情報通信・テクノロジー技術への適応意識

~シニア世代の方が「自分ごと」~

北村 安樹子

目次

1.新たな技術への期待と不安

当研究所が2019年1月に行ったアンケート調査では、情報通信のあり方や人工知能(AI)などのテクノロジー(技術)について、さまざまな角度から異なる2つの考え方を示し、自分の考えやイメージにより近いのはどちらかをたずねている。この調査結果によると、「便利になる」「不便になる」という2つの考え方のうち、前者の考え方に近いとした人(「Aに近い」「どちらかといえばAに近い」の合計)は全体の9割を超えた(図表1)。

一方で、これらの変化に対する不安に関しては、「不安がある」という考え方に近いとした人の割合が「不安はない」という考え方に近いとした人の割合を上回っている。この傾向は特に世代が若い人にみられ、若い女性でより明確に「不安がある」という考えに「近い」とした人の割合が高い。また、「社会が良くなる」「社会が悪くなる」に関しては、どの世代でも前者に近いとした人の割合が後者を上回っている。つまり、「便利になる」「社会が良くなる」といった楽観的な考え方に近いとした人はどの世代でも多数派であるが、これらの変化に子どものころから触れてきた若い世代の方が、期待と不安を併せ持っていると考えられる。

2.シニア世代の方が「自分ごと」

では、これらの社会変化に対する自身の対応力については、世代によってどのような意識の違いがみられるのか。

この点についてもっとも多くの人があげたのは「ある程度努力することで対応できると思う」(37.8%)であり、「問題なく対応できると思う」(9.5%)、「かなり努力が必要だが対応できると思う」(27.2%)という人も含めれば、7割超が対応できると答えている(図表2)。多くの人が想像するように、29歳以下の若い世代では「問題なく対応できると思う」とする人の割合も最も高く、自分の対応力に自信をもつ人が多い。

注目されるのは、「自分には関係ない話だと思う」とした人の割合が、年齢の高い人ほど低いことである。特にITなどのテクノロジーによる社会変化を中高年期以降に経験してきた60代の場合、変化への対応に迫られた経験が多かったためか、「自分には関係ない話だと思う」とした人は1割に満たない。「ある程度努力することで対応できる」「かなり努力が必要だが、対応できる」とした人も6割以上おり、シニア世代の方が、新たな社会変化への対応を自分ごととしてとらえている人が多いといえる。

3.新しい技術への対応の世代間ギャップを埋めるには

これに対して、29歳以下の若い世代は、子どものころから情報通信技術が当たり前のように生活の中にあったためか、新しい技術への抵抗感は比較的低いようにみえる。ただ、若い世代のなかにも自分の対応力に自信がない人もいて、それが図表1でみた若い女性の不安につながっているとみられる。

前述したように、年をとるほど、年下の世代より技術によって変化する前の社会を知っている期間が長いため、その変化を感じやすい。対応力には個人差もあるが、自分より年長の世代の方が新しい技術に抵抗を感じやすいことについて、中高年以上の人は若い世代よりもイメージしやすいだろう。

今回紹介した調査は60代以下が対象だが、新しい技術に馴染みのない70代以上の高齢者が感じがちな抵抗感を、若い世代はあまりイメージできないかもしれない。若い孫世代にとっては日常的で、何でもないことのように感じられる機器の操作でも、高齢の祖父母世代にとっては、煩わしさや冷たさを感じる場合や、別の手段や方法に安心感を得やすい場合がある。その点、技術による社会変化への対応に迫られてきた親世代であれば、祖父母世代の心情も理解しやすいであろう。親世代の方は、変化の背景や抵抗感に対する感覚の違いを、祖父母と孫の双方の世代にわかりやすく伝える橋渡し役となってみてはいかがだろうか。

北村 安樹子


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北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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