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【1分解説】価格転嫁とは?

岩井 紳太郎

  音声解説

価格転嫁とは、企業が原材料費や人件費などのコスト増加分をモノやサービスの価格に反映させることです。コスト上昇分を価格に「転嫁」することで、企業の収益性を維持しようとする企業戦略の一つです。コストは主に「原材料費」「エネルギー価格」、人件費等を含めた「労務費」に分けられます。

価格転嫁が注目される背景として、昨今の賃上げ機運の高まりが挙げられます。物価上昇のなか、2023年度の春季労使交渉の賃上げ率は30年ぶりの高い伸びとなりました。今後の持続的な賃上げの実現に向けて、その原資を確保するために適切な価格転嫁が重要だと言われています。

現在、特に雇用の7割を占める中小企業において、労務費の価格転嫁が十分に行われていません。発注者側である大企業の立場が強く、受注者側の中小企業が適切に価格転嫁できていないと言われています。そこで、公正取引委員会は2023年11月に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定し、経団連などの経済三団体においても会員企業に対して取引の適正化を推進しています。

今後モノやサービスに対して適切な価格転嫁が行われ、中小企業を含めた社会全体での持続的な賃上げを実現できるのか注目が集まっています。

この解説は2024年2月時点の情報に基づいたものです。

岩井 紳太郎


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

岩井 紳太郎

いわい しんたろう

総合調査部 研究員
専⾨分野: 労働政策、保険

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