暗号資産「ミーム仮想通貨」の衝撃

~あなたの知らない「柴犬」と仮想通貨が関係する世界~

柏村 祐

目次

1. 暗号資産には様々な種類がある

2009年1月にビットコインが誕生して以降、ネットの世界には様々な種類の暗号資産が登場している。

筆者はこれまで、用途別の観点から「ステーブルコイン」や「取引所仮想通貨」といった暗号資産を解説している。ステーブルコインは、法定通貨との交換比率を固定したり、供給量を調整することによって、法定通貨と価値が連動するような仕組みをもつ「価値が安定している暗号資産」である(注1)。また、取引所仮想通貨は、ビットコインやイーサリアムとは異なり、特定の暗号資産取引所を利用する顧客に取引所自らが発行した暗号資産であり、取引所内限定で利用できる決済手段である(注2)。様々な用途、種類の暗号資産が誕生する中、今新たな暗号資産「ミーム仮想通貨」が注目されている。本稿では、そのミーム仮想通貨について解説する。

2. なぜ「ミーム仮想通貨」は注目を集めるのか

「ミーム」とは、インターネットの拡大に伴い生まれたスラング(若者言葉や流行語、造語など)であり、日本語では「画像ネタ」と言う言葉が近いと言われている。ミーム仮想通貨には、その暗号資産のシンボル画像として犬や猫といったものが使われ、一度見たら忘れることができない「かわいらしさ」や「愛嬌」を持つ。その機能としては、ビットコインやイーサリアムといった伝統的な暗号通貨の特徴である中央で管理する組織や企業をもたず、暗号資産ウォレット間で価値の移転を可能とする仕組みを模倣したコインとなっている(図表1)。

図表1  機能からみた暗号資産の分類
図表1  機能からみた暗号資産の分類

現在、ミーム仮想通貨は数百種類存在しているが、注目される要因の1つとして価格高騰が挙げられる。2021年12月現在、時価総額ランキング20位以内にあるミーム仮想通貨として、「Dogecoin(以下ドージーコイン)」と「SHIBA INU(以下シバコイン)」を確認できる(図表2)。ドージーコインは、2013年12月に登場した際の価格は1コイン約0.02円だったが、2021年12月時点では1コイン約19円となり、約950倍に高騰している。同様にシバコインは、2020年8月に登場した際の価格は1コイン約0.00000005円であったが、2021年12月時点の価格は1コイン約0.004円となり、約8万倍に高騰している。このように短期間で市場価値が高騰した要因として「アメリカの著名な起業家であるイーロン・マスク氏による度重なるツイート」による拡散、「米掲示板型ウェブサイトreddit(レディット)における話題沸騰」により注目を集めたことが挙げられる。

図表2  時価総額ランキング20位以内に位置する「ミームコイン」
図表2  時価総額ランキング20位以内に位置する「ミームコイン」

また、価格面以外のミーム仮想通貨の特徴は何だろうか。

例えば、ドージーコインは、ビットコインと較べて送金スピードが早い。ビットコインの場合は、実際に送金した取引情報が約10分ごとにまとめられて、送金処理が行われる。一方、ドージーコインでは取引情報が約1分ごとにまとめられて送金処理される。具体的に取引された履歴情報を見てみよう。2021年11月30日9時10分25秒に作成されたブロック「4000880」の取引情報を確認すると、送金された件数は44件、金額17,789,656ドージーコイン(1ドージ―コイン19円換算で約3.38億円)が処理されている(図表3赤枠)。この取引情報では、出金元の暗号資産ウォレットからいくらのドージーコインがどの暗号資産ウォレットに送金されたのかを詳細を見ることができるが、ドージーコインを利用することにより、ビットコインと較べて、送金時間が10分の1に短縮されていることを確認できる。

図表3  公開されているドージーコインの取引履歴
図表3  公開されているドージーコインの取引履歴

次にシバコインの特徴を見てみよう。2020年8月に登場したシバコインの特徴は、活気あるコミュニティが形成されていることにある。そのために、独自の取組みが行われている。

例えば、シバコインの発行事業体は、「SHIBASWAP」と呼ばれる分散型取引所(通称DEX)を提供しており、顧客は「暗号資産を増やす仕組み」や「仮想通貨の交換」や「ユニークなNFTの売買」を利用できる。「暗号資産を増やす仕組み」では、一定期間シバコインを「SHIBASWAP」上に預けることにより、報酬が貰える仕組みが提供される。そのメニューの名称は、柴犬にちなんだ愛嬌のある名前が付けられている。

その愛嬌のある名称とは、「DIG(シバコインを掘ること」、「BURY(シバコインを一定期間埋めるにより報酬を得ること)」であり、顧客はこれらの仕組みを通じてシバコインを得られるのだ。また、得られたシバコインは、「仮想通貨の交換」機能として提供される「SWAP(交換する)」メニューを通じて、一般的に知られている暗号資産であるビットコインやイーサリアムなどと交換できる(図表4)。

更に、「ユニークなNFTの売買」として「SHIBOSHIS」と命名された柴犬のかわいいキャラクター10,000個のNFT売買が可能な市場が展開されており、シバコインのコミュニティの形成に貢献している。なお、NFTとはNon-Fungible Tokenの略であり、日本語で「代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたしるし」を意味する(注3)。

図表4  愛嬌のある名称がつけられたメニュー体系
図表4  愛嬌のある名称がつけられたメニュー体系

以上見てきたように、ステーブルコインや取引所仮想通貨といった様々な暗号資産が創造される中、「画像ネタ」として誕生したミーム仮想通貨は、独自の進化を遂げ価値向上を続けている。ちょっとした「ネタ」を原点として創られたミーム仮想通貨は、黎明期である暗号資産市場において当初想定しなかった市場価値やコミュニティの形成を実現しており、「新しい価値創造」の実例として興味深い取組みと言えるだろう。

また、ドージーコインやシバコインといったミーム仮想通貨は、そのキャラクターの「かわいらしさ」や「愛嬌」を活かした継続的なファンコミュニティを形成したことが、「著名な起業家のツイート」や「インターネット掲示板での話題沸騰」などの現象につながった。そのことが、更に注目を集めるという好循環を形成し、ミーム仮想通貨に興味をもつ人や購入する人の増加に寄与したのではないだろうか。現時点では発行事業体の信用で成り立っているため購入や利用にリスクが伴うが、この好循環を継続することに加えて、商品やサービスの支払に利用できる「場」が拡大すれば、ミーム仮想通貨は今後経済や社会に大きな影響を及ぼす可能性もある。

ミーム仮想通貨は、黎明期である暗号資産市場において自分のペットの犬や猫を連想させる親しみやすいキャラクターを前面に押し出した暗号資産の一形態であり、アイデア次第で市場価値を高められることを証明した「新しい価値創造」の形と言えるのだ。


柏村 祐

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員
専⾨分野: テクノロジー、DX、イノベーション

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