ガソリン・灯油・電気・ガス代の上昇が家計に与える影響

~2020年と比較して年間4.6万円の負担増。地域によって大きな差~

新家 義貴

要旨
  • 原油価格が現在の水準で高止まりした場合、一世帯当たりの年間負担額は、ガソリン・灯油で1.8万円、電気・ガス代で2.8万円増加する(2020年比)。合わせれば4.6万円の負担増であり、年間消費額全体の1.4%に相当する。特に北海道や東北など気温が低い地域での負担増加額が大きい。

  • 所得が増えないなかでの生活必需品価格の上昇は、家計の節約行動を通じて個人消費の抑制に繋がる可能性が高い。今後冬場を迎え、灯油需要も増加してくるなか、景気の下振れリスクとして注意が必要。

ガソリン価格が急上昇

ガソリン価格の上昇が止まらない。資源エネルギー庁が本日公表した全国のレギュラーガソリンの平均店頭価格(10月25日現在、1リットル当たり)は167.3円と、前週から2.7円の上昇となった。これで8週連続の上昇となる。21年初と比較すると31.2円もの値上がりであり、上昇幅はかなり大きい。足元でも原油価格の上昇と円安が進行していることから考えて、11月前半での170円台乗せが視野に入る状況だ。仮に全国平均で170円台となれば、2008年以来のこととなる。

灯油価格も同様だ。店頭灯油価格(10月25日現在、18リットル当たり)は1910円と、こちらも8週連続の上昇となり、足元では上昇ペースが加速している。灯油についても当面上昇を続ける可能性が高いだろう。

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ガソリンにしても灯油にしても生活必需品に近い性格を持つため、使用量を大幅に減らすことは困難であり、値上がりが家計負担に直結する。ここで、現在の原油価格(ドバイ84ドル)と為替レート(1ドル114円)が継続した場合、ガソリン・灯油価格の上昇により一世帯あたりの家計負担がどの程度増えるかを試算した。すると、2020年と比較して、全国平均で一世帯あたり年間1万7600円の負担増になることが分かった。

ガソリンや灯油価格は、地域によって消費額が大きく異なるという特徴がある。ガソリン支出が消費に占める割合を各都道府県の県庁所在地別にみると、最も支出割合が小さい東京都区部では0.4%に過ぎないのに対して、長野市や新潟市では2.3%に達するなど、6倍近い差がある。公共交通機関が非常に発達している東京や大阪といった大都市ではガソリン支出は少ないのに対して、自家用車を用いることが多い地方圏では支出が多い傾向がある。

灯油は、地域による差がさらに大きい。灯油支出が消費に占める割合を県庁所在地別にみると、東京都区部や大阪市では0.1%未満である一方、最も大きい青森市では2.6%にも達する。冬場の気温が低く暖房需要が多い地域における支出割合が圧倒的に大きいことが灯油消費の特徴である。

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電気・ガス代の上昇も合わせれば、年間4.6万円の負担増に

値上がりはガソリンと灯油にとどまらない。消費者物価指数を確認すると、21年9月の電気代は21年1月対比で+9.2%、都市ガス代は+9.6%上昇しているが、電気・ガス代の値上げが本格化するのはむしろこれからだ。電気代、ガス代は、過去の燃料価格上昇の影響が遅れて反映される仕組みとなっているため、この先しばらくは非常に高い伸びが続くことになることが確実である。仮に現在の原油価格と為替レートが継続した場合、電気代、ガス代とも、来年夏までに足元の水準から10%以上の値上がりとなるだろう。この水準が続けば、2020年と比較して一世帯あたり年間2万8200円の負担増になる。これに前述のガソリン・灯油価格上昇の影響を合わせれば、年間4万5900円の負担増になると試算される。これは年間消費額全体の1.4%に相当する。賃金が伸び悩む状況下、先行きの個人消費に大きな逆風となることは間違いない。

負担の増加額は地域によって大きく異なることにも注意が必要だ。ガソリン、灯油、電気代、ガス代の上昇に伴う家計負担の増加を地域別に試算したところ、支出増加分が多い順に、北海道(6.9万円)、東北(6.3万円)、北陸(6.1万円)、四国(4.9万円)、中国(4.8万円)、東海(4.8万円)、九州(4.5万円)、沖縄(4.3万円)、関東(4.1万円)、近畿(3.8万円)となる。気温が低く、灯油消費量が多い北海道、東北、北陸の3地域における負担増加額が特に多いことが分かる。

注意したいのは、今がまさに灯油消費量が増加する時期であることだ。灯油への支出は毎年11月頃から急増し、4月頃まで高水準での推移が続く。灯油支出が他地域に比べて極端に多い北海道や東北、北陸地方では、冬場にかけて負担が増加し、他の消費支出を抑制する可能性があるだろう。

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新家 義貴

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部長・主席エコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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