“イエナカ”で運動したいのは誰か

~コロナ禍がもたらしたニューノーマルの運動習慣のゆくえ~

水野 映子

目次

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、外出の自粛や「3密(密集・密閉・密接)の回避が求められたことにより、生活者のさまざまな活動が家の中でおこなわれるようになり、“イエナカ”“家ごもり”“巣ごもり”消費という言葉も生まれた。運動・スポーツも、そのひとつである。
 当研究所では、新型コロナウイルスの感染拡大が生活に与えた影響を把握するための調査を2020年に3回実施し、運動習慣をはじめとする生活習慣の変化について分析した(注1)。また、2021年に新たに実施した調査においても運動習慣に着目し、コロナ禍が長期化する中での運動不足の問題などを指摘した(注2)。
 本稿では、2021年の調査の結果の中から特に“イエナカ”、すなわち自宅でおこなう運動に焦点をあて、自宅の外での運動と比較しながら、感染拡大後の変化や現状、意向を明らかにする。それにより、自宅での運動が誰にどう広がったのか、そして今後さらに広がるのかを探る。

1.“イエナカ”での運動が増えたのは4人に1人

まず、新型コロナウイルス感染拡大前と比べた運動機会の変化を、運動の場所ごとにたずねた結果を図表1に示す(注3)。
 「自宅での運動(庭を含む)」が減った(「減った」+「やや減った」)人は6.5%、増えた(「増えた」+「やや増えた」)人は25.3%となっている。感染拡大後に自宅で運動する人が増えたといわれるが、実際には4人に1人程度であり、それほど多くはないといえる。
 一方、「屋内(ジム・スポーツクラブ・体育館など)での運動」が減った人は21.2%であり、増えた人は5.2%のみとなっている。また、「屋外での運動(ジョギングやウォーキング、運動場でのスポーツなど)」が減った人は17.8%、増えた人は14.6%であり、減った人のほうがやや多い。屋外での運動もさほど増えていないことがわかる。

図表1
図表1

なお、1回目の緊急事態宣言が出される直前の2020年4月初めに、20~69歳の人を対象に実施した調査でも同様の質問をおこなっている。そこで、2021年の調査の回答者(本稿の他の分析では18~69歳)を20~69歳に限定したうえで2020年4月の調査と比較すると、自宅での運動が増えた人の割合は13.5ポイント上昇している(図表2)。長引くコロナ禍の中、自宅で運動するようになった人は、感染拡大初期よりは増えたと考えられる。

図表2
図表2

2.“イエソト”より“イエナカ”での運動のほうが多い

次に、実際に自宅・屋外・屋内での運動が、どの程度おこなわれているかを図表3に示す。週1日以上(「ほぼ毎日」「週に3~5日程度」「週に1~2日程度」)おこなっている割合は、自宅での運動が最も高く36.2%、次いで屋外での運動が27.1%、屋内での運動が9.2%であった。新型コロナウイルスの感染拡大下においては、自宅での運動が自宅以外の屋内・屋外での運動よりおこなわれていることがわかる。

図表3
図表3

3.ウィズコロナの状況下で“イエナカ”での運動を増やしたい人は約半数

では今後、自宅内外での運動を増やしたいと考えている人は、どの程度いるのだろうか。
 図表4に示すように、自宅での運動については、約半数にあたる48.9%の人が、感染拡大が「終息しなくても増やしたい」と答えた。感染拡大が終息する前、すなわちウィズコロナの状況下における自宅での運動のニーズは高いと考えられる。
 一方、屋外での運動については、「終息しなくても増やしたい」と「終息したら増やしたい」と答えた人がそれぞれ同程度で3割前後であった。また、屋内での運動を「終息しなくても増やしたい」と答えた人は11.8%のみで、28.4%は「終息したら増やしたい」と答えた。自宅以外の場所、特にジムや体育館などの屋内での運動をウィズコロナの状況下で増やしたい人が少ない背景には、いまだ感染への不安があることがうかがえる。

