Global Trends Global Trends

時事雑感(2025年7月号)

嶌峰 義清

令和の米騒動と騒がれた米不足は価格の高騰を招き、スーパーでの販売価格は一年で2倍以上の急騰となった。これに対し、政府は備蓄米を随意契約によって放出することで、ようやくこれまでより安い価格で店頭などに並ぶこととなった。もっとも、その効果は一時的且つ限定的なものにとどまるだろう。

原理的には、価格は需要と供給のバランスで決まる。令和の米騒動も、基本的には米の需給が逼迫していることが原因だ。すなわち、価格の高騰は米の供給が足りていないということだ。近年では、海外への日本米の輸出が拡大している。農水省は米の作況、国内の趨勢的な米消費の減少傾向などを勘案して、米の価格を維持するために供給量をコントロールする政策を続けてきたが(かつての減反政策もその一環)、需要を見誤ったことで供給不足に陥り、米の価格が高騰したというのが実際のところだろう。

もっとも、近年の輸入物価の高騰により、米の生産コストが大幅に上昇しているという事実もある。関係者によれば、1年前の5キロ=2000円台では相当な赤字になる状態であったようだ。米農家が安定した収益を得るには、今の生産コストであれば現状の価格が妥当、というのもその通りかもしれない。米農家の収益が維持できなければ、生産は減少し、米不足の状態から抜け出せなくなる恐れがある。これにより、米価格は高止まりし、食料自給率は主食においても低下する。

食料自給率の低下の何がいけないのか、という議論もある。確かに平時であれば海外に依存することも可能だが、地球規模の災害によって世界的な不作となれば、日本に食料が回らなくなる恐れがある。また、日本が海外から食料を購入するための資金(外貨)が不足すれば、輸入は覚束なくなる。

主食の国内自給を維持するためには、米農家が安定した収入を得ることと同時に、消費者の主食への過度な支出負担を減らすことも必要だ。そのためには、農業の生産性の更なる向上や、流通網の多様化、米の価格帯の拡大による多様な選択肢を持たせるなど、農業政策の抜本的な改革も待ったなしだろう。

嶌峰 義清


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

嶌峰 義清

しまみね よしきよ

経済調査部 シニア・フェロー
担当: 経済・金融市場全般、地政学

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