレ率に対し更なる金融引き締めが必要であるとした。利上げ幅については、「政策金利を5.50%に引き上げることは見通しと一致している。現時点で金融政策が需要を緩和しているものの、政策金利を+25bps引き上げることで、インフレ率がインフレターゲットの中間値まで低下する確度が高まる」と、中銀の政策金利見通し(23年5.50%)に一致する水準まで引き上げたとしている。具体的な既往の利上げの効果については、金利上昇による貯蓄志向の高まり、住宅ローン金利上昇による住宅需要の減少、住宅価格の低下による支出減少(逆資産効果)等がみられるとしており、実際に、金融引き締め以降の消費は減少基調にある(図表2)。
先行きについて、RBNZは、「金利がしばらくの間、景気を抑制する水準で推移することにより、消費者物価の上昇率が年率1%から3%のターゲット内に戻ると同時に、最大限の持続可能な雇用を支えることができると確信している」とした。足もと財政が拡張的になるもとで、市場では中銀の政策金利の見通しが上方修正されるとみる向きもあったが、今回も政策金利の見通しは5.50%で維持されたうえ、今回の利上げにより政策金利が見通しの水準に達したことで、21年10月以降続けてきた利上げサイクルの停止が示唆された。現時点のRBNZの見通しでは、インフレ率は23年に6.7%、24年に4.3%、25年に2.3%と低下していくとみている。今後は、当面の間、現在の政策金利を据え置きながら、実体経済と見通しが乖離しないか注視していくと思われる。なお、5月18日に提出された23年度政府予算案では、従来のインフラ計画に加え、今年1月以降に発生した自然災害への復興支援を中心として、新たに約60億NZドル(22年GDP比約1.6%)がインフラ投資として確保された。この追加的な財政政策について、RBNZは、足もとの建設需要の減少を一部相殺し、幾分インフレ率の上昇に寄与する可能性を認めており、引き続き、住宅価格の推移は注視していく必要がある。
今回の声明文の利上げ停止示唆により、先行き利上げ余地がないことが意識され、NZドルは米ドルに対して約▲1.8%減価し(図表3)、日本円に対して約▲1.7%減価した(図表4)。
阿原 健一郎
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 阿原 健一郎
あはら けんいちろう
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経済調査部 主任エコノミスト
担当: アジアパシフィック経済、世界経済
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阿原 健一郎
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