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2026.01.19
アジア経済
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中国、25年成長率は+5.0%と目標達成も、26年のハードルは高い
~構造問題は一段と深刻に、景気も「K字型」の様相を強めるなか、成長率目標はどうなる~
西濵 徹
- 要旨
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- 中国経済は供給サイド主導で拡大が続く一方、内需を中心とする需要サイドは低迷している。政府は内需拡大を最重要課題に掲げ、積極的な財政・金融政策や「反内巻」の取り組みを進めているが、過当競争の激化や雇用の伸び悩みが家計環境を悪化させている。よって、当面も供給優位の構造が続く見通しである。
- 2025年の全人代で掲げた成長率目標「5%前後」は、通年で+5.0%となり達成された。米中摩擦の影響で対米輸出は大幅に減少したが、それ以外の地域への輸出拡大が下支えした。GDP統計が供給統計であることもあり、内需が力強さを欠くなかでも表面上の成長率は堅調を維持した形となっている。
- 個別統計では、12月の鉱工業生産は前年比+5.2%と加速するなど供給側の強さが確認されている。分野別では、鉱業やハイテク製造が堅調な一方、電力・ガス関連の伸びが鈍化したほか、鉄鋼・セメントなど不動産関連財の低迷が目立つ。その意味では、生産活動の分野間のばらつきが拡大している。
- 不動産不況や雇用回復の遅れで家計環境は厳しいことに加え、足元の物価は生活必需品を中心に上昇するなど一部で上昇圧力がみられる。こうしたなか、12月の小売売上高は前年比+0.9%に鈍化しており、消費は弱い。日用品やEC関連は堅調だが、高額消費や耐久財が不振で、消費のK字型が強まっている。
- 12月の固定資産投資は年初来前年比▲3.8%と通年でマイナスとなるなど、投資活動が急減速している。新質生産力も追い風に設備投資は強いものの、建設関連や不動産投資が大幅減となっている。不動産需要の弱さを受けて、不動産景況感や住宅価格も低下が続くなど、不動産不況の深刻化が示される。
- 総人口は4年連続で減少しており、出生数減が続くなかで労働力人口も減少して労働力不足懸念が強まる。新質生産力推進は一方で雇用ミスマッチを拡大させ得る。内需の弱さから外需依存が強まりやすいが、世界的な保護主義の広がりで外需環境も厳しくなり、2026年の高成長目標達成の難易度は上昇しよう。
中国経済を巡っては、供給サイドがけん引役となる形で拡大が続いている。その一方、需要サイドは勢いを欠く対照的な動きをみせている。2025年末にかけて開催された重要会議では、共産党や政府が内需喚起の重要性を強調した。なかでも今年のマクロ経済政策の運営方針を討議する中央経済工作会議では、最重要課題に「内需拡大を重視し、強大な国内市場を構築する」方針が示された。そして、その実現に向けて、より積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策を維持する方針を決定した。その後に開催された中央財政工作会議でも、7つの重点項目の最上位に「より積極的な財政政策による『金融・財政を組み合わせた総合的な政策パッケージ(組合拳)』の実施」を掲げるなど、積極的な財政政策を進める方針を示した。なお、中国国内では、過剰生産能力を背景とする過当競争(内巻(ネイジュアン))が社会問題化しており、デフレ圧力を招く一因となっている。こうしたなか、中国当局は『反内巻』の取り組みを強化してデフレ圧力の解消を目指している。過当競争の解消が進むこと自体は望ましい。しかし、過剰生産能力がその元凶となるなか、その解消の道筋は不透明である。過当競争の激化は幅広い分野で雇用が増えにくい一因となり、個人消費など内需の足かせとなっている。一方、習近平指導部が主導する「新質生産力」を追い風とする省力化投資の活発化を受けて、雇用を伴わない形での生産拡大が続いているうえ、過剰生産能力の解消も進んでいない。結果、家計部門を取り巻く環境は一段と厳しさを増しており、当面の中国経済は供給サイドが優位となりやすい展開が続くと見込まれる。

