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時事雑感(2026年3月号)

嶌峰 義清

トランプ米大統領は、FRBの次期総裁としてケビン・ウォーシュ氏を指名した。ウォーシュ氏は1970年生まれの55歳で、2002年から5年間、ブッシュ政権下で大統領補佐官を務めた後、2006年には35歳の史上最年少でFRB理事に就任している。2011年には理事を辞任しているが、きっかけは当時のバーナンキ議長が行った量的緩和政策(QE)の拡大延長に反対だったこととされている。

トランプ大統領は、利下げに慎重な姿勢をみせていたパウエル議長の金融政策方針に強く反発しており、金融市場では次期議長には金融緩和に積極的な“ハト派”の考えを持つ人物や、自身の要求を受け入れる人物を指名するのではないかと懸念されていた。FRBが政府にとって都合の良い中央銀行となれば、ドルに対する信認は低下しかねない。しかし、FRB理事時代のウォーシュ氏の言動からは、物価安定を重視する“タカ派”の顔がのぞいている。市場では、ウォーシュFRB議長であればトランプ大統領の言いなりにはならない、との安心感が広がっている。

実際、ウォーシュ氏の指名を受けて、為替市場においてはドルが買い戻される動きが見られている。それ以上に大きな反応を見せたのが金価格だ。今年に入ってからさらに上昇ペースを加速させていた金は、ウォーシュ氏指名の報を受けると急落した。ここ数年の金価格高騰の背景には、インフレ懸念の他にドルに対する不信感が挙げられ、新興国を中心とした中央銀行や、個人投資家の購入拡大が価格を押し上げてきた。すなわち、信用できないドルの代わりに金を買うという構図だ。ウォーシュ氏の指名を受けた金価格の下落は、FRBの金融政策が“信用に足る”ものになるとの期待を示しているとも言える。

議長の就任には議会上院の承認が必要だ。承認されれば、5月に任期満了を迎えるパウエル議長の後任として正式にその座に着く。世界を困惑させる米政府の下でドルの信認を保てるか、通貨の番人の議長としての手腕が注目される。

(嶌峰 義清)

嶌峰 義清


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嶌峰 義清

しまみね よしきよ

経済調査部 シニア・フェロー
担当: 経済・金融市場全般、地政学

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