デジタル国家ウクライナ デジタル国家ウクライナ

AIライターの衝撃

~文章を自動生成してくれる現代の魔法~

柏村 祐

目次

1.AIライターとは

従来は人が行っていた仕事を人工知能(以下「AI」)に代替させる取組みが拡大している。

ビジネスにおいて人が行う基本的な作業の1つとして、「文章を書く」ことが挙げられる。ビジネスで文章を書くケースは、メール、稟議書、報告書、議事録、プレゼン資料など幅広い。これらは、ビジネスの現場で日々行われる会話や、文章を読む行為に較べて、時間と労力がかかると感じている人は多いのではないだろうか。

この文章を書く仕事をAIに代替させる仕組みとして、AIライターというアプリケーションが登場している。これは、思いついたアイデアや文章の標題を入力すれば、その内容に基づいて、AIが自動でアウトラインや詳細内容を生成してくれる仕組みである。筆者は以前、「議事録作成業務」の業務プロセスを代替するテクノロジーとして「自動文字起こしAI」を取り上げたが(注1)、これは、高度に発展したAIが音声を認識し、精度の高い議事録を作成することで、記録の品質を確保するテクノロジーであり、AIライターとは利用用途が異なっている。

AIライターを支える技術には、自然言語AIの技術が使われている。様々な自然言語AIが台頭している中、GPT-3と呼ばれる自然言語AIは、この世界で知名度が高く、利用も進んでいる。GPT-3が提供する自然言語AIのアプリケーションは、「ダ・ヴィンチ」、「キュリー」、「バベッジ」、「エイダ」と呼ばれる4つに分類されており、それぞれが得意分野を持っている(図表1)。

本稿では、これらの自然言語AIを活用するAIライターの実力を概観し、その価値を考察する。

図表 1 GPT-3 の自然言語モデルの種類と得意分野
図表 1 GPT-3 の自然言語モデルの種類と得意分野

2.AIライターの実態

AIライターは、自分のアイデアをどのように表現したらよいか迷っていたり、アイデアがなかなか思いつかない時や、文章を書くことが苦手な人の悩みを解決してくれる機能を有する。例えば、人にアドバイスを求める際に口頭で質問する時と同じように、自分が思いついたことをAIライターの入力フォームに記載すれば、瞬時に人間が書いたような記述をウェブ上に自動生成してくれる。

筆者は、実際に運用されている複数のAIライターについて、その性能がどの程度のものか確認した。まず、最初に試したAIライターでは、記事を生成するための工程が、「アイデアを書く」、「導入部分の生成」、「アウトラインの生成」、「記事の生成」の4工程に分類されている。最初の「アイデアを書く」工程では、自分が書きたいことの概要を入力すれば良い。その後の「導入部分の生成」工程以降は、AIライターが推薦してくれる複数の選択候補文章の中から良いと思う内容をクリックしていけば、文章全体が自動生成される。試しに、最初の「アイデアを書く」工程で、「how to reduce my weight?(体重を減らすには?)」と実際に入力してみた。生成ボタンを押すと、「導入部分の生成」の工程に遷移し、AIライターが推薦する導入部分の記載候補が複数表示された。ここで、導入部分として利用したい内容を選択し生成ボタンを押すと、「アウトラインの生成」の工程に遷移する。ここでも、AIライターが推薦する複数のアウトライン部分が表示されるので、自分が意図していることに近い内容を選択し、生成ボタンを押す。最終工程となる「記事の生成」では選択したアウトラインに基づく内容が数秒で生成される。出来上がった文章全体は、人間のライターが書いたものと遜色ない内容であり、またその分量も数千文字の文章が生成された(図表2)。分量については、必要に応じて数十文字に圧縮したり、逆に数万字に増やすなど、機動的にAIライターに指示を与えられる。仮に記事の内容が気に入らなければ、「導入部分の生成」、「アウトラインの生成」、「記事の生成」は何度でも納得できるまで、再作成することも可能だ。

図表 2 4 つのステップで記事が完成する AI ライターのユーザー画面
図表 2 4 つのステップで記事が完成する AI ライターのユーザー画面

さらに、他のAIライターについても試してみたところ、「書きたいこと」を入力し、AIライターの指示に従って文章作成工程を進めていくことにより、全体文章が自動生成された。AIライターのウェブサイト上の「書きたいこと入力欄」に「how to reduce my weight?(体重を減らすには?)」と入力したところ、AIライターは、おすすめの文章タイトルを複数推薦してくれた(図表3)。

図表 3 AI ライターが推薦する文章タイトル
図表 3 AI ライターが推薦する文章タイトル

推薦された複数のタイトルのうち、図表3赤枠の「You can lose weight without fad diets or extreme exercise(流行りのダイエットや極端な運動をしなくても痩せることができる)」を選択し次の生成工程に進めると、AIライターは文章のアウトラインを複数自動生成し、推薦してくれる。例えば、図表4では、3つのアウトラインが推薦されており、「1.The problem with fad diets and extreme exercise(1.流行のダイエットや過激な運動の問題点)」で始まるアウトライン候補を選択してみたところ(図表4青枠)、その内容に応じた数千文字の文章をAIライターが数秒で生成してくれた。生成された文章内容は、その記載した主体が、人ライターなのか、AIライターなのかの違いが判別できないほど、わかりやすい内容になっている。

図表 4 AI ライターが推薦するアウトライン
図表 4 AI ライターが推薦するアウトライン

3.AIライターの可能性

以上みてきたように、AIライターは、アイデアや文章の標題を記入すれば、導入部分やアウトラインを含めストーリー性を兼ね備えた記事を生成してくれる。以前のAIライターでは、読んでいて不自然な言葉使いがあったり、文章としてつながらず、ストーリー性を失っている生成文章が散見された。しかしながら、自然言語AIの技術進歩により、有史以来人間のみができることとして続いていた「書くこと」は、AIが代替できる部分が急速に拡大している。人それぞれがもつアイデアや文章の標題さえ入力すれば、その言葉に基づくクリエイティブかつ精巧な文章を自動生成してくれるAIライターは、現代の「魔法」といえるのではないだろうか。

ただ、現在のところAIライターは英語を中心にしたサービスであり、日本ではあまり知られていない。AIによる邦訳の技術は進んでいるため、そう遠くない未来、日本でもAIライターのサービスが台頭するものと思われる。

24時間365日稼働できるAIライターをビジネスに活用すれば、生産性の向上にもつながるであろう。ただし、AIライターの活用が過度に進むと、人が思考し、試行錯誤しながら文章を書くという行為が、AIライター任せになってしまう懸念がある。自動生成される文章をビジネスで利用する場合には、記載内容に関する事実確認や、著作権に抵触しないか確認するなどの丁寧な対応も求められる。したがって、ドラフトをAIライターに生成してもらい、人自身が最終的な記載を仕上げるという形が、現実的な活用方法としては適切だ。

ビジネスの現場における意思決定や広く情報を発信するための手段として「文章を書く」仕事は今後も必要だ。文書作成のスピードを速め、生産性を高めるツールとして、AIライターは今後広く社会に浸透していくのではないだろうか。


【注釈】

  1. 「自動文字起こしAI」の衝撃~あなたの「議事録作成業務」が無くなる世界~
    https://www.dlri.co.jp/report/ld/175731.html

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

執筆者の最新レポート

関連レポート

関連テーマ