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よく分かる!経済のツボ『最近の若者の保険離れは加速しているのか』

岩井 紳太郎

目次

多様化する生命保険チャネル

若者の保険離れが久しく指摘されている。一方で、生命保険への加入方法は近年多様化しており、従来の保険会社の営業職員による販売に加え、銀行や保険ショップ等の窓口で相談を行う代理店販売、インターネットでの販売等、加入経路が拡充されてきている。このようにチャネルが多様化し、保険にアクセスしやすくなったなかでも、最近の若者の保険離れは加速しているのか。

図表1
図表1

若者の保険離れが加速しているとは言いきれない

生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、全年代の生命保険加入率は79.8%だった。一方で、20歳代の加入率は51.5%で、全年代を大きく下回っている(資料1)。ただ、生命保険は結婚・出産等のライフスタイルの変化のある30、40歳代での加入率が高く、20歳代での加入は少ない傾向がある(資料2)。直近約20年間の推移をみると、20歳代の加入率は、2022年で低下が見られるものの50%台を維持しており、加入率の観点からは現時点で若者の保険離れが加速しているとは明言し難い。

図表2
図表2

なぜ若者は生命保険に加入しないのか

若者の加入率が依然低いことは事実だ。なぜ若者は生命保険に加入しないのか。同調査では、生命保険非加入者に対して加入しない理由を質問している。20歳代で最も多かったのは、男性では「特に理由はない」、女性では「経済的な余裕がないから」だった。また、「生命保険についてよくわからないから」、「生命保険の必要性をあまり感じていないから」、「加入を勧められたことがないので」の割合も高かった(資料3)。

以上のように、生命保険への理解不足、金銭面、保険との接点の少なさが非加入の大きな要因だ。生命保険への理解促進につながる金融教育を社会全体で進めていくことに加え、保険会社としてはSNS等を活用した情報発信や、若者が加入しやすい保険商品(スマホで加入可能等)の提供等が今後の課題となりそうだ。

図表3
図表3

岩井 紳太郎


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。