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マイオピニオン~若手研究員の意見~『「介護の悩みが職場に相談されない」を考える』

須藤 智也

目次

減らない介護離職・増えるビジネスケアラー

厚生労働省の調査によると、近年「介護・看護」を理由とする離職者数は7~10万人で推移しています。また、総務省の調査によると、介護をしながら仕事を続ける人(ビジネスケアラー)の数は増加傾向にあり、2022年には364.6万人となりました(資料1)。高齢化が進む中、介護による離職や就労継続の難しさは社会問題化してきています。

図表
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介護の悩みは職場に相談されにくい

企業にとっては、従業員が抱える介護負担は見えにくく、対応が難しいという課題が指摘されています。厚生労働省の調査によると、介護をする人が自身の悩みを相談する相手として最も多かったのは「あてはまるものはない」でした。次いで「家族・親族」が多く、「勤務先」は4.1%です(資料2左図)。従業員の介護の悩みは職場に「相談されにくい」という実態が示唆されます。

従業員が職場に介護の悩みを相談しない理由は必ずしも1つではありませんが、ここでは一因として「職場に相談しても状況は変わらないと従業員が感じている」可能性について考えてみます。厚生労働省の調査によると、介護開始後に職場から受けたサポートとして最も多かったのは「受けていない・助けられたと感じない」で、割合は59.0%でした(資料2右図)。この結果を企業目線から考えると、介護の悩みを抱える従業員の支援制度が職場に「ない」「役立たない」という設計上の問題と、制度はあるが「周知できていない」「利用されにくい」という運用上の課題が浮かんできます。

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「相談する意味ある」制度設計・運用が出発点に

厚生労働省は2025年に企業向けの「介護支援プラン策定マニュアル(改訂版)」を公表しています。ここでは、企業は日ごろから①~⑤に取組む必要があると示されています(資料3)。制度が「ない」「役立たない」状況は、①に基づき②のとおり制度の創設と定期的な見直しを行うことで改善が見込まれます。また、制度を「周知できていない」「利用されにくい」事態は、①③④を通じて制度を普及し、従業員と介護について継続的に対話することで打破が期待できます。⑤働き方改革の中で支援モデルのサイクルを循環させ、従業員が職場に相談する意味を感じる支援制度を設計・運用していくことは、「介護の悩みが職場に相談されない」状況を改善するための第一歩かもしれません。

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須藤 智也


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

須藤 智也

すどう ともや

総合調査部 副主任研究員
専⾨分野: 社会保障(介護・高齢者)、人と組織

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