米国 予想通りFRBは11月からのテーパリング開始を決定(21年11月2、3日FOMC)

~利上げに関してFRB議長は辛抱強くなれると強調~

桂畑 誠治

目次

11月のFOMCでは、FRBの目標に向けて一段の顕著な進展を遂げたことを踏まえ、11月から毎月国債100億ドル、政府支援機関保証付きの不動産担保証券50億ドルずつ減額することが決定された(資産購入は22年6月に終了)。これらの内容は、金融市場の予想コンセンサスと概ね一致した。
 一方、警戒された利上げ前倒しに関して、パウエルFRB議長は「本日のテーパリング開始の決定は政策金利に関して何の直接的な示唆を与えるものではない」とこれまでの見解を変化しなかった。また、議長は利上げには辛抱強くなれると利上げに慎重な姿勢を維持した。インフレがFRBの予想以上に高進しているが、現時点では一時的な要因によってもたらされている可能性が高いと判断しているほか、見解の変化によってグローバルな金融市場の混乱を招けばテーパリングを行い難くなるリスクがあったため、議長は利上げについて慎重な見方を強調したと考えられる。

11月2、3日に開催されたFOMCで、FRBは資産購入を11月から毎月国債100億ドル、政府支援機関保証付きの不動産担保証券50億ドルずつ減額することを全会一致で決定した。現在の月額最低1,200億ドルの資産購入額が11月に1,050億ドル、12月に900億ドルに減額される。一方、政策金利であるFFレート誘導目標レンジは0.00~0.25%に据え置かれたほか、政策金利に関するフォワードガイダンスの維持も全会一致で決定した。

FOMC声明文で景気判断は、前回と同様「ワクチン接種の進展と強力な政策支援を背景に、経済活動と雇用に関する指標は力強さを増し続けている」と感染拡大にもかかわらず米経済が堅調な拡大を続けているとの判断が示された。そのうえで、前回と概ね同様に「パンデミックで最も深刻な打撃を受けた部門はここ数カ月で改善したが、今夏の新型コロナウイルス感染者数の増加で回復ペースは鈍化した」とパンデミックで大打撃を受けた部門の回復ペースが鈍ったことが指摘された。

声明文でのインフレ判断は、インフレ統計の前年比での高止まりが継続していることを受け、今回「インフレ率は主に一時的とみられる要因により高水準にある」と前回の「インフレ率は主に一時的な要因により高水準にある」からインフレ高進の要因が一時的との判断を“断定”から“予想”に変更された。FRBの予想を上回ってインフレ高進が長引いていることが示された。さらに、今回「パンデミックに関連した需給の不均衡や経済活動の再開によって一部セクターでの大幅な物価上昇がもたらされている」とインフレ高進の説明を初めて加えた。

景気の先行きに関して、声明文では前回同様「経済の道筋は引き続きウイルスを巡る状況に左右されるだろう」とワクチン接種、新型コロナウイルスの感染拡大やその対応で見通しが変化することを指摘したうえで、供給制約による経済成長の鈍化を受け「ワクチン接種と供給制約の緩和が進めば、経済活動および雇用の拡大持続とインフレ抑制を支援すると予想される」とこれまでのワクチン接種の進展に加えて、供給制約の緩和が経済や雇用の拡大、インフレの抑制に繋がるとの見方を初めて示した。
 リスクについて、前回と同様「経済見通しに対するリスクは依然として残されている」としており、インフレ高進の継続に対するリスクは依然として声明文で指摘されていない。

政策金利のフォワードガイダンスに関しては、新しい長期目標と金融政策戦略に基づき「労働市場環境が委員会の考える最大雇用に整合する水準に達するとともに、インフレ率が2%に達し、2%をやや上回る水準で当面推移する見通しになるまで、この目標レンジを維持することが適切になると想定している」と2%をやや上回る水準で当面推移する見通しとなるまで事実上のゼロ金利政策を維持する方針が示されている。
 また、FRB議長は記者会見で「我々は政策金利を引き上げる前に満たすべき経済状況について、従来とは異なる厳しい評価を明確にしていく」と過去に利上げを行ったときよりも低い失業率となっても労働参加率が低いことを考慮する等、経済情勢の変化を見極め、慎重に利上げを決定する考えを示した。

