インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

四半期見通し『アジア・新興国~米中合意で最悪の事態は回避も、米国に振り回される展開は続く~』(2025年7月号)

西濵 徹

目次

中国は成長率目標実現へ取り組み強化の方向へ

年明け直後の中国景気を巡っては、トランプ関税の発動を前にした対米輸出の駆け込みが外需を押し上げたため、先行きについてはその反動が外需の足かせとなることが懸念された。しかし、足元の輸出については、対米輸出が大きく下振れする一方、米国「以外」の国・地域向けの輸出拡大がその影響を相殺している。3月の全人代では、米中摩擦のさらなる激化を見据えて、輸出先の多様化を図る方針が示されている。中国国内の過剰生産能力を鑑みれば、今後も輸出先を多様化させる動きを積極化させる展開が続くと見込まれる。

他方、米中両国は報復合戦を演じた結果、互いに高関税を課す貿易戦争に突入するも、5月の直接協議後に報復分の撤廃で合意した。米国は相互関税(34%)のうち上乗せ分(24%)を90日間停止し、その間に米中は貿易協議を進めるとしている。これにより、当面は米国の関税が30%(フェンタニル対策20%+相互関税の基本税率10%)、中国も10%となり、関税による直接的な影響は限定的なものに留まる見通しである。先行きの外需は、下振れした対米輸出の底打ちが期待されるほか、米国以外向けの輸出も引き続き拡大を目指すと見込まれる。さらに、当面は個人消費や設備投資といった内需喚起も継続する方針を示しており、2025年については政府目標(5%前後)の実現に向けた対応が一段と強化される展開が予想される。

図表1
図表1

景気も政策運営も米国の動向に左右される展開

他のアジア新興国については、米トランプ政権が中国による迂回輸出を阻止すべく、多くの国に比較的高水準の相互関税を課す方針を示している。米国は上乗せ分を90日間停止するとともに、各国と個別に貿易協議を実施しており、一部の国との間では協議が進展しているとの見方もある。しかし、米国は英国と基本合意に至るとともに、上述のように中国とも電撃合意を経て協議を行っており、各国との交渉を早期にまとめる必要性は後退している可能性がある。

対米輸出への依存度が高い一部の国では、上乗せ分を含めた相互関税が課された場合のマクロ的な影響が大きく、景気に深刻な悪影響が出ると懸念される。他方、対米輸出への依存度が相対的に低い国でも、今後は中国からの輸入拡大に伴う『デフレの輸出』の脅威に晒される可能性が高まり、競争環境が激化すると見込まれる。内需依存度が高い国々では、インフレ鈍化や米ドル高一服の動きが利下げ余地を広げるなど、景気下支えに向けた動きを強めると予想される。一方、コロナ禍を経て各国の財政状況は悪化しており、歳出余地が限られることが景気の足かせになることにも留意する必要がある。

金融市場における米ドル安は、各国中銀の利下げを促している。しかし、関税政策の行方や米国の物価動向などを理由に米ドル高が再燃すれば、金融政策の手足を縛られることも予想される。よって、米トランプ政権の一挙一動、金融市場を巡る環境に左右されることになろう。

図表2
図表2

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