こうしたなか、中国当局は2025年の全人代(第14期全国人民代表大会第3回全体会議)において、経済成長率目標を「5%前後」と前年から据え置いた。米中摩擦の激化に伴い対米輸出のハードルが高まるなか、中国当局は米国以外の国や地域向け輸出拡大によりその影響をカバーする方針を示した。その結果、2025年の対米輸出は前年比▲23.0%と大幅に減少したものの、輸出全体では同+5.5%とプラスを維持するなど、米国以外の輸出拡大が下支えしている(注1)。前述したように、足元の景気は供給サイドがけん引役となる一方、需要サイドは内需を中心に力強さを欠くなか、外需が需要サイドを下支えしている様子が鮮明になっている。一方、中国当局は内巻の解消に向けた取り組みを強化しているものの、新質生産力に向けた投資拡充の動きも追い風に全体としての生産能力は高止まりしている。さらに、中国のGDP統計は供給サイドの統計であり、生産拡大の動きはそのままGDPの押し上げに資する構造となっている。結果、2025年10-12月の実質GDP成長率は前年同期比+4.5%と前期(同+4.8%)から鈍化して3年ぶりの低い伸びに留まった。しかし、季節調整値に基づく前期比では+1.2%と前期(同+1.1%)からわずかに加速しており、年率ベースでは+4.9%と試算されるなど堅調を維持している。分野別の生産動向では、製造業など第2次産業は鈍化するなど力強さを欠く一方、農林漁業など第1次産業で堅調な動きが確認されるとともに、サービス業など第3次産業の底堅さも足元の景気を下支えしている。2025年通年の経済成長率は+5.0%と政府目標(5%前後)を達成しており、習近平指導部としては高いハードルをクリアしたと捉えることができる。

ただし、足元の景気が供給サイドと需要サイドで対照的な動きをみせるなか、個別の経済統計はそうした状況を一段と鮮明にしている。供給統計である2025年12月の鉱工業生産は前年同月比+5.2%と前月(同+4.8%)から加速しており、年初来前年比も+5.9%と前年(+5.8%)から加速するなど、供給サイドの堅調さが確認されている。前月比も+0.49%と前月(同+0.44%)からわずかに拡大ペースが加速しており、供給サイドをけん引役にした拡大が続いている。分野ごとの生産動向についても、冬場のエネルギー需要の高まりを反映して鉱業(前年比+5.4%)で底堅い動きが続いている。なお、製造業(前年比+5.7%)の伸びは鈍化するなど勢いに陰りが出る動きがみられるものの、ハイテク製造業(同+11.0%)は高い伸びが続いており、中国当局による政策支援に加え、外需の堅調さが生産を押し上げている。一方、経済活動の動向に連動する傾向がみられる電力・熱・ガス関連(前年比+0.8%)の伸びは大きく鈍化しており、生産活動の堅調さにもかかわらず、経済活動の勢いの乏しさを示唆する動きがみられる。財別では、不動産需要の弱さを反映して粗鋼(前年比▲10.3%)や銑鉄(同▲9.9%)、鋼材(同▲3.8%)の伸びは軒並み下振れするとともに、セメント(同▲6.6%)も低迷している。ただし、新質生産力への取り組みを反映して産業用ロボット(前年比+14.7%)のほか、集積回路(同+12.9%)、新エネルギー車(同+8.7%)、発電機(同+8.7%)などの生産は堅調さを維持している。その意味では、分野ごとのバラつきがこれまで以上に鮮明になっていると捉えられる。

その一方、長期化する不動産不況の底がみえず、家計部門は逆資産効果に直面しているうえ、内巻の影響で若年層を中心とする雇用回復が遅れるなか、家計部門を取り巻く環境は厳しさを増している。さらに、中国経済はデフレ圧力に直面しているものの、当局による反内巻の取り組みを受けて日用品を中心に価格転嫁の動きが広がるとともに、食料品など生活必需品で物価上昇圧力が強まる動きもみられる(注2)。こうした状況を受けて、個人消費の動向を反映する2025年12月の小売売上高は前年同月比+0.9%と前月(同+1.3%)から鈍化しており、3年ぶりの低い伸びとなるとともに、年初来前年比は+3.7%と前年(同+3.5%)からわずかに加速するも、生産を下回る伸びに留まる。前月比も▲0.12%と前月(同▲0.41%)から2ヶ月連続で減少しており、個人消費が下振れする動きが確認されている。分類別では、EC(電子商取引)を通じた売上高(前年比+8.6%)は堅調な推移をみせるとともに、コンビニ(同+5.5%)やスーパー(同+4.3%)など日用品に関連する需要は底堅い一方、百貨店(同+0.1%)やブランド店(同▲0.6%)は弱含みするなど高額消費が低迷している。財別では、新型スマホの発売を受けて通信機器(前年比+20.9%)は旺盛な動きをみせる一方、2024年後半から実施された耐久消費財の買い替え促進策の一巡を受け、自動車(同▲5.0%)や家電製品(同▲18.7%)は下振れしている。さらに、不動産需要の弱さを反映して建材(前年比▲11.8%)や家具(同▲2.2%)の需要も低迷しており、家計部門が財布の紐を固くするなかで幅広く耐久消費財に対する需要が伸び悩んでいる。こうしたことから、足元の個人消費はメリハリが一段と強まるとともに、いわゆる「K字型」の様相を強めていると捉えられる。