資産購入について、「経済が昨年12月以降、委員会の目標に向け一段の顕著な進展を遂げたことを踏まえ、委員会は月間の純資産購入額を米国債100億ドル、政府支援機関保証付きの不動産担保証券50億ドルずつ減額し始めることを決めた」とテーパリングを決定した。「委員会は今月から、国債の保有高を少なくとも月700億ドル、政府支援機関保証付きの不動産担保証券の保有高を少なくとも月350億ドルのペースで増やす」と11月からテーパリングが開始される。また、「12月には、国債の保有高を少なくとも月600億ドル、政府支援機関保証付きの不動産担保証券の保有高を少なくとも月300億ドルずつ増やす」と12月以降も同様のペースで減額されると説明した。
 ただし、「委員会は資産購入額を毎月同様のペースで縮小することが適切である可能性が高いと判断しているが、経済見通しの変化によって正当化される場合は購入ペースを調整する用意がある」と経済見通しが変化するような環境変化が起きれば、それに対応して減額のペースを加速、あるいは減速する柔軟性を示した。

今後の金融政策に関して、FRBは声明文で引き続き「利用可能なあらゆる手段を必要な期間だけ用いることに強くコミットメント」し、今後も「経済見通しに影響を及ぼす情報を注視し、目標の達成を阻害するようなリスクが生じれば、金融政策スタンスを適切に調整していく用意がある」と金融政策を柔軟に運営する方針であることを強調した。

FOMC参加者による経済・金利予測:21年9月

FOMC参加者による経済・金利予測(中央値)では、21年の実質GDP予測(10-12月期の前年同期比)は+5.9%とサプライチェーンの混乱、デルタ変異株による感染拡大を受け、前回6月の+7.0%から大幅に下方修正された。22年は+3.8%(前回+3.3%)、23年は+2.5%(前回+2.4%)と上方修正された。24年は+2.0%と潜在成長率を上回る成長が予想されている。失業率の予測(10-12月期の平均値)は、成長率見通しの下方修正もあり、21年が4.8%(前回4.5%)と上方シフトした一方、22年は3.8%(前回3.8%)、23年は3.5%(前回3.5%)と変更されなかった。24年は3.5%と23年と同様に労働市場の逼迫が続くと予想している。
 インフレ見通し(10-12月期の前年同期比)は、4、5、6月の上振れによって、21年にPCEデフレーターが+4.2%(前回6月+3.4%)、PCEコアデフレーターが+3.7%(前回6月+3.0%)と大幅に上方修正された。一方、22年のPCEデフレーターは+2.2%、PCEコアデフレーターは+2.3%に上方修正され、23年はPCEコアデフレーターが+2.2%と小幅上方修正された。24年は前年比+2.1%に落ち着くと予想された。

ドットチャート(中央値)では、FOMC参加者が21年末までは前回と同様に現在のFFレート誘導目標レンジである0.00-0.25%(ドットチャートでは0.125%)を維持することが適切と予想している。一方、FOMC参加者で22年末までに米国経済が正常化し、雇用と物価の目標を達成できるとの見方が増えたことを背景に、22年末の中央値は今回0.250%と前回0.125%から小幅上方シフトした。23年末の中央値は今回1.000%と前回0.625%から上方シフトした。今回初めて公表された24年末の中央値は1.75%となった。長期は、2.5%と変わらなかった。また、人数別にみると、据え置きを予想する人数は、21年末で18人(前回6月18人)と変わらなかったが、22年末は18人中9人(前回11人)、23年末は18人中1人(前回5人)に減少した。22年に1回以上の利上げを予想している人は、9人に増加した。
 FF金利誘導目標(中央値)が22年末に小幅上方シフト、23年末も上方シフトしており、前回までの23年利上げ開始から22年に前倒しされた。ただし、22年は9人が据え置き、9人が少なくとも25bpの利上げと見方が拮抗している。
 利上げ回数では25bpの利上げが22年に0.5回、23年3回の予想に上方シフトしたが、今回初めて公表された24年末の中央値予想でも年3回の利上げと完全雇用達成後も緩やかな利上げを予想していることが示された。

図表
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桂畑 誠治

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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