24年度の海外景気

2024年以降の世界経済は、それまでの金融引き締めによる景気下押し圧力の一方で、ユーロ圏以外の主要先進国はいずれも総合ＰＭＩが50を上回って推移するなど、総じてみれば底堅い動きがみられている。

背景には、雇用が安定する中での物価高対策や、特に日本と中国において経済活動の再開に伴うサービス消費、ＧＸ・ＤＸ・経済安全保障面を中心とした設備投資の増加等がある。

また米国では、堅調な雇用情勢を受けて労働需給の引き締まりが続き、人手不足により高い賃金上昇が継続したことで個人消費がけん引役となってきた。しかし、これまでの急速な金融引き締めを受けて住宅ローン金利は高水準にあり、今後もこれまでの利上げの影響が見込まれる。また、経済対策の一環で返済が猶予されてきた学生ローンの返済が昨年10月から再開されていることなどもあり、24年以降の米国経済は明確に減速局面に入ろう。ただ、労働市場の勢いが下支えすることで、景気後退にまで至る可能性は低いと想定される。

一方、足元で悪化が目立つユーロ圏の景気だが、雇用の改善が続く中で最悪期は脱しつつあると見られる。今後はインフレ鈍化に伴う消費の下押し緩和、エネルギーの供給制約や価格高騰の緩和に伴う生産活動の回復により、今後の景気は幾分持ち直すと見られる。

こうした中、デフレリスクが高まる中で政府の対応が鈍い中国経済が最大の懸念材料となろう。22年末のゼロコロナ解除で一時的に持ち直しの動きがあったものの、不動産市況の悪化や地政学的緊張の高まりによる悪影響が当初の予想以上に重しになっている。特にＧＤＰの３割相当を占めるとされる不動産開発部門は低調が続いており、企業の債務問題が長期化する中で、不動産開発投資が足を引っ張っている。これを受けて中国人民銀行も金融緩和に着手している。しかし、地政学的緊張の高まりによる中国からの資本流出につながるリスクもジレンマとなっている。こうした中で、特にコロナ禍以降に少子化に拍車がかかっていることからすれば、中国の経済成長率は長期的にも伸びが抑制される可能性が高いといえよう。

24年度の国内景気

このように、すでにＰＭＩで減速の可能性を示している世界経済は、24年度にかけてリセッションは避けられるものの、米中といった経済の二大大国中心に減速が不可避となろう。

こうした中で、肝心の日本の景気は相対的に底堅い回復が予想される。背景には、コロナからのリオープンを原動力としたサービス消費の回復、政府の支援策の恩恵も受けたＧＸ・ＤＸ・レジリエンス強化向けの設備投資やインバウンド消費の更なる拡大がある。

なお、当面のリスクは財消費の抑制要因となっているコストプッシュインフレの影響に加え、世界経済の減速による輸出や生産・設備投資への悪影響だが、世界的には依然として日本の主力産業である自動車のペントアップ需要が旺盛なため、景気の腰折れは避けられると見る。

以上より、24年度の国内景気は、海外経済の悪化を受けて減速を余儀なくされよう。しかし、底堅い国内のサービス消費や設備投資、インバウンド消費や自動車関連輸出が下支えとなることで、緩やかな回復を続けると予想される。