近年の中国経済の成長をけん引してきた企業の設備投資、不動産投資、そして、公共投資などの動きを反映した昨年12月の固定資産投資は年初来前年比▲3.8%と前月(同▲2.6%)からマイナス幅が拡大しており、2024年(同+3.2%)から通年では初めてマイナスとなるなど、投資活動に急ブレーキが掛かっている。当研究所が試算した単月ベースの前年同月比の伸びは▲6.7%と6ヶ月連続のマイナスとなるとともに、前月(同▲4.6%)からマイナス幅が拡大、前月比も▲1.13%と12ヶ月連続で減少するとともに、2025年で3番目に大きいマイナス幅となるなど減少傾向を強めている。実施主体別では、民間投資(年初来前年比▲6.4%)のみならず、国有企業(同▲2.5%)もともにマイナスとなるなど、全体的に投資活動が低迷している。ただし、対象別では、新質生産力の推進も後押しする形で設備投資関連(年初来前年比+11.8%)は旺盛な動きをみせる一方、建設関連(同▲8.4%)は大きく下振れするなど対照的な動きをみせる。建設需要の弱さは不動産投資が年初来前年比▲17.2%と大幅マイナスとなったことにも現れており、2023年(同▲10.6%)からマイナス幅も拡大するなど、不動産不況が一段と深刻化している。対象別でも、オフィス(年初来前年比▲22.8%)、商業用不動産(同▲14.0%)、そして住宅(同▲16.3%)といずれも大きく下振れしている。こうした状況を反映して、2025年12月の不動産景況感は91.45と前月(91.89)から一段と調整して過去最も低い水準となるなど『底』がみえない状況にある。さらに、2025年12月の主要70都市の新築住宅価格も前年同月比▲2.7%と前月(同▲2.4%)からマイナス幅が拡大し、前月比も▲0.4%と8ヶ月連続で下落しており、当局による安定化策の効果が一向にみえない状況が続いている。

また、2025年末時点における総人口は14億489万人となり、前年(14億828万人)から▲339万人減少しており、4年連続で総人口が減少していることも明らかになった。なお、中国当局は少子高齢化の元凶となってきた一人っ子政策を2015年に廃止し、翌16年に二人っ子政策を、2021年には三人っ子政策を導入するなど、出産奨励に取り組んできた。さらに、中央のみならず、地方政府は独自に少子化や子育て対策を強化する動きをみせるほか、2025年には全国レベルで3歳以下の子供を対象に、1人につき年間3,600元を支給する補助金制度を開始した。これ以外にも、近年の子育てに関する『コスト』を抑制すべく、教育コストの低下や競争の抑制による子育てに対する心理的ハードルを下げる取り組みなども進められてきた(注3)。しかし、2025年の出生数は792万人と初めて800万人を下回っており、結婚と出産に縁起が良いとされる辰年が重なった2024年(954万人)から▲162万人減少するなど、当局による一連の施策が充分な効果を挙げられていない様子もうかがえる。全人代(全国人民代表大会)常務委員会は2024年9月に開催した会議で、2025年1月から法廷退職年齢の段階的引き上げを決定したものの、15年をかけて段階的に引き上げられるとともに、労働者側が早期退職や最長3年の定年延長を選択できるとするなど、企業にも配慮した対応が採られている。しかし、全人口に占める65歳以上の高齢層比率は15.9%と前年比+0.3pt上昇する一方、経済活動を支える16~59歳の人口は8億5,136万人と前年末から▲662万人減少するなど、中国においても労働力不足が制約要因となる懸念は着実に高まっている。こうした事情も、習近平指導部が新質生産力を後押しする一因になる一方、短期的には雇用機会の減少によるミスマッチの拡大が若年層を中心とする雇用環境を一段と厳しくすることが予想され、少子化に歯止めが掛からない展開も見込まれる。潜在成長率の一段の低下が見込まれる一方、一連の対策にもかかわらず内需は勢いを欠くなか、当面は外需への依存を一段と強めることも考えられる。とはいえ、各国は中国による『デフレの輸出』を警戒して調査を開始する動きもみられるなど、保護主義的な動きが広がりをみせることで中国の外需を取り巻く環境が厳しさを増しつつある。2026年も中国当局は比較的高水準の成長率目標を掲げる可能性は高いものの、そのハードルはこれまで以上に高まっている。

注1 1月14日付レポート「中国の2025年貿易黒字は1兆ドル超、外需が内需の弱さをカバー」
注2 1月9日付レポート「中国、家計部門は雇用・賃金が伸び悩むなかで物価上昇に直面」
注3 2025年12月23日付レポート「アジアにおける少子化の実情と日本の視点」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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