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2024.03.14
アジア経済
アジア金融政策
トルコ経済
為替
金融市場はトルコ中銀や政府を評価も、国民からの信頼は回復せず
~フィッチの格上げにも拘らず国民のリラへの信認失墜は止まらず、経済は一層の困難に陥る懸念~
西濵 徹
- 要旨
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- 昨年来のトルコでは、中銀が大幅利上げに、政府も保護預金制度の解除に動くなど「正統的」な政策に舵が切られてきた。しかし、その後もリラ安に歯止めが掛からずインフレ収束の見通しが立たない状況が続く。中銀は先月の定例会合で利上げ局面を一旦休止させるも、その後に融資規制に動くなど引き締め姿勢を堅持している。こうした動きを受け、主要格付機関のフィッチは格上げを実施するとともに、先行きの追加格上げに含みを持たせるなど評価する姿勢をみせる。その後もシムシェキ財務相は緊縮的な財政政策を維持する考えをみせるも、リラ安の動きが加速する展開が続いている。こうしたなか、中銀が銀行に対して準備預金の一部凍結に動くとの報道が出るなど一段の引き締めに舵を切る模様である。今月末の統一地方選では地方を中心に与党AKPの善戦が予想されるが、同国経済は一層の困難が待ち構えていると言える。
トルコでは昨年以降、中銀が物価と為替の安定を目的に累計3650bpもの大幅利上げに動くとともに、政府もリラ安阻止に向けて導入した保護預金制度(KKM:リラ建定期預金を対象にリラ相場が想定利回りを上回る水準に減価した場合に当該損失分を政府が全額補填する制度)の解除に動くなど、それまで『金利の敵』を自任するエルドアン大統領の下で採られてきた無茶苦茶な政策から『正統的』な政策への転換が図られてきた。しかし、長きに亘って無茶苦茶な政策運営がなされてきた影響により、国民の間には通貨リラに対して通貨が有する重要な機能のひとつである価値保蔵機能が失われたと見做されるなか、上述の政策転換にも拘らず足下においてもリラ相場は下げ止まる兆しがみられない展開が続いている。さらに、リラ安による輸入インフレ圧力が掛かる状況に加え、足下では食料品やエネルギーなど生活必需品を中心にインフレ圧力が強まる動きがみられるほか、インフレが長期化するなかで今年も最低賃金の大幅引き上げが実施されたことも重なり、インフレ収束の見通しが立ちにくい状況に見舞われている。こうしたなか、中銀は先月の定例会合において利上げ局面を一旦休止させる決定を行ったものの(注1)、今月6日に銀行の商業貸付と一般貸付を対象に設定する月次の伸び率の上限を引き下げる融資規制の強化を発表するなど、一段の金融引き締めに向けた布石とも取れる動きをみせている(注2)。こうした中銀と政府による一連の対応を巡っては、国際金融市場から評価する向きがうかがえるなか、今月9日に米英系格付機関であるフィッチ・レーティングスが同国の外貨建長期信用格付を1ノッチ引き上げる(B→Bプラス)とともに、先行きの格付変更の方向性を示す見通しも「安定的」から「ポジティブ」に引き上げるなど一段の格上げに含みを持たせる姿勢をみせている。さらに、その後もシムシェキ財務相は中銀によるインフレ抑制に向けた政策運営を側面支援すべく、財政政策も引き締め姿勢を維持するなど財政、金融政策の両面で歩調を併せて物価と為替の安定を目指す考えを示している。しかし、足下のリラ相場は調整の動きを加速させるなど鎮静化にほど遠い状況が続いている。こうしたなか、報道によると中銀が金融機関に対する通達を通じてリラ建準備預金の一部を対象に『凍結』を義務付けることで金融市場に流通する流動性を抑制する一段の引き締め政策を講じる模様である。具体的には、資産規模が1000億リラを上回る銀行に対してはリラ建準備預金の15%、5000億リラを上回る銀行に対しては25%を凍結対象としており、これまでの利上げの効果の補完を目指しているとされる。同国では今月31日に統一地方選挙が予定されているが、昨年の大統領選において野党は統一候補の擁立に漕ぎ付けるも惨敗を喫したことでその後は野党連合が瓦解してバラバラの選挙戦を強いられる展開が続いている。結果、世論調査では最大野党のCHP(共和人民党)はイスタンブールやアンカラ、イズミールなど大都市部において善戦が見込まれる一方、エルドアン政権を支える与党AKP(公正発展党)は地方を中心とする大半の都市で優勢を維持しており、物価高と通貨安の長期化により多くの国民は疲弊しているものの、政治状況は大きく変わらないとみられる。ただし、リラ安に歯止めが掛からないなかで先行きのインフレは高止まりして中銀見通しからの上振れも見込まれ、中銀は一段の金融引き締めを迫られると予想されるが、景気への悪影響も予想されるなかで一層の困難な事態に直面することは避けられそうにない。


注1 2月26日付レポート「トルコ中銀、カラハン体制の初会合で利上げ一服も、再利上げを排除せず」
注2 3月8日付レポート「トルコ中銀が融資引き締め、再利上げ実施に向けた「布石」となるか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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