春闘賃上げ率は3年連続の5%台か(連合・春闘要求集計結果)

~昨年対比でやや鈍化も、概ね「前年並み」~

新家 義貴

賃上げ要求は概ね前年並み

3月5日に連合から、2026年春闘における労働組合の賃上げ要求集計結果が発表された。これによると、26年の賃上げ要求は平均で5.94%となった。25年の6.09%には及ばなかったが、24年の5.85%は上回る。昨年からの鈍化は僅かで、概ね前年並みの高い要求といって良いだろう。もちろんこの要求がすべて実現するわけではないが、経団連など企業側も賃上げの「さらなる定着」を強調し、実質賃金改善に向けての意欲を示すなど、賃上げに対する前向きな姿勢を強めていることや、集中回答日を待たずして既に高い賃上げ実施を表明する企業が多くみられていることを踏まえると、過去の例を超えてここから大きく下振れる可能性は低いと思われる。

ちなみに、25年春闘では要求の6.09%に対して最終的な回答は5.25%であり、要求と回答との乖離は0.84%Ptだった。これを単純に当てはめると26年春闘の賃上げ率(連合ベース)は5.10%となる。まだはっきりとしたことは言えないが、最終的な回答結果は3年連続で5%を上回る可能性が高いのではないか。なお、筆者は連合ベースの26年春闘賃上げ率が5.20%(厚生労働省ベースでは5.45%)になると予想していた(2026年・春闘賃上げ率の見通し(改定版) ~5.45%と、ほぼ前年並みの高い賃上げが実現する可能性が高い~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所)。本日の要求集計結果を見る限り、概ね想定通りの流れと言って良いと思われる。日本銀行としても、想定の範囲内との認識だろう。①深刻化する人手不足、②歴史的な物価高の継続と実質賃金減少への対応、③高水準の企業収益、が高い賃上げ要求の背景にあるとみられる。

なお、イラン情勢の緊迫化と原油価格上昇によりスタグフレーション懸念が強まっているが、これによる26年春闘への影響は軽微だろう。26年春闘交渉は既に最終段階を迎えており、後述のとおり3月18日の集中回答日も迫っている。業績への悪影響もまだ出ていない段階で、先行き懸念の強まりのみをもって賃上げを抑制することは難しいだろう。仮に原油価格の高騰が長期化するようであれば、26年冬のボーナス、27年春闘に影響を与える可能性はあるが、目先の名目賃金については大きな影響は生じないと考えている。

中小の要求がやや強め

今回もう一つ注目されるのが中小企業組合における要求だ。26年春闘における組合員300人未満の中小組合における賃上げ要求は平均6.64%となった。6.57%だった昨年を0.07%Pt上回る。300人以上の組合が25年の6.04%から26年に5.88%へと要求がやや鈍化していることと比べ、中小がやや強めの印象だ。これまで中小企業の賃上げが大企業に比べて物足りないとの声が多く、連合も中小の賃上げ目安を大企業対比で高めに設定していた。こうした格差是正に向けての動きが多くの組合で進んだものとみられる。また、26年に1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)が幾分影響を与えた可能性もある。発注側・受注側の対等な関係に基づき、取引適正化と価格転嫁を進めることを目的としたこの法律により、労務費の価格転嫁がこれまでと比べて容易になり、中小企業の賃上げ原資を確保することに繋がった可能性があるだろう。

なお、25年春闘では、中小組合の要求である6.57%に対して回答は4.65%であり、乖離は1.92%Ptだった。これを今回の要求(6.64%)に単純に当てはめると賃上げ率は4.72%となる。大企業との賃上げ格差は依然残るものの、昨年対比でやや改善といった形になるのではないか。中小企業は大企業に比べて収益面での余裕はないが、人手不足感の強さと人材確保の必要性は中小企業の方が大きい。26年春闘では中小企業でも高い賃上げが実現する可能性が高いだろう。

集中回答日、春闘賃上げ率の第1回回答集計(連合)に注目

次の注目は3月18日に設定されている春闘集中回答日だ。ここで多くの企業における労使交渉の回答が行われる。おそらく満額回答が多く出ると思われ、賃上げムードの強さが改めて確認されるだろう。月例給与だけでなく賞与の交渉結果についても注目しておきたい。なお、中小企業の交渉は大企業よりも遅いタイミングで実施されることが多いが、交渉に際してこの集中回答日での賃上げ相場を参照することが多いため、中小企業の賃上げという観点からも重要だ。また、その結果を受けて、3月23日には連合から春闘賃上げ率の第1回回答集計結果が公表される。このように、今後、春闘関連のイベントが続き、26年度の賃金動向についての解像度が上がっていく。26年度の実質賃金はプラスになるのかどうか。物価動向も合わせ、注視していきたい。

図表1
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新家 義貴


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新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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