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2021.08.20
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ユニバーサル社会への扉(8):要介護の家族と一緒に出かけたい
~コロナ禍により外出機会は減ったが…~
水野 映子
1.介護している家族との外出は感染拡大後さらに減少
厚生労働省によると、介護保険法において要介護・要支援と認定される人は年々増えており、2019年3月末現在で658万人となった(注1)。そのうち在宅の人の多くは高齢者であり、7割近くは同居か別居の家族に介護されている(図表1・2)。

高齢者や基礎疾患のある人の重症化リスクが高いといわれる新型コロナウイルス感染症の流行は、介護を必要とする人やその介護者の外出に関する行動や意識にも大きな影響を与えたと考えられる(注2)。そこで、当研究所が2021年初めに実施した調査では、家族を介護している人に対し、その家族との外出の状況を尋ねた。
その結果、介護している家族と一緒に外出することが感染拡大前に比べて減ったと答えた人は、半数近く(45.1%)に及んだ(図表3)。新型コロナウイルスへの感染を恐れて、介護している家族を外に連れて行くことや、その外出に付き添うことを控えた人は少なくないといえる。

また、介護している家族とともに外出することが週1日以上あると答えた人は22.5%のみであり、全く外出しない人も約3割いる(図表4)。介護している家族との外出頻度の変化による違いをみると、感染拡大前に比べて減っていない人でも週1日以上外出している人は3割に満たないが、外出頻度が減った人で週1日以上外出している人は13.8%とさらに少ない。介護している家族と外出することがもともと少なかったために感染拡大後でも外出頻度が減らなかった人もいるが、より減ってしまった人もいると思われる。

2.感染拡大終息後には介護している家族ともっと出かけたい
では、介護している家族ともっと出かけたいと思っている人はどの程度いるのだろうか。
前述の当研究所の調査において、介護している家族と一緒に「外出すること」「一泊以上の旅行をすること」を、新型コロナウイルスの感染拡大が「終息しなくても増やしたい」と答えた人の割合は、それぞれ12.6%・9.4%と1割前後にとどまった(図表5)。一方、「終息したら増やしたい」と答えた人の割合は、それぞれ47.4%・38.0%を占めている。それらの割合は、介護している家族との外出頻度が感染拡大前より減った人で特に高い。
この調査の後、高齢者を皮切りに新型コロナワクチンの接種が進められたものの、感染拡大は収束せず、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が再び出された地域もある。その状況下で、介護している家族とともに積極的に出かけたいと思う人はまだ多くないだろう。だが、その家族が少しでも元気なうちに、一緒に外出や旅行をしたいという切実な思いを抱えている人もいるはずである。感染が終息した折には、感染拡大下において出かけることを控えた人を中心に、外出や旅行のニーズが高まることが予想される。

3.アフターコロナに向けた外出環境づくりを
新型コロナウイルスの感染が拡大する前から、介護を必要とする人や障害のある人などが外に出かける際にはさまざまな障壁があり、それを取り除くための取り組みも長年進められてきた。特に、当初2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けては、ハード・ソフト両面での環境整備が加速していた。
感染拡大に伴って人々が外出しなくなったことにより、その動きが弱まったようにも感じられるが、外出環境を整える必要性が薄れたわけではない。介護を必要とする人が外に出かけることは、身体機能や認知機能の低下を抑えて健康を保つために、本来は重要なことである。また、介護を必要とする人が外に出かけたいという気持ちや、彼らを外に連れて行きたいという家族の気持ちは、コロナ禍で外出がより難しくなったことによって、むしろ高まったとも考えられる。
感染拡大が終息し、再び気兼ねなく外に出られるようになる日を見据えながら、要介護者を含めたすべての人が出かけやすい環境づくりについて、関心を高める必要があるだろう。
【注釈】
1)厚生労働省「平成30年度 介護保険事業状況報告(年報)」
2)新型コロナウイルス感染拡大が一般の人の外出に及ぼした影響に関しては、以下のニュースリリースなどに掲載。
「コロナ禍の中での外出・旅行意識 ~出かけたいがまだ我慢~」2021年4月
水野 映子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。
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