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2021.09.24
ライフデザイン
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暮らしの視点(14):感染拡大によるシニア世代の生活への影響
~リアルな交流・外出機会への影響大~
北村 安樹子
- 目次
1.シニア世代の約9割に、感染拡大による生活への影響あり
60歳以上の男女を対象として今年はじめに内閣府が行った調査によると、新型コロナウイルス感染症の拡大による生活への影響について「特に影響はない(なかった)」とした人は回答者全体の1割弱であった(図表1)。つまり、日常生活に何らかの影響がある(あった)とした人が全体の9割超を占めたということになる。
2.コミュニケーション面で大きかったコロナ禍の影響
どのような影響があったのかを具体的にみると、最も多かったのは「旅行や買い物などで外出することが減った」(68.0%)であり、「友人・知人や近所付き合いが減った」(55.3%)、「別居している家族と会う機会が減った」(47.3%)など、外出や他者との交流に関することをあげた人が半数を超えてこれに続いている。調査時点での感染拡大状況など地域差もあると思われるが、長期化するコロナ禍によって、シニア世代の多くが旅行や買い物などで外出する機会を減らし、近所付き合いや会合等の機会を含めて、家族を含む他者と対面で会う機会の減少を経験したと考えられる。このうち他者との交流に関することをあげた人の割合は、女性が男性をいずれも上回っている。
このような生活の変化を通じて、外出や他者との交流に関しアクティブに活動していたシニア世代が、将来外出や遠出が難しくなった場合の生活や、もともと体が丈夫でないなど様々な理由でそれらのことが以前から難しい状況にある他者のライフスタイルを考えることにつながったケースもあっただろう。また、外出やつきあい・会合等の機会が減り、自宅で過ごす時間が増えた日々がそれほど気にならなかった人もいれば、以前はあまり意識していなかったそれらの機会が、他者から様々な情報を得たり、歩いて体を動かしたり、目的地周辺の様子を知り季節の移り変わりを感じる機会になっていたことに気づいた人もいたのではないだろうか。
3.メール・電話・オンラインでのコミュニケーションが増えた人は?
一方、先の設問には「メール・電話・オンラインでの連絡が増えた」という選択肢もあり、この点をあげた人は回答者の26.0%であった(図表1)。つまり、先に見た外出やつきあいなどが減った人に比べ、このような人の割合は低いということになる。
データに制約はあるが、情報通信機器の利用状況との関連性をみると、このような変化があったと答えた人の割合は「ホームページやブログへの書き込みまたは開設・更新をする」「SNS(Facebook、Twitter、Line、Instagramなど)を利用する」といったように、インターネットやSNS機能を通じて情報発信を行う人において全体に比べ高くなっている(図表2①)。このほか「ファックスで家族や友人などと連絡をとる」など、以前からある手段や、使い慣れた手段で家族や友人とコミュニケーションをとっていたと思われる人においても、全体に比べ高い傾向がみられる。 ただし、情報通信機器をどのように利用しているのかについては個人差等が大きく(図表2②)、その実態をふまえると、この調査が行われた今年はじめの時点で感染拡大の影響によりオンライン(電話を含む、以下同)での連絡が増えた人は、回答者のなかの限定的な範囲だったと考えられる。対面での人付き合いとオンラインによるコミュニケーション機会の関係性という点でみれば、リアルな機会が減ってオンラインが増えた人よりも、リアルが減ったままオンラインには変化がない人の方が圧倒的に多かったと考えられる。
4.食事やテレビ・ラジオは、他者との交流に代わる楽しみになりうるのか?
このような状況をどのように感じるかについては個人差も大きいと思われるが、この調査では回答者がどのようなときに生きがいを感じるのかについても尋ねており、家族や他者との対面での交流の機会やそれらの時間は、いずれも上位にあげられている。図表3のように、最も多くの人があげているのは「子どもや孫など家族との団らんのとき」であり、「おいしいものを食べているとき」や「テレビを見たりラジオを聞いているとき」に続いて、「友人や知人と食事や雑談をしているとき」も、比較的高い割合であげられている。また、これらはいずれも「旅行に行っているとき」をあげた人を上回っている。費用という現実的な問題もあると思われるが、外出や遠出といった物理的な行為以上に、親しい人と過ごす時間に、喜びや楽しみを感じる人が多いのだろう。
ウイズコロナ下の現在、外出や他者との交流に依然制約が続いている地域もあることを考えれば、シニア世代にとってはおいしいものを食べることや、テレビを見たりラジオを聞いたりすることが、現状ではそれらに代わるささやかな喜びや楽しみにならざるを得ない面もある。そのなかには、食事をしたり、テレビを見たりラジオを聞いたりする時間を、以前のように感染を気にすることなく、親しい人とリアルな場で共有できたらという郷愁のような思いを抱いている人もいるかもしれない。政府が導入を検討する「ワクチン・検査パッケージ」等による行動制限の緩和は、これらの人々の思いを満たすことにつながるだろうか。感染拡大終息のゴールが依然みえにくい現状をふまえれば、これらと合わせてシニア世代における多様な通信機器の利用可能性を拡げていくことや、移動・対面時の感染予防対策についても、引き続き検討していく必要があるのではないだろうか。
北村 安樹子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 北村 安樹子
きたむら あきこ
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ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース
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