図表4
図表4

4.“イエナカ”での運動を増やしたいのは既に運動している人

続いて、運動習慣の感染拡大後の変化や現在の状況などによって、自宅での運動の今後の意向がどう異なるかを分析する。
 感染拡大後に運動習慣を見直した人、新しく始めた運動・スポーツがある人、自宅での運動が増えた人は、そうでない人より感染拡大が終息しなくても自宅での運動を増やしたいと答えた割合がかなり高い(図表5)。つまり、感染拡大後に運動習慣を何らかの方法で改善した人のほうが、自宅での運動を増やしたいと考えている。
 運動の頻度別にみると、自宅での運動を週1日以上おこなっている人が自宅での運動を増やしたいと答えた割合(67.5%)は約3分の2であり、週1日未満しかおこなっていない人が増やしたいと答えた割合(38.4%)を大きく上回った。同様に、自宅外(屋外・屋内)での運動の頻度が週1日未満の人より週1日以上の人のほうが、自宅での運動を増やしたいと答えた割合は高い。すなわち、既にどこかで運動している人のほうが、自宅での運動を増やしたいとしている。
 また、運動不足だと感じている人が自宅での運動を増やしたいと答えた割合は、半数を超えており、運動不足を感じていない人よりかなり高い。運動不足の問題はコロナ禍の中で深刻化している(注4)ことから、自宅での運動がその解消方法のひとつになることが引き続き期待される。

図表5
図表5

5.運動習慣の格差解消が課題 ~“イエナカ”の運動がニューノーマルとして広がるために~

新型コロナウイルスの感染拡大後、一部の人では“イエナカ”、すなわち自宅での運動機会が増えた。また約半数の人が、感染拡大が終息しなくても自宅での運動を増やしたいと希望している。
 ただし、そう望んでいるのは、既に運動習慣を見直した人や新しい運動を始めたり運動機会を増やしたりした人、運動習慣をおこなっている人で多い。感染拡大が続く中、自宅などでの運動機会を増やして運動習慣をより改善し、“ニューノーマル”の運動習慣を身につけていこうとする層とそうでない層との間で、運動習慣の差がさらに広がることが懸念される。
 前述のように、コロナ禍による運動不足の問題は深刻になっているものの、それをどう解消したらよいかわからないという人は少なくない。“イエナカ”で運動するためのグッズやオンラインのサービスも生まれているが、住宅事情(スペースがない、騒音を出すことが気になるなど)、家族の状況や生活時間、インターネットを使う環境や技術などによっては活用が難しい場合もある(注5)。運動をまだ実施していないが実施したいと思っている層に対する情報提供や、実施しようとしていない層に対する啓発がより必要であろう。

【注釈】
1)2020年4月3日~4日・5月15日~16日に実施した1・2回目の「新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査」(それぞれ20~69歳の男女1,000名が回答)をもとに、運動習慣について分析した結果は、以下のレポートに掲載。
 水野映子「“コロナ禍”としての運動不足」2020年5月
 水野映子「緊急事態宣言下の生活リズム・からだの変化」2020年6月
 水野映子「緊急事態宣言下における運動習慣の変化」2020年6月

2)2021年1月29日~2月3日に実施した「第11回 ライフデザインに関する調査」(全国の18~79歳の男女19,668名が回答。うち本稿では18~69歳17,599名のデータを使用)の方法および結果の概要は、以下のニュースリリースに掲載。
 「コロナ禍の中での運動習慣 ~運動不足は深刻化、解消法も依然わからず~」2021年5月

3)参考までに、新型コロナウイルスの感染拡大前と比べて自宅での運動の機会が増えた(「増えた」+「やや増えた」)、自宅での運動を週1日以上おこなっている、感染が終息しなくても自宅での運動の機会を増やしたいと答えた人の割合を、性別および性・年代別に分析した結果を以下に掲載する。感染拡大前と比べて増えた、感染が終息しなくても増やしたいと答えた人の割合は、女性や若い人で高い傾向がみられる。

注釈3)図表
注釈3)図表

4)「運動不足だと感じている」人の割合は、2020年5月より増えて2021年には79%になった。また、38%の人は「運動不足を解消する方法がわからない」と答えている。これらの結果、および図表5で説明変数として用いた「運動習慣を見直した」「新しく始めた運動・スポーツがある」に関する結果は、注2のニュースリリースに掲載。

5)2020年5月の調査において、運動・スポーツに関する「動画を見て体を動かす」「オンラインレッスンを受ける」ことをおこなったことがあると答えた人の割合は、それぞれ21.6%、7.5%であった。
 「第2回 新型コロナウイルスによる生活と意識の変化に関する調査(健康編)

なお、当研究所のホームページには、新型コロナウイルス感染拡大が生活に及ぼした影響に関するレポート・ニュースリリースの一覧ページ「新型コロナ(生活)」がある。

水野 映子

水野 映子

みずの えいこ

ライフデザイン研究部 上席主任研究員
専⾨分野: ユニバーサルデザイン

